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中国の属国となるかロシア

内心ほくそ笑む中国

ウクライナ戦争に対する中国の反応は余り目立ちません。

これはロシアと欧米の対立に首を突っ込んで火傷をするのを恐れている様ですが、どうもこの戦争から一番漁夫の利を得そうなのは中国の様です。

彼らは労せずしてロシアを従属化させ、ロシアが持つ資源や市場を我がものにすることが出来そうです。

この点について米誌Foreign Affairsが「China’s New Vassal」(中国の新しい属国)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

ウクライナでの戦争により、ロシアは西側世界の多くから切り離されました。

制裁の嵐にさらされ、国際メディアで非難され、世界的な文化イベントから追放されたロシア人は、ますます孤独を感じています。

しかし、クレムリンは、少なくとも 1 つの主要な支援国、中国に頼ることができます。

プーチン大統領のウクライナ侵攻の決定により、ロシアは仲間のユーラシアの巨人に頼らざるを得なくなりました。

 

20 世紀、ソ連は少なくとも 1960 年代に中ソが分裂するまでは、中国をより貧しい従兄弟であり、指導し、支援すべき国と見なしていました。

数十年後、形勢は決定的に変わりました。

中国は、ロシアよりも強力な経済、優れた技術力、世界的な影響力を誇っています。

プーチン政権はその存続を中国に依存するため、この非対称性は今後数年間でさらに顕著になる運命にあります。

中国は、ロシアの貿易全体をさらに食いつぶす可能性が高く、ロシアの消費者がますます中国製品に依存する一方で、中国はロシアの輸出品 (特に天然資源) にとって不可欠な市場になるでしょう。

そして、ロシアの苦境を利用して、人民元が支配的な地域通貨であり、主要な国際通貨だと主張するでしょう。

 

中国を満足させ続けるために、ロシアの指導者は、商業交渉で不利な条件を受け入れ、国連などで中国の立場を支持し、さらにはインドやベトナムなど他国とのロシアの関係を縮小する以外に選択肢はほとんどありません。

多くの西側アナリストの著作では、中国とロシアは、国際秩序を修正しようとしている 2 つの権威主義的大国としてしばしば登場します。

しかし、対等な関係ではありません。

ロシアの中国への依存は、中国にとってロシアを有用な道具に変えるでしょう。

これは中国にとって米国との競争における途方もない資産となる可能性があります。

 

2 月 24 日のロシアによる一方的なウクライナ攻撃の前に、戦争が近づいているという米国の警告を聞きながらも、中国当局者は、多くのヨーロッパ政府と同様に、ロシアにとっての侵略のコストが潜在的な利益をはるかに上回ると想定して、ワシントンが鳴らした警告に懐疑的でした.。

戦争の勃発は中国を驚かせ、困難な困惑をもたらしたように見えました。

中国はどのような立場を取るべきか.もし中国がロシアを支持すれば、中国は制裁にさらされ、西側の技術や市場へのアクセスを失う可能性があり、これは好ましくない。しかし、中国がプーチンの行動を非難すれば、ロシアとの関係を危うくする可能性がありました。

 

中国政府は、いくつかの理由から、ロシアとの関係が最も重要であると考えています。

両国は、4,200 キロメートルもの国境を共有しています。

ロシアは天然資源が豊富だが技術と投資を必要とし、中国は技術と投資を提供できるが天然資源を必要としています。

ロシアはまた、中国にとって洗練された武器の重要な供給源であり、過去 10 年間で武器の流れが拡大しています。

独裁国家として、両国は国連安全保障理事会をはじめとする国際機関で互いに支え合っています。

両国は、人権問題についてお互いを批判することを控えており、インターネットのガバナンス基準を設定するなど、多くのグローバルな問題に対して同様のアプローチを取っています。

習近平とプーチンは親密な関係にあり、祖国を以前の壮大な状態に戻したいというノスタルジックな願望を共有しています。

中露は、米国が世界における自国の正当な地位を否定しようとしていると非難しています。

 

これらを考慮した中国は、2 月のウクライナ侵攻後、頑固にロシアの立場を擁護しています。

ウクライナと西側の対談者に対し、中国当局者は、彼らの政府がウクライナの主権と領土保全を支持し、戦争の迅速な終結を求めていることを指摘する一方で、ロシアとの緊密な関係を維持し、西側諸国の一方的な制裁に反対し、NATO の拡大と米国主導の軍事同盟を世界中に推進しようとする米国の姿勢が問題を招いたとのロシアの立場を受け入れました。

 

中国をこの立場から引き離そうとする欧米の試みは、これまでのところ失敗しています。

中国の指導者たちは、ロシアの行動に批判的な姿勢をとることで得られるものはあまりないと考えています。

彼らは、中国がウクライナの側についたとしても、彼らと米国が率いる西側諸国との間の意見の不一致の根本的な原因が消えないと考えています。

中国はまた、前例のない経済制裁の重みでプーチン政権が崩壊する可能性も恐れており、これは明らかに中国の利益に反する結果になります。

中国は西側に敵対するロシアを資産と見なしており、親西側の傾向を持つ新政権がロシアに誕生するのは悪夢でしかありません。

中国の指導者たちは、ウクライナに関するロシアの考え方を変える可能性が低いことも認識しています。

プーチン大統領は、自分の国と自分の遺産を守るために戦争が不可欠であると信じています。

さらに、中国には、戦争の交渉で重要な役割を果たした能力や経験がありません。

その結果、習氏と彼の外交政策チームは調停を支援しようとさえ試みていません。

 

中国は、ロシアに圧力をかけることを拒否すると同時に、西側諸国が課す可能性のある経済的影響を回避しようとしています。

少なくとも今のところは、制裁と米国の輸出規制の厳格さに従うことを選択しました

多くの中国企業は、ロシアでのプロジェクトを凍結したり、操業を停止したりしています。

同様に、中国の国営エネルギー大手は、BP やシェルなどの西側企業のロシア資産 (現在は大幅な割引価格で入手可能) を取得することに消極的であり、将来の米国の制裁にさらされることを恐れています。

 

しかし、中国が制裁を順守しているからといって、北京がモスクワを経済的に支援していないということにはなりません。

どちらかといえば、その支援は強力です。

中国は、戦争の経済的混乱を利用して、ヨーロッパ市場で販売されていたロシア製品の代替市場としての地位を確立しています。

制裁違反の危険を冒さない短期的な取り決めを通じて、ロシアの商品を安く購入する機会を十分に活用しています。

 

2 月以降、中国はロシアの炭化水素の購入を増やしています。

ヨーロッパがロシアのエネルギーやその他の鉱物資源への依存を削減するにつれて、ロシアには輸出をアジアにシフトする以外に選択肢はありません。

そのほとんどは中国に向けられます。

これには、地理的理由に加えてドルなど西側通貨の代わりに人民元での支払い手段が役に立っています。

過去 7 か月間で、ロシアの中国への輸出は 48.8% 増加しました。

 

2014年以来、ロシア市場では中国製品が徐々にヨーロッパ製品に取って代わり、2016年には中国が初めてドイツを抜いてロシアの産業用機械の主要な供給源となりました。

物流コストの上昇と制裁の相乗効果により、ロシアでの多くのヨーロッパ製品の入手が制限されるため、ロシアの消費者と企業は最終的に中国の代替品に切り替えるでしょう。

実際、過去 7 か月で、中国からロシアへの輸入は 5.2% 増加して 363 億ドルになりました。中国がロシアの輸出入の主要な貿易相手国になるにつれて、その活動の多くが人民元で行われるようになるでしょう。

中国の通貨は、完全に兌換できなくても、事実上ロシアの準備通貨となり、ロシアの中国への依存度を高めます。

このような中国との取引は、ロシアにとってコストがかかります。

中国は、ヨーロッパ市場でのロシアの損失を埋め合わせることはできません。

さらに、ロシアの中国への依存は、中国に多大な交渉力を与え、以前はありえないと思われた譲歩をロシアから引き出すことができるようになります。

たとえば、西シベリアのガス田を中国市場に接続する新しいパイプラインに関する現在の交渉では、北京は、中国の顧客に利益をもたらす価格方式を実施し、人民元を契約通貨にし、法的な義務を制限することができます。

パイプラインのキャパシティの必要最小限のみを購入します。

したがって、追加のガス購入は、北京の購入希望 (または希望がないこと) に左右されます。

モスクワは他に選択肢がないので、これらの条件に同意する可能性が高く、中国に安価なガスを提供するだけでなく、カタールや米国などの液化天然ガスの供給者との交渉において交渉力を中国に提供します。

 

ほんの 1 年前であれば、このような状況はクレムリンにとって受け入れがたいものでした。

しかし現在、ロシアの選択肢は消えつつあり、中国が優勢になっています。

ロシアの当局者はこの力学に盲目ではありませんが、戦争はロシア政府に現実と向き合うことを要求します。

中国が西側との対立を維持できるキャッシュフローを提供する限り、ロシアは中国の要求を受け入れるでしょう。

中国にとっての主な課題は、制裁対象のロシア企業との潜在的な中国の取引に対する二次制裁や、輸出管理体制の違反など、米国の報復措置のリスクを管理することです。

しかし、中国の指導者たちは、ロシアとのビジネスが明確に制裁に違反していなければ、米国の制裁を回避できるとたかをくくっています。

米国はプーチン大統領の戦争機構を打破しようとする無駄な試みを行う一方、不況が迫っており、中国との貿易戦争を始める余裕は無いと中国は考えています。



ウクライナでの戦争の前でさえ、中ロ関係はますます一方的なものになっていました。

ロシア当局者は、西側諸国との関係を改善し、ロシア経済の競争力を高めることなく、中国に近づくことは、ロシアの戦略的自律性を制限することになるのではないかと恐れていましたが、中国との関係は着実に拡大しました。

2014 年にプーチンがクリミアを併合する前は、中国はロシアの総貿易額の約 10% を占めていましたが、 2021 年末にそれは 18% に高まりました。

その数字は、ウクライナでの戦争を理由に更に上昇しています。

中国がロシアの貿易フローの半分以上を支配し、電気通信、輸送、エネルギー生産などの重要な分野で主要な技術源になるという近い将来を想像するのは非現実的ではありません。

そのようなシナリオでは、中国政府はロシアに対して途方もない影響力を持ち、それをためらわずに行使するでしょう。

例えば、将来、中国はロシアに対し、インドやベトナムとの軍事関係を放棄するよう求めるか、南シナ海における中国の領土紛争と台湾に対する主張を支持する声を上げるよう要請する可能性があります。

西側とロシアの分裂は、プーチンがクレムリンにいる限り、修復されることはないでしょう。

ロシアはユーラシアにおける巨大なイランになりつつあります。

孤立しており、西側諸国に対する敵対行為の為に、経済は縮小し、技術的に遅れをとっています。

中国は、ロシアにとって最大の対外パートナーであり、輸出の主要な買い手であり、輸入の主要な供給源であり、主要な外交パートナーとなるでしょう。中国が台頭して米国の最大のライバルになるにつれて、ロシアは中国の侍女としての役割を果たすことになるでしょう。

 

中国は大きな恩恵を受けるでしょう。

中国がロシアを救済したり、ロシア経済の近代化に大きく貢献したりする可能性は低いです。

しかし中国は、ロシアの天然資源を安い価格で購入し、中国の技術市場を拡大し、中国の技術基準を促進し、人民元を地域のデフォルトにすることで、ロシアの友好的な政権を維持し、中国の国益を促進するでしょう。

影響力の拡大により、北京は、1 年前には考えられなかったものをモスクワから引き出すことができるようになるでしょう。

最も洗練されたロシアの兵器とその設計へのアクセス、ロシアの北極圏への優先的なアクセス、中央アジアにおける中国の安全保障権益の調整、および国連安全保障理事会の常任理事国としてのロシアの支持など。

実際、ロシア政府は、その戦略的自律性を失うことを犠牲に、西側の圧力から身を守ることになります。

この状況は、プーチン大統領の統治後も続く可能性が高いと思われます。

中国があまりに強い圧力をロシアにかければ、民族主義的な反発が生じ、プーチン大統領に中国の要求に抵抗するよう圧力をかける可能性があります。

しかし、関係を真に変化させるには、ロシア政府側が中国との固い抱擁から完全に自由になり、西側諸国がロシアとの再関与に前向きになることが必要です。

しかし近い将来、その様な展開は起こりそうにありません。

ロシアの中国属国化は西側にとって最悪のシナリオ

ロシアは中国にとって長い国境線を共有する仮想敵国の一つでした。

過去に何度も国境紛争を起こしています。

ウクライナ戦争をきっかけにロシアが中国の属国になったことで、今後中国は後顧の憂いなしに米国と対峙することが可能になります。

その上、資源と市場を持つロシアを我がものにしたのですから、内心笑いが止まらないでしょう。

人民元経済圏が広がるという観点からも中国にとって大きなメリットがあります。

西側にとってこれが本当によかったのでしょうか。

米国が中国との対決を有利に進めようと考えるのであれば、ロシアを中国から引き離す事がもっとも重要な一手だったと思います。

欧州にとってもエネルギー供給源である上に、EU商品の貴重な買い手であったロシアを失った事は大変大きな痛手です。

対ロシア制裁がきっかけでインフレが進む欧州の一部では、ロシア制裁に懐疑的な声が既に上がり始めています。

欧米がウクライナのNATO加盟を急ぎすぎたつけが来ている感があります。

2014年のミンスク合意の際にメルケル独首相とオランド仏大統領がウクライナのNATO加盟に消極的だった事が思い出されますが、彼らもNATOの急速な東方拡大がロシアの反発を生み、現在の様な状況が生じることを危惧していたのではないでしょうか。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。