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習主席は欧州を取り戻せるか

5年間で一変した欧州の中国への見方

習近平主席はフランスを皮切りに欧州歴訪を開始しました。

欧米の中国への見方が厳しさを増す中、今回の欧州歴訪がどの様な意味を持つのか、大変興味深いものがあります。

今回の欧州訪問の目的は米国からの呼びかけに応じて厳しい対中政策を打ち出そうとする欧州諸国の足並みを乱し、欧米の仲に楔を打ち込もうというものと理解されますが、うまくいくでしょうか。

欧州で訪問する3カ国(フランス、ハンガリー、セルビア)は入念に検討した上で選択されたものと思われます。

特にフランスはドゴール主義の伝統があり、最近もマクロン大統領が安全保障面での欧州の自立を唱えており、中国側は付け入る隙があるとみている様です。

習主席の訪欧に関して、米誌Foreign Policyが「Can Xi Win Back Europe?」(習は欧州を取り戻せるか)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要約

習近平主席は5年ぶりに欧州を訪問します。

前回の訪問時から、ヨーロッパの中国に対する見方、そしてより広範な地政学的景観は劇的に変わりました。

2019 年にはコロナは未だ発生しておらず 、ロシアのウクライナ侵攻も始まっていませんでした。

そして 中国の電気自動車はまだ欧州市場に浸透していなかった。

そして、中国の経済的・地政学的影響力の表れとして、イタリアがG7諸国として初めて一帯一路構想(BRI)に参加したタイミングでした。

それ以来、貿易上の亀裂の深刻化と、ウクライナ侵攻後の中国ロシア間の経済・軍事協力の拡大に対する不満を煽り、中国に対するヨーロッパの態度はここ数年で大幅に悪化しました。

習主席の今回の訪問(フランス、セルビア、ハンガリー訪問を含む)により、中国指導者はウクライナ戦争をめぐる関係を修復し、「デリスキング」を求める欧州の動きを鈍化させたいと考えています。

 

スティムソン・センターの中国プログラム責任者の孫氏は、今回訪問するフランス、セルビア、 ハンガリーは欧州で「おそらく最も親中な3カ国」と語りました。

「中国は欧州との親近感を維持したいと考えている」と彼女は付け加えました。

しかしドイツと英国当局は過去2週間でスパイの疑いで中国人6人を起訴しました。

EUはまた、電気自動車、風力タービン、太陽光パネルに対する中国の多額の補助金や、中国政府の医療機器調達についても多数の調査が行われています。

 

「私たちは公正な競争を好みます。 私たちが気に入らないのは、中国が巨額の補助金を出した電気自動車を市場に氾濫させることだ」と欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は先月述べました。 「 競争はイエス、ダンピングはノー。 それが私たちのモットーでなければなりません。」

 

習主席の訪問に合わせて、中国政府は欧州との連帯感を醸し出そうとしています。

外務省報道官の林建氏は今週、「中国とEUの関係は着実に進展する健全な勢いを示しており、それは双方の利益となる」と宣言しました。

しかし、中国政府の連帯と協力のメッセージは、欧州の指導者らの共感を呼ぶものではないかもしれません。

欧州では中国への対応を巡って長い間意見が分かれてきましたが、深刻な貿易不均衡と中国からの安価なグリーン技術の大量輸出への警戒が高まる中、ブリュッセルと多くの欧州首脳は中国に対しますます強硬な姿勢を強めています。

 

2019年の習主席の最後の欧州訪問には、イタリアの一帯一路への新たな参加を祝う派手な式典が含まれていましたが、イタリアは昨年8月に一帯一路構想に背を向け、中国の野望に屈辱的な打撃を与え、欧州の指導者らが中国に対する姿勢がどれほど変化したかを反映しました。

アナリストらは、デリスキングの圧力を弱めるために、中国は欧州内の利害の相違や、欧州とはるかにタカ派的な路線を採用している米国との間の分裂を利用しようとする可能性が高いと述べました。

習主席の目的の一つは、「特にウクライナ戦争に関して、ヨーロッパとアメリカが築き上げようとしている一種の統一戦線を弱体化させることだ」と欧州政治の専門家リアナ・フィックス氏は語りました。

この戦略は中国国営メディアにも反映されており、バイデン政権を、欧州と中国の建設的な関係を解体させようとするトラブルメーカーだと決めつけています。 

 

しかし、デリスキングという名の魔神が解き放たれた今、中国の指導者が達成できることは限られているかもしれません。

なぜなら、現時点での欧州諸国の立場はかなり明らかであり、欧州は例えば中国の電気自動車に対して強い懸念を抱いているからです。

中国にお株を奪われる欧州

気候温暖化への対策として再生可能エネルギーの活用を唱え始めたのは欧州でした。

筆者がロンドンに駐在していた2010年頃、欧州では政府から巨額の補助金を得て、太陽光や風力発電が急速に普及しました。

太陽光パネルや風力タービンの分野では世界のトップメーカーに欧州の企業が名を連ねていました。

そんな企業が今どうなったかというと、殆どが市場から消えてしまいました。

中国企業にことごとくしてやられたのです。

電気自動車についてもそうです。

今や欧州では再生可能エネルギーや電気自動車に補助金を出しても潤うのは中国企業という構図になっているのです。

EUは中国の補助金が不公平だとしてクレームしていますが、巨大な国内市場を持つ中国企業に欧州メーカーはどうやっても太刀打ちできないというのが実情ではないでしょうか。

デリスキングなどと言っていますが、裏には競争力がありすぎる中国製品に対抗する術がなくなり、欧州も保護主義に転じているというのが真実かもしれません。

我が国も他人事ではありません。

中国は国内市場が不振ですから、余った製品を破格価格で輸出してきます。

デフレに喘ぐ日本に中国がデフレを輸出しかねません。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。