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ウクライナ戦争の隠れた勝者

米国中間選挙がウクライナに与える影響

米国の中間選挙において、民主党は予想外の善戦を見せましたが、下院では多数派を共和党に譲りそうです。

この結果が今後の米国の外交政策、特にウクライナ戦争にどの様な影響を与えるかについて英誌Economistが「Joe Biden will have a harder time dealing with the world」(外交面で苦労する事になりそうなジョー バイデン)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist誌記事要約

ジョー・バイデン氏は、中国の指導者である習近平氏との顔合わせ、そして一連のその他の首脳会談に向けて出発しました。

中間選挙の結果や国内での経済指標の改善そしてウクライナがヘルソンをロシア軍から奪還した事などを受けて、 国家安全保障顧問サリバン氏は、「大統領は追い風に乗って外遊に出かけます。そして、それは彼にライバルに対応する事を容易にし、味方を結集させる絶好の機会を与えてくれます。」と語りました。

 

11 月 10 日に開始されたバイデン氏の外遊には、エジプトで開催される COP27 気候変動サミットでの世界の指導者との出会いや、プノンペンでの米国とASEAN の会合が含まれ、その後バリで開催される G20会合に向かいます。

バイデン氏は、特に台湾に関して、習主席と「レッドライン」について話し合うと述べました。

彼はまた、ロシアのウクライナ侵略に反対する世界を結集し続けたいと考えています。 (プーチン大統領はG20を欠席します。)

 

 一方、中間選挙後のアメリカ議会のバランスの変化は、ウクライナへの援助に影響を与えるでしょう。

投票はまだ集計中であり、上下両院の支配権は未定です。

それでもバイデン氏は、今回の選挙は民主主義の勝利だと歓迎しています。

とはいえ、バイデン氏の個人的な評価が低いことや、トランプ氏が2024年に権力の座に復帰する可能性があることから、バイデン氏が再構築しようとしている同盟関係に多くの不確実性がもたらされます。

今後 2 年間で、バイデン氏はより困難な国内政治環境に直面する可能性が高く、それは彼の外交政策を妨げることになるでしょう。

民主党は上院を維持したかもしれませんが、下院ではわずかな差ではありますが、負けそうに見えます。

 

今後、共和党は、昨年のアフガニスタンからの惨めな撤退や、彼の息子であるハンター・バイデンの不透明な外国ビジネス取引などに関する調査で、バイデン政権を悩ませようとするでしょうし、特に新型コロナの起源や中国企業との取引など、中国に関連する一連の厳しい公聴会も開かれるでしょう。

最も差し迫った問題は、バイデン氏がこれまでに 180 億ドルの安全保障支援を約束してきたウクライナへの軍事的および経済的支援を継続するか否かです。 

 

しかし、終戦交渉をウクライナに求めるかどうか、またいつ交渉を求めるかについて、政権内で意見の相違が見られます。

統合参謀本部議長のミリー将軍は、ウクライナとロシアは戦死、負傷を合わせ、それぞれ約 10万人の兵士を失ったと推定し、冬の間に最前線が強化され戦線が膠着する可能性を指摘しました。

「我々は、外交的解決の可能性があると考えています」と彼は言いました。

しかしサリバン氏は、アメリカは「ウクライナに圧力をかけているわけではない」と主張しています。

 

左翼の民主党員は、軍事戦略だけでなく外交戦略を求めています。

さらに重要なのは、共和党が下院で過半数を占める可能性が高いことを考えると、ウクライナへの援助に敵対的なアメリカ ファーストの信奉者が影響力を持つ可能性があることです。

ジョージア州のグリーン下院議員は、共和党が下院を奪還した場合、「ウクライナには一銭も行かない」と誓いました。

彼女が所属する強硬派の自由党員集会は、共和党の中で少数派に過ぎません。

共和党が下院で持つと予想される 220 ~ 230 議席のうち、おそらく 40 ~ 50 議席です。

しかし、彼らはそれでも最終的な決定権を握るかもしれません。

 

下院の共和党リーダーであり、次期議長になる可能性が最も高いマッカーシー氏は、流れに左右されず、議会はウクライナへの援助に「白紙の小切手」を出すことはないと述べましたが、これは支援停止を意味するわけではありません。

共和党主流派が民主党と協力する可能性もあります。

これまでトランプ氏の影響力は共和党を揺るがしてきましたが、彼の影響力は弱まり始めるかもしれません。

マッカーシー氏はトランプ氏の意向に屈する傾向にありますが、共和党上院院内総務のマコネル氏はウクライナ支援に力を入れています。

 

ウクライナを支援するための現在の予算は来月に尽きます

つまり、バイデン政権は、新しい議会が設置される前に、レームダックになった状態で、来年の追加資金を議会に要求する必要があります。

それが通過すると仮定しても、ウクライナへの援助はその後入手が難しくなるでしょう。

一部の共和党員は軍事援助を維持したいと考えているかもしれませんが、ウクライナにとって同様に重要な経済支援には反対の姿勢を見せるでしょう。

 

彼らはまた、ヨーロッパにより多くの負担を負わせる事をより声高に要求するでしょう。

しかし、最終的に、ウクライナに対する超党派の支持が、「アメリカ ファースト」の強硬派を打ち負かす事を期待しましょう。

ウクライナ戦争の背後にある覇権争い

フランスの経済学者エマニュエル トッド氏は今回のウクライナ危機を利用して米国は欧州とロシアの関係を裂こうとしていると指摘しています。

確かにロシアが欧州への天然ガス供給を一部削減した事により、この米国の作戦は成功した様に見えます。

しかし戦争には必ず終わりが訪れます。

終戦後、ロシアに対する制裁は緩和され、長期的に見ればロシアのガスは欧州への供給が再開されるでしょう。

一方、終戦後のウクライナはNATOには加盟できないかも知れませんが、EUへの加盟はいずれ可能となるでしょう。

これはEUの盟主たるドイツにとってみれば、人口4400万人の市場と安価な労働力の供給先を手に入れることを意味します。

ベルリンの壁が崩れてからというもの、NATOのみならずEUも東へ東へ拡大し、共産圏から市場経済の国に移行した中東欧の国はことごとくドイツの経済圏に組み込まれてきました。

EUは現在、経済面ではドイツ帝国と言っても良い状況です。

短期的にロシアのガスが得られないのはドイツにとって痛手でしょうが、中長期的に見ればウクライナをドイツ帝国に組み入れることの方が得とドイツは判断しているのではないでしょうか。

 

最近、米国で共和党のみならず民主党でもウクライナに停戦を求める声が上がっているのは、この戦争で漁夫の利を得るのがドイツだという認識が高まっているからではないでしょうか。

米国の覇権に対抗するのは中国だけではありません。

今や経済面ではドイツ帝国となった欧州も米国にとってみれば潜在的脅威です。

ウクライナに対する支援に関しては米国がこれまで突出した存在でしたが、ドイツはこれを見てほくそ笑んでいるかもしれません。

米国の中間選挙は未だ確定していませんが、下院で共和党が多数派を取れば、ドイツに対する米国の圧力はより高まることが予想されます。

バイデン大統領は世界を民主主義国と強権主義の国に二分していますが、英国が離脱して事実上ドイツ帝国となったEUと米国の覇権争いも注目すべきと思われます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。