中国の判断は如何に
ウクライナでの戦闘は更に拡大しています。
この戦闘の帰趨を決するのは中国がロシアを支援するか否かにかかっている様です。
この点について英誌Economistが「Xi Jinping places a bet on Russia」(ロシアに賭ける習近平)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います、
Economist記事要約
中国共産党のエリートたちは、中国に都合の良いウクライナ戦争の結末を描くことができます。
中国では、「制裁措置がロシアを屈服させる事が出来ず、代わりにエネルギー価格が高騰するため、今回の西側のショーは遅かれ早かれ終息する」と学者や政府高官が予測しています。
彼らは、今回の紛争がアメリカの衰退を早め、中国を筆頭とする少数の独裁政権によって支配される勢力圏が力を増す新しい世界秩序が到来すると予測しています。
第二次世界大戦以来、世界貿易ルールの作成や普遍的価値と人権の定義を主導してきた自由民主主義について、中国のアナリスト達は、その支配を多数決の形で終わらせると自慢げに説明しています。
西側は、141カ国が国連総会でロシアのウクライナ侵攻を非難することに投票したと述べていますが、中国の学者たちは、ロシアを棄権または支持した40か国(特に中国とインド)は世界の人口の大部分を占めていると反論しています。
中国にとって悩ましい部分は、ウクライナでの戦争です。
中国は敗者を支持することを嫌っており、少なくとも今のところ、プーチン大統領はウクライナでの戦いに勝っていません。
これは、習近平大統領にとって厄介なことです。
習近平大統領は、侵略の直前に北京オリンピックに参列したプーチン氏と注目に値する声明に署名しました。
その中で、中国とロシアは、欧州でのNATO拡大とアジアでのアメリカの同盟関係構築を批判する事に同意しました。
彼らは、民主主義の促進は西側の陰謀であることに同意しました。
北京の外交筋では、プーチン氏が習氏に、共同声明の後3週間以内にウクライナとの戦争を開始する予定であると伝えたかどうかについて議論がある様です。
習氏は、ロシア軍が侵略を目的に集結している事は、中国がロシアを熱心にスパイしているため知っていたが、プーチン氏から戦争はわずか1週間で終わるという保証を受け入れた可能性があるというのが一般的な見方です。
ロシアも中国の指導者も、ウクライナからの抵抗、ロシア軍の準備不足、西側の団結や予想もしなかった援助の提供を予期していませんでした。
「彼らは、西側は退廃的であり、ヨーロッパは中国人のカップルが新婚旅行をする巨大なディズニーランドだと思っていました」とある北京駐在の外交官は述べています。
習氏の判断ミスはタイミングが悪いです。
今年後半の党大会で、彼は長年の慣例に挑戦し、最高指導者として3期目の任期を求めると予想されています。
中国は当初、ウクライナについて曖昧な態度をとりました。
ロシアの侵略は、おそらく国家主権と領土保全に関する中国の神聖な原則を踏みにじっています。
これらの原則に留意し、中国はロシアが2008年にジョージアを併合し、2014年にクリミアを併合したことを認めることを拒否しました。
2022年、中国政府は1日かけて親ロシアの疑似中立の立場を採用し、旧ソ連の衛星国をNATOに加盟させたことで、アメリカがロシアを追い詰めたと非難しました。
一部のヨーロッパ人は、中国がその調子を和らげ、ウクライナで調停するかもしれないという希望を表明しました。
悲しいかな、中国はプーチン氏に敗北に似たものを受け入れるように促す動機はほとんどありません。
3月7日、習氏はプーチン氏への賭けを倍加しました。
外相の王毅氏は、年次議会でジャーナリストに、中国とロシアの関係は、米国が中国を抑圧しようとする試みに対する戦略的パートナーシップであり、さらには世界に平和と安定をもたらすと語りました。
学者たちは、ウクライナを守ることはアメリカに味方する事になる為、中国はロシアの戦争の正当性について議論することはできないと外国の特派員に語りました。
2005年から2017年までメルケル首相の外交政策顧問であるホイスゲンは、習氏との会談に何時間も参加しました。
彼は、慎重な党官僚である前任者の胡錦濤とは対照的に「力強く」、習氏が2012年に主席に就任してから、中国の政策は著しく自信を持ち、断定的になったと回想します。
それでも、彼は習氏を計算高いリスクテイカーと呼んでいます。
「中国人はそれを乗り越えることができると思うときにリスクを冒します」とホイスゲン氏は言い、香港での中国の民主主義崩壊の例を挙げ、その金融センターの重要性を反映して、最終的に国際的な抗議と制裁は限られたものになったと語ります。
彼は、中国が外国の批判を嫌う事と、国連で孤立する事に対するロシアの無関心とを対比させています。
第三者からみると、プーチン氏を受け入れることが中国の評判を傷つけていることは明らかです。
特に、中国の国家メディアと外務省のスポークスマンが、プーチン氏を侵略者として指名することを拒否し、ウクライナに関する悪質なロシアの偽情報を赤面もせずに繰り返す場合はなおさらです。
習氏は動揺していないようです。
残念なのは、彼が対立が賢明な選択であると信じている事かもしれません。
公の場で、習氏は、中国の台頭は止められないという印象を人々に与えるのが好きです。
彼は3月6日の諮問評議会で、「中国の統治と西側の混乱との対比がより顕著になっている」と語りました。
習氏が「力は正義」的な世界秩序を信奉している場合、ウクライナの問題は、中国企業がロシアに対する制裁に見舞われず、欧州との貿易関係が損なわれない限り、中国にとって重要ではありません。
しかし、そのリスク分析は間違っているかもしれません。
大きすぎる中国に制裁をためらう西側
さて中国はどうするでしょうか。
昨日ローマで米中の高官会議が7時間にもわたって行われた様ですが、米国は中国にロシアを支援すれば中国も制裁対象にすると圧力をかけたものと思われます。
しかし、ロシアに対するのと同じ様な経済制裁を西側が中国に対して行えるかといえば、かなり難しい様な気がします。
ロシアに対して団結したG7も中国が相手となると足並みが乱れるでしょう。
我が国もロシアと中国では経済関係の規模と重要性がまるで違います。
結果として、中国はロシアをあまり目立たない様に支援し続け、そんな中国に思い切った制裁は行われないのではと思います。
中露両国は歴史的には決して仲が良かった訳ではありませんが、米国を中心とする世界秩序に対抗するという意味ではパートナーです。
ウクライナ戦争は後で振り返れば、第二次冷戦の火蓋を切った事件として記憶されるかもしれません。
中国はアヘン戦争の敗北で覇権を失いましたが、今の中国はその時とは比べ物になりません。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。