調停役を要請された中国政府
ウクライナとロシアの戦争は6日目に入りました。
停戦交渉は行われていますが、前向きな進展は見られない様です。
そんな中、ウクライナ政府が中国に紛争の調停を要請したとのニュースが流れました。
中国が調停役を務められるのかとの疑問もあろうかと思いますが、ロシアにとって現在最も強力な後ろ盾は中国ですので、可能性がないわけではありません。
中国は今回のロシア - ウクライナ紛争をどの様にみているのでしょう。
中国のメディア環球時報が「Washington bears 'special responsibility' for Russia-Ukraine situation」(米国はロシア - ウクライナ紛争に特別な責任を負っている)と題する社説を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
環球時報社説要約
ウクライナとロシアの間の軍事紛争は3月1日で6日目に入ります。
戦争は世界規模で新しい分裂と対立を生み出しました。
しかし、ウクライナ問題の平和的解決への扉は完全には閉じられていないことに注意する必要があります。
ロシアとウクライナの代表団が月曜日にベラルーシで会談を行ないました。
我々は、火に油を注ぐのではなく、和平交渉を促進するためにもっと多くのことをすべきです。
ロシアとウクライナの軍事紛争に関する情報は混乱しており、真実と虚偽を区別することは困難です。
この過程で、米国の世論操作はますます激化しています。
一部の声が「中国の責任」について非常に間違った理論を作成しようとしています。
彼らは、ロシア・ウクライナ危機を利用して、中国のイメージを中傷し、そのためにフェイクニュースを捏造することさえします。
ロシア・ウクライナ危機に関する米国の世論は、米国の利益を守るために完全に作られていることを指摘しなければなりません。
中国は危機の当事者ではありませんが、米国と西側が掘った穴の責任を中国に押し付ける様な行為ははまともでも公正でもありません。
責任ある主要国として、中国はこれまで反対や対立を扇動したことはありません。
代わりに、中国はウクライナ危機の平和的解決につながるすべての外交努力を積極的に支援し、ロシアとウクライナの間の直接の対話と交渉を歓迎しています。
中国はまた、欧州とロシアが欧州の安全保障問題について対等な立場で対話を行い、最終的にはバランスの取れた持続可能な欧州の安全保障メカニズムを形成する努力を支援しています。
緊張の急速な緩和を促進するために、中国は平和を求め、実現する上で建設的な役割を果たすことをいといませんが、米国の音頭に合わせて踊ることは決してないでしょう。
ウクライナ危機の進展を通じて、米国が危機を引き起こし、その責任を他者に移転し、そこから利益を得ていることはあまりにも明白です。
今でもトラブルをかき立てる動きは止まらず、かなり危険です。
米国こそがウクライナ危機の「特別責任者」であり、米国主導のNATOはその解決の鍵をしっかりと握っています。
元米国下院議員のトゥルシー・ギャバードがインタビューで述べたように、「バイデンは、ウクライナがNATOの加盟国にならないことを保証することで、ロシアとの戦争を非常に簡単に防ぐことができる」。彼女の言ったことは完全に真実でしたが、残念ながら、米国の主流メディアはそのような真実を選択的に無視しただけでなく、ウクライナの人々の苦しみを故意に利用しました。
戦争は子供向けのゲームではありません。
世論戦争は新たな対立を助長する以外の目的には役立たないので、ワシントンの世論戦争を止める時が来ました。ウクライナ問題の進化には非常に複雑な歴史的および実際的な要因があるため、この歴史的物語を単純化しようとする試みは、多くの場合、利己的に動機付けられているか、悪意を持っています。
インド、ブラジル、アルゼンチンを含む新興国は、米国の「非難」に従わず、合理的な判断を下しました。
これらの声は、国際社会の重要な部分の見解を表しており、西洋のメディアによって単に無視されているだけです。
ロシアとウクライナの戦争の判断は、西側によって独占されるべきではなく、国際社会に引き渡されるべきです。
米国主導のNATOは冷戦の産物であり、ロシアとウクライナの危機は、本質的に、冷戦の仕組みによってヨーロッパで再現された傷です。
ヨーロッパは戦争と平和の岐路に立っており、ロシアとウクライナの代表は交渉の席に着きました。
すべての当事者は、交渉を利己的な利益のために別の戦場に変えるのではなく、より忍耐強く、和解のための条件を作り出すように努力する必要があります。
特に米国政府は、混乱を引き起こす源であり続けるのではなく、「特別な責任」を負わなければなりません。
ウクライナを戦場にして良いのか
今回のロシア、ウクライナ紛争はプーチン大統領の歪んだ歴史観により引き起こされた侵略戦争であるというのが西側メディアの分析であり、筆者もプーチン大統領の責任が大きいと思います。
しかし、一つ納得が行かない点があります。
ウクライナがNATOに加盟する事がロシアが絶対譲れないレッドラインである事は、米国もEUも認識していた筈です。
それなのにウクライナ政府をけしかけてNATO加盟を主張させ、その上、いざ戦争が始まってもウクライナに武器を送るだけでNATO諸国は動かない、ウクライナで膨大な市民の犠牲が出る事を知りながら、米国は対岸の火事を見ているだけというのはいかがなものかと思います。
こうなる前に、ウクライナをフィンランドの様な中立国にするなど、ロシアと落とし所を探る事ができなかったのかと残念に思います。
中国の報道は政府の意向を反映していますので、偏りが見られますが、いつも欧米の報道だけを見ていては客観的な判断ができない事を思い出させてくれました。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。