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ウクライナでロシアが勝ったらどうなるか

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プーチン大統領の電撃作戦

ウクライナに進軍したロシア軍は首都キエフに接近しているとの報道が流れました。ロシアの電撃作戦はウクライナ東部だけでなく、全土を対象としている様です。

大方の予想を遥かに上回る大規模な軍事作戦の結果はどうなるでしょうか。

プーチン大統領は、親西欧派のウクライナ大統領の首を挿げ替えるといった荒っぽい手段に訴える可能性があります。

ウクライナがロシアの制圧下に入った場合どうなるのか、米誌Foreign Affairsが「What if Russia Wins? - A Kremlin-Controlled Ukraine Would Transform Europe」(もしロシアが勝利したらどうなるか - ロシアが支配するウクライナはヨーロッパを変える)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

2015年、ロシアがシリア内戦に参戦した際、オバマ大統領はシリアがロシアにとって「泥沼」になるだろうと主張しました。

しかしシリアはプーチンの泥沼にはなりませんでした。

ロシアは、シリアのアサド大統領を窮地から救い、戦争の費用と死傷者を持続可能なレベルに保ちました。

現在、シリアではロシアを無視することはできません。

ロシアはイスラエルからリビアにまで及ぶ影響力を獲得しました。

 

現在、欧米はロシアの新たな軍事介入に直面しています。

今回の舞台はヨーロッパそのものです。

多くのアナリストは、ロシアに悲惨な結果をもたらすことを警告しています。

同時に、それはNATO軍をロシアの国境に近づけ、ロシアが今後何年にもわたってウクライナの抵抗勢力と戦うことを余儀なくされる可能性があります。

しかし、プーチン氏は、ヨーロッパの現状を覆すことに賭けている様です。

最終的にシリアの例の様に、ロシアの計算が正しいかもしれません。

ロシアがウクライナで勝った場合はどうなるでしょうか?

 

ロシアがウクライナの支配権を獲得すれば、米国とヨーロッパにとって新しい時代が始まります。

米国と欧州の指導者たちは、欧州の安全保障を再考することと、ロシアとのより大きな戦争に巻き込まれないことの二重の課題に直面するでしょう。

ロシアにとって、ウクライナでの勝利は様々な形をとることができます。

国の分割に準拠した独立政府の設置もありえますし、ウクライナ軍の敗北は、ウクライナを事実上失敗国家に変える可能性があります。

いずれにせよ、ウクライナは事実上西側から切り離されるでしょう。

 

ロシアが軍事的手段によってその政治的目的をウクライナで達成した場合、ヨーロッパは戦前の状態には戻りません。

ヨーロッパにおける米国の優位性だけでなく、EUまたはNATOが大陸の平和を確保できるという感覚は、失われた時代の産物となるでしょう。

代わりに、欧州の安全保障は、EUとNATOのコアメンバーを守るために限定されるでしょう。

ロシアによる包囲の認識の下で、EUとNATOはもはや彼ら自身の国境を越えて野心的な政策を展開できません。

バルト三国からポーランド、ルーマニアの不安定化の可能性が高まります。

 

ヨーロッパでのドイツの立場は厳しいものになります。

ドイツは、戦後の政治的アイデンティティを限界的な軍事力に求めました。

英仏は、比較的強力な軍事力と軍事介入の長い伝統のおかげで、ヨーロッパの問題で主導的な役割を担うことになります。

ただし、ヨーロッパが依存するのは米国です。

NATOは非常に大きく拡大し、予測不能なロシアと国境に沿って並んでいます。

これらの国々は米国の支援に大きく依存しています。

 

EUとNATO諸国は、ウクライナにおける新しいロシア支援体制を決して認めません。

しかし、彼らはベラルーシと同じ難題に直面するでしょう。

つまり、国民を罰することなく制裁を行使し、困っている人々を支援することです。

一部のNATO加盟国はウクライナの反乱を支援し、ロシアはNATO加盟国を脅迫することでこれに対応します。

ウクライナの窮状は非常に厳しいものになります。

難民は複数の方向に、おそらく数百万人に上るでしょう。

そして、ウクライナ軍の一部は、第二次世界大戦中の様にパルチザン戦争を戦い続けます。

ヨーロッパに到着する大規模な難民の流れは、EUの未解決の難民政策を悪化させ、ポピュリストに大きなチャンスを提供します。

このクライマックスは、米国での2024年の大統領選挙になります。

ヨーロッパの将来はこの選挙にかかっています。

トランプ氏の様な候補が選ばれれば、ヨーロッパ最大の危機に際して、欧米の関係を破壊し、NATOの立場とヨーロッパに対する安全保障を疑問視する可能性があります。

 

米国にとって、ロシアの勝利は、ヨーロッパ、アジア、および中東での戦略に大きな影響を与えるでしょう。

第一に、ウクライナでのロシアの成功は、米国がヨーロッパに軸足を残すことを要求するでしょう。

競合する優先事項である中国との競争とどちらを優先するか難しい判断になるでしょう。

しかし、危機に瀕している利益は極めて重要なものです。

EUと米国はお互いに最大の貿易と投資のパートナーであり、2019年の商品とサービスの貿易は合計1.1兆ドルに上ります。

 

ヨーロッパ人は米国のより大きな軍事的関与を要求するでしょうが、ウクライナへのより広範なロシアの侵略は、すべてのNATO加盟国にその防衛費を増やすように駆り立てるべきです。

現在、西側と恒久的に対立しているロシアにとって、中国は経済的後ろ盾となり、米国の覇権に反対するパートナーとしての役割を果たすことができます。

米国にとって最悪のケースでは、中国はロシアの行動によって大胆になり、台湾を脅かす可能性があります。

しかし、ウクライナでのエスカレーションが中露関係に利益をもたらすという保証はありません。

ユーラシア経済の中心になるという中国の野心(ウクライナは一帯一路政策の重要拠点)は、ヨーロッパでの戦争によって損なわれるでしょう。

 

ロシアによる大規模な軍事行動の衝撃は、同様にトルコにも波紋を投げかけるでしょう。

エルドアン大統領は、超大国を演じるという冷戦ゲームを楽しんでいますが、広い地域を不安定にするロシアの行動は、トルコを米国に押し戻す可能性があります。

これはNATOにとって良いことであり、中東における米トルコのパートナーシップの可能性を広げることにもなります。

トルコは迷惑な存在ではなく、本来あるべき同盟国に戻る可能性があります。

 

ウクライナの危機において、西側はロシアを過小評価してはいけません。

ウクライナでのロシアの勝利は空想科学小説ではないのです。

しかし、西側がロシアの軍事的征服を防ぐ事ができないにしても、その後に起こることに影響を与えることはできるでしょう。

第二次世界大戦中にソ連に併合されたバルト三国の独立を米国が後押ししたのと同じように、西側はこの紛争において品位と尊厳の側に立つことができます。

永遠に勝ち続ける事はありません。

多くの場合、間違った戦争を開始して勝利した国は、時間の経過とともに自滅します。

難民が与える影響

ウクライナから発生する難民がEUに押し寄せると言うシナリオは、EU諸国にとって悪夢でしかありません。

近年、シリアやアフガニスタンからの難民受け入れに関して欧州では大激論が繰り広げられ、メルケル独首相が難民政策に関して批判を浴びて首相を辞める羽目になったのは記憶に新しいところです。

数百万人単位の難民は必ずや各国で受け入れ派とポピュリストなど拒絶派の論争を巻き起こす事になりそうです。

フランスでは4月に大統領選挙が行われますが、間違いなく結果に影響が出そうです。

 

それにしても、今回のロシアの強引とも言える軍事侵攻に対して、西側が効果的な手を打てるのでしょうか。

冷戦時代、西側のソ連に対する経済制裁は効果的でした。

最後はレーガン大統領がソ連向けの穀物輸出を制限した事がソ連崩壊の決め手となりましたが、ミャンマーにしても、今回制裁を受けるであろうロシアにしてもそう簡単に倒れそうにありません。

それは経済の後ろ盾として中国が控えているからに他なりません。

ロシアは中国と貿易していれば、最悪欧米と絶縁したとしても持続可能だと考えているかも知れません。

米国の中露二方面作戦は容易ではなさそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。