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トランプとバイデン どちらが中国にとって都合がよいか(続編)

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米大統領選の二候補、どちらが中国にとって都合が良いかとの観点から、先日ブログを書きましたが、同じ視点で、英国誌「Economist」が興味深い記事を掲載しましたので、ご紹介したいと思います。

英国人は、歴史的に中国との関係が深く、物事の裏側を見抜く力を持った国民です。彼らが、どの様にこの問題を見ているのか興味深いところです。Economistの記事をかいつまんでご紹介しましょう。

Economistの記事要約

中国にとって両候補のどちらが良いか。これは難しい質問です。北京のエリートサークルでは、両候補に猜疑心を抱きながら、議論されています。
バイデン 候補は2011年に北京を訪問した際に、中国を大事な友人と持ち上げています。トランプ大統領も、習主席のことを「とても良い友人」とまで称賛しています。

こんな甘言に中国側はだまされません。トランプ氏もバイデン 氏も、ディールの為に甘言を囁くことを中国側は見抜いています。
中国のエリートは、非公式の場で、時に本音をもらす事がありますが、両候補の事を、政策的にも、人格的にも劣っていると馬鹿にしています。

トランプ氏に対する評価

トランプ氏は無知で、予測不能で、退屈な男であるが、使い道がないわけではないと中国側は考えている様です。

彼はイデオロギーに対して無関心であり、ウイグル族への弾圧等に無関心である点は、中国側の評価するところです。中国の将軍達は、トランプ氏が軍事的冒険を嫌う点を評価しています。
中国のリーダー達は、当初、トランプ大統領を現実主義の大物と誤解していました。彼は、今、自分の事しか関心がないナルシストと中国では呼ばれています。
トランプ氏が中国の体制を変える事より、中国から金を取ることに関心があることを見抜いた中国側は、貿易戦争の第一フェーズに関して合意し、米国産品を購入することを決定しました。
中国はコロナの件について、米国が中国を罵っている最中も、貿易合意を守っています。
これをみて、トランプ氏の貿易戦争の勝利と称賛されるかもしれませんが、中国側は時間を稼いでいます

実際、トランプ大統領は、超党派の要請である中国の構造改革に関する要求を差し止めています。
それでも中国側は油断していません。トランプ大統領が、周辺の反中タカ派に取りこまれる事を恐れています。

バイデン 氏に対する評価

一方、バイデン 氏はどう見られているかというと、中国との相互関係を危険と見るよりも安定の礎と見た一世代前の政権の一員と見られています。
同氏は、オバマ政権時代に地球温暖化等国際問題に、中国と共に取り組んだ事で知られています。

しかし、中国では当時へのノスタルジックな感情は驚くほど少ないのです。
当時のアメリカのアプローチは、中国が豊かになるにつれて、中国が西側に政治的に近づいていくだろうという誤ったアメリカの認識に基づいていたという人もいます。
これはアメリカの政治家が「民主主義には、専制的な中国に欠けている創造的なエッジがある。」と自慢していたのを思い出させます。
バイデン 氏もこの手の政治家で、北京のアメリカ大使館でビザを申請している中国人学生を前に「イノベーションは、あなたが自由に呼吸する時にのみ起こりうる。」と語りました。
中国が、最高の科学者とハイテク企業を持つに至った事が、アメリカの自信を喪失させ、反中ヒステリーに陥っているというのが中国の見方です。

中国のしたたかな見方

米国で、コロナ感染が拡がり、デモが頻発した後は、「アメリカは、分断され、自己中心的で、人種差別的であるが故に、国民に安全を保証できない国となった。アメリカは没落の一途を辿っている。」との認識が北京のエリートの間に拡がりました。
中国のマスメディアはトランプ大統領を直接批判する事を避けてきましたが、最近、現地紙「Global Times」が「トランプ大統領は中国を強くする為に働いている中国のダブルエージェントではないか」とのジョークを掲載しました。
それでは、中国はトランプ大統領の再選を望んでいるのでしょうか。

この点については、意見が別れています。この問題に答える為には、次の二つの問いに答える必要があります。

  1. アメリカの衰退は不可逆的か?
  2. アメリカの衰退の加速は中国にとって都合が良いか?

安全保障の観点からは、国内では民主主義を弱め、同盟国との関係を悪化させているトランプ大統領の再選が望ましいとの声が多数を占めています。
しかし経済的側面からは、中国が利益を享受している世界の貿易システムを早期に崩壊させる事に不安があります。

この観点では、バイデン氏の方が、米中両国のデカップリングのタイミングを遅らせて、中国に他国への依存度を低下させる時間的余裕を与えるだろうと期待されています。
中国側は、次の大統領は、どちらがなったとしても、中国の台頭を抑えようとするだろうと認識しています。

バイデン 氏のスタッフがトランプ陣営より有能になる可能性がある事や、トランプ大統領が目をつむっている人権問題に、どの様な態度を示すか中国側は警戒しています。
いずれにせよ、中国は次の米国大統領が友人になってくれる事を期待していません。

米国や同盟国はどう対処すべきか

以上がEconomist誌記事の要約です。トランプ大統領もバイデン 氏も、ずいぶん見下されたものですが、中国の分析能力を過小評価してはいけないと思います。

何せ科挙の国ですから、現在の中国政府は、膨大な数の優秀なテクノクラートに支えられています。彼らは米国やその同盟国の出方を詳細に分析し、周到に国家戦略を練っている筈です。

しかも、中国はもはや社会主義の国というよりは、資本主義の国と言って良いほど、個人がお金を稼げる国になっています。

社会主義の欠点は、平等を重んじるがあまり、働いても働かなくても同じ結果しか得られない結果平等がはびこった点ですが、今の中国は、個人の創意工夫次第で、アリババのジャック マーの様に億万長者になる事も可能です。

イノベーションは、あなたが自由に呼吸する時にのみ起こりうる。」などとのバイデン 氏の発言は時代遅れと言わざるを得ません。

しかし、今の中国には重要なものが欠けていると思います。私は、がちがちの反中主義者ではありませんが、やはり自由や民主主義というのは大事だと思います。

チャーチルの名言の中に、「民主主義は最悪の政治形態だ。今まで試された他の政治形態を別にすればだが。」と言うものがあります。

自由や民主主義は、効率面から言えば最高ではありません。

しかし、人間が間違いを犯す可能性がある事を信じれば、政権交代のメカニズムを取り入れた自由民主主義は、今、我々が持ちうる政治体系としては、ベストのものだと思います。

米国は、日本や他の同盟国と共に、自由主義陣営をしっかり再構築して貰いたいと思います。

アメリカが金勘定を持ち出せば持ち出すほど、同盟国はアメリカから離れていきます。何故なら、金勘定だけであれば、中国も同じ様に重要になってきているのです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。