突然の中国領事館閉鎖要請
米国政府はヒューストン中国領事館の閉鎖を突然発表しました。
外交の世界において、領事館の閉鎖を要請するという事は極めて異例の事で、中国政府は、米国政府の決定に対して、直ちに反応し、対抗措置を取る事を発表しました。
何故、米国政府はヒューストンの中国領事館の閉鎖に踏み切ったのでしょうか。
米誌「Foreign Policy」は直ちに記事を発表しました。
米国政府の決定の裏には、下記の様な理由があった様です。
Foreign Policy記事要約
米国政府は中国政府に対してヒューストンの領事館を72時間以内に閉鎖する事を要請しました。
同領事館の中庭では、多くの書類が燃やされているのが目撃されています。
中国政府は、おそらく武漢や成都の米国領事館閉鎖要請を出す事でしょう。
閉鎖のきっかけの一つは、コロナ感染が中国で収まった後に帰国した米国外交官の扱いだった様です。
彼らは中国国内を移動させられテストを受けた後、陽性のものは強制送還させられました。
しかし、トランプ政権は閉鎖をアメリカの知的財産を保護する必要のためと説明し、、マルコ・ルビオ上院議員は領事館が「大規模なスパイセンター」であると主張しました。
ヒューストンは、米国のエネルギー産業の中心地ではありますが、中国の諜報活動を標的にする場合、奇妙な選択です。
中国の諜報活動は、主にサンフランシスコ領事館を中心に行われています。
匿名を希望した国務省の担当者によると、サンフランシスコも閉鎖の対象として検討されましたが、その規模と重要性のために断念された様です。
領事館閉鎖の真の目的は何でしょうか?
トランプ政権はここ数週間、大規模なサイバー攻撃、CIA陰謀説のでっちあげ、南シナ海の領海侵犯、ウイグル人に対する弾圧など中国を一貫した悪役として印象付けてきました。
一部のトランプ政権のスタッフは、米中の応酬合戦そのものを目的としている様です。
疑わしい選挙戦略でなければ良いのですが、米国企業は今後自主的に中国と縁を断つ事を考えざるを得なくなる可能性があります。
近い将来、両国間の関係は更に悪化することが予想されます。
風向きを変えた香港国家安全法導入
この記事を読むと、トランプ政権の中国叩きの真の目的が、大統領選に関連していることが透けて見えますね。
ちょっと前までなら、こういうトランプ政権の動きは対中包囲網の形成に繋がりませんでした。
どの国も、トランプ大統領はどうせ再選目当てにやっているんだろうと考え、Huaweiの排除に関しても、米国の要請を見て見ぬふりをしていたのでした。
しかし、香港への国家安全法の導入が風向きを変えた様です。
最近は、欧州からも中国に対して厳しい措置を発表する国が徐々に増えてきました。
その辺りの事情を今週号の英誌Economistは「China v America - Trade without trust(中国対アメリカー信頼なき貿易)」と題して次の様に解説しています。
Economist記事要約
米国は5GにおけるHuaweiの排除を他国に要請してきました。しかし英国を含む170の国々はこの要請を受け入れませんでした。
英国はサイバー専門家が2010年よりHuaweiをネットワークの機密性の低い部分に限定する措置をとっており、他の国もこのアプローチを真似しました。
しかし中国が法の支配を尊重してくれるだろうとの幻想は、香港での出来事ににより崩れ去りました。
ドイツはどちらに転ぶかわかりませんが、おそらく12の国はHuaweiを排除する事になるでしょう。
5GネットワークからHuawaiを排除する事そのものは、コスト的に十分受容可能です。
しかし、本当に怖いのは、中国との断裂が様々な分野で、今後加速する事です。
中国の欧州への投資は、ピーク時の2016年より7割近く減少しています。
TikTokはインドのみならず米国でも禁止されるでしょう。
香港に深く関わっているHSBCは米中両国より制裁を受ける可能性があります。
両陣営の制裁合戦がエスカレートする事が懸念されます。
冷戦時代の敵国、ソ連は貿易の面では無視できる存在でしたが、中国は世界の輸出13%、時価総額の18%を占める経済大国です。
彼らとは相互信頼がない状況でも付き合っていく必要があります。
中国の性格を良く見極めた上で、貿易のルールを作っていく必要があります。WTO(世界貿易機関)はこの点失敗しました。
5Gの様な機密性の高い分野では、厳しいチェックが必要ですが、それ以外の分野では不要です。
西側諸国は同盟を作った時に強くなります。
欧州は米国との関係を絶って、中国との貿易に走ろうとの誘惑に駆られた時期もありました。
しかし米国の大統領が交代すれば、次の大統領は間違いなく欧州との連携を重視するでしょう。
西側諸国は中国を本質的に変えることも無視することもできません。
しかし団結すれば、信頼できない相手、中国と付き合う方法を見つける事ができるでしょう。
民主主義国家の団結の必要性
西側諸国は連携した時に強くなる。全く同感ですね。
中国の高官が次の様な本音を漏らしています、「トランプ大統領が、中国にとって一番都合が良いのは、彼が西側の団結を阻害してくれるからだ。」
中国にとっては、日米欧といった国々が連携して中国に対峙されるのが、一番いやなやり方なのでしょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。