EUと中国の首脳会談
今週金曜日に中国とEUのトップ会談がオンライン形式で行われる予定です。
ウクライナでの戦争が長期化する中、この会議はどの様な結果をもたらすでしょうか。
米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)がこの点について「The European Union’s China Choice」(中国に関するEUの選択)と題した社説を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
WSJ社説要約
ヨーロッパ諸国は、プーチンがユーラシア大陸にエネルギーと軍事力を増強した際に、警告を無視しました。
彼らはその経験から学ぶでしょうか?
金曜日に行われるEUの最高幹部と中国の習近平大統領とのオンラインで行われる会議はその判断材料になるでしょう。
中国は、行き詰まっているEUと中国の投資協定に関する交渉を再開したいと考えています。
一方、EUは、「サミットの主な焦点はウクライナでの戦争とロシアの侵略によって引き起こされた劇的な人道的危機」と述べています。
中国はウクライナ戦争において中立を主張していますが、ロシアに対する制裁に反対しています。
中国は、平和的な解決を望んでいると述べながら、戦争を引き起こした責任はNATO側にあると非難しています。
その間、ロシアと中国は、ウクライナでの米国の生物兵器計画に関する陰謀説を広めました。
プーチン氏は彼の帝国主義への野心についてオープンでしたが、中国の習近平主席も同様です。
中国外務省のスポークスマンは水曜日、「中国とロシアの協力には限界がありません。そして、私たちが覇権に反対するための限界もありません。」と述べました。
習主席は 外交、平和、双方にメリットのある安全保障上の解決策について話す予定ですが、EUとの会議に多くを期待することは出来ません。
中国のロシアに対する支持は、欧州が中国にしびれを切らしている理由の中で最も深刻なものですが、唯一の理由ではありません。
EU加盟国のリトアニアが台湾との関係を格上げしたことをめぐり、中国はリトアニアに経済戦争を仕掛けました。
中国共産党の人権に関する対応は、依然としてひどいままです。
新型コロナのパンデミック中の威嚇行為や、発生源調査に協力しない行為は、中国の信頼性を損ないました。
問題は、欧州が非難、名ばかりの制裁や散発的な訴訟以外に、どう行動するかです。
欧州は、米国が先頭を切って中国との経済関係を深化させてきたとし、貿易を通じた利益には、ドイツ人と同じくらい米国人も期待していたと指摘します。
その指摘は正しいですが、現在ますます敵対姿勢を強めている中国を受け入れる言い訳にはなりません。
習氏は、ロシアやその他の失地回復主義の国々と協力して米国主導の国際秩序を覆すことが、大きな願望の1つであることを明確にしてきました。
一部の欧州人の姿勢は絶望的です。
EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は29日、「われわれの考え方では、中国の脅威がロシアと同じレベルだという認識にはほど遠い。中国と似た考えを持つ国々の巨大同盟を作り上げる方向へとロシアを追いやることは、得策では無い。」と語りました。
しかし、サプライチェーン、重要な鉱物、産業投資に関する中国の経済上の脅しに対して脆弱にならないようにすることは、欧州の利益になります。
賢明な企業はすでに、政府が無理に押し付けなくとも、中国以外でのより安全な投資候補を検討しつつあります。
ドイツIFO経済研究所の最新調査によれば、中国を主要な物資調達先とするドイツ・メーカーのほぼ半数が中国への依存度の縮小を計画していると回答しました。
医薬品、レアアース、その他の戦略的に重要な製品の調達先を多様化するのは健全な政策です。
中国が台湾に侵攻した場合、欧州は中国に対し、現在のロシアとの関係以上に脆弱な立場に置かれることを本当に望むでしょうか。
欧州をめぐる米中の綱引き
ロシアのウクライナ侵攻は、中国にとってメリット、デメリットの双方があったと思います。
メリットは中国と必ずしも良好な関係がなかったロシアが全面的に中国にすり寄った事です。
デメリットは世界中から非難されたロシアが中国に近寄った結果、中国がロシアと共に総裁の対象になりかねない点です。
このデメリットを緩和するために中国は欧州やBRICSといった国々に必死でアプローチしているというのが現状でしょうか。
政治的に影響力の強い欧州を米英から引き離すことが中国の当面の外交課題と言えるでしょう。
中国との覇権争いという面では、欧州が中国になびかないという事が米国にとって死活的に重要で、これが上記WSJの社説に良く表れていると思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。