ロシアに厳しい批判
欧米のメディアを見ると、多くの新聞(特にアングロサクソン系)はロシアに対する強硬論に傾いています。
そんな論調の記事から今日は米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)の社説をご紹介したいと思います。
「Deterrence Message to Moscow」(ロシアに抑止のメッセージを)と題された社説から米国の保守系の人々の見方が窺えます。
かいつまんでご紹介したいと思います。
WSJ社説抜粋
バイデン米大統領は、ポーランド、バルト諸国など、ロシアの脅威に最も近い地点に位置しているNATO加盟の同盟国への軍隊、艦船、航空機の派遣を検討しています。
大統領には、ぜひその計画を進め、派遣に踏み切ってほしい。
プーチン大統領を刺激しないことを意図したバイデン氏の自制的戦略は、これまで機能してきませんでした。
バイデン氏の外交政策綱領の最重要項目は、米国の同盟関係の復活ですが、大統領はドイツと近づくために力を注いだが、成果はほとんど出ていません。
彼は、関係修復がウクライナに関するドイツの協力次第であることを明確に示すことが可能です。
これはドイツ政府に対し、より厳しい制裁を支持し、第3国によるウクライナへの武器輸出を容認するよう求めることを意味します。
米国はウクライナで戦う必要はありませんが、同国が自国を守るのを支援するためにもっと動くことが可能です。
これは防空、海上警備や情報面での支援とともに、対戦車および対空ミサイルを送ることを意味します。
ウクライナに武器を渡して大丈夫か
上記記事はウクライナに軍事援助する事を推奨していますが、本当にそれは紛争を抑止する効果があるのでしょうか。
筆者はそれはむしろリスクを高めると見ています。
各国首脳の胸の内を筆者が推測するに次の通りとなります。
バイデン 大統領
プーチンが仕掛けてきた今回のウクライナ紛争、保守派がうるさいからロシアに対してファイティングポーズを取ってみたが、よく考えてみると我々の政権にメリットが大きい。
石油の値段も上がったし、ウクライナ向けに武器が売れたので米国の業者は喜んでいるだろう。
国内のコロナやインフレなど頭の痛い問題から国民の目を外に振り向けることが出来た。
西側同盟国との関係強化は俺の公約だったが、今回の紛争を通じて同盟国との連携もアピールできた。
プーチンには密約でウクライナをNATOに加盟させないと約束してやったので、彼も無茶はしないだろう。
ロシアが侵攻しない場合、俺は西側のリーダーとしてロシアを外交の力で食い止めたとアピールできる。
マスコミが騒いでくれるのは助かる。
これで支持率が上がれば、中間選挙が戦える。
プーチン大統領
バイデン は腰抜けで思い切った軍事行動はとらない、欧州はロシアのガスに依存しているので米国と共同歩調を取らないだろう。
今はウクライナに関してアクションを取る上で絶好のタイミングだ。
しかし俺の狙いは侵攻ではない。
ウクライナをNATOに加盟させないとの確約を西側から取り付けることだ。
この点、バイデン は密約なら応じると言ってきたので、俺は目標を達成した。
その上、石油やガスの値段は急騰してロシアは十分に潤った。
それにしても西側の報道ぶりは大袈裟だ。
何をそんなに騒いでいるのか。
ウクライナ国境の演習など毎年やっている事だ。
俺はウクライナ侵攻による経済制裁のリスクを犯すほど向こうみずなリーダーではない。
ロシア国内の報道は統制しているので、ここで兵を引いても批判は起こらないだろう。
次の大統領選もこれで安泰だ。
シュルツ独首相
ウクライナに武器を供給せよと米国始めNATO同盟国が言ってくるがとんでもない。
ウクライナに武器を渡せば、その武器がどの様に使われるかわからない。
場合によっては民間の武装集団の手に渡るかもしれない。
ウクライナ政府はそれをコントロールできない。
プーチンは計算高い男なので、経済制裁のリスクは犯さないだろう。
しかし戦争が勃発するとすれば、ウクライナの武装集団が仕掛ける可能性であり、欧米諸国が行っている軍事援助はそのリスクを高めている。
ガスの供給源をロシアから米国に代えろとのバイデン 大統領の要求もお断りだ。
ロシアは信頼できるガス供給源であり、市場としても重要だ。
ドイツとしては現状維持がベストの選択肢であり、これを変える積もりはない。
気まぐれな米国にエネルギーでも振り回される様な事態は御免だ。
ウクライナをNATOに加盟させることにも反対だ。
ロシアを刺激しすぎる。
際限のないNATOの東方拡大は既存の加盟国にとってもリスクと負担を高める。
マクロン仏大統領
ロシアへのガスの依存度が低いフランスはウクライナで何が起ころうと大きな問題は生じないだろう。
今回の紛争は、改めてロシアの脅威を世界に知らしめてくれた。
実際、ロシアがウクライナに侵攻するリスクは小さいと思うが、持論であるEUの軍事力強化には追い風になった。
米国は欧州よりインド太平洋地域を重視する様なので、今後は米国に頼らない欧州独自の軍事力を構築すべきだ。
何でも米国の言い分を聞く時代は終わった。
俺のこういうスタイルは国内の有権者に受けるので、今年の大統領選で使わせてもらう。
ゼレンスキーウクライナ大統領
ウクライナ国境での軍事演習は毎年ロシアが行っているのに、西側は今回やけに派手に取り上げているな。
まあ、欧米メディアがロシアを悪者にしてくれるのは、国内の経済問題、腐敗等から国民の目をそらしてくれるので、助かる。
ロシアが圧力を強めれば強めるほど、国民感情は反露を旗頭にしている俺に優位に働く。
しかし正直言って欧米から貰った軍事援助は管理するのが難しい。
軍も規律が緩んでいるので、横流しされる可能性は否めない。民間の戦闘集団が暴発する事も心配だ。
注)文中の「ウクライナをNATOに加盟させないとの米露密約」は筆者の推測ですので、ご了承ください。
いずれにしても、「ロシアの強大化する圧力の前で震えるウクライナ」という現代版ダビデとゴリアテの様な西側メディアが作り上げたイメージと現実はかなり違う事は確かの様です。
各国はそれぞれの思惑で動いており、メディアもその意向を反映している事を今回の事件は改めて教えてくれました。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。