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ソフトなAmerica Firstを追求するバイデン政権

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初の外交貴重演説

バイデン大統領が木曜日、初の外交基調演説を国務省で行いました。

海外の報道を見ていて驚いたのは、トランプ大統領が国務省にこの一年足を踏み入れてない事でした。

国務省はトランプ大統領からDeep Stateの巣窟と見なされ、敬遠されていたそうです。

日本で言えば外務省にあたる省庁がそれほど信用されなければ、そこで働く職員も士気がかなり下がったものと思われます。

バイデン大統領の基調演説については、多くのメディアで取り上げられていますが、今日は米誌Foreign Affairsの「Biden Puts a Kinder, Gentler Spin on ‘America First’」(バイデンはよりソフトな「America First」を採用する)と題した記事をご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要約

バイデン大統領は、木曜日に国務省で行われた最初の外交政策演説で、トランプ時代から新時代への移行について解説しました。

しかし過去を完全に置き去りにするわけではありません。

政権が設立されてから2週間足らずであり、バイデン氏の外交政策を完全に読み取るのは時期尚早です。

そして、世界保健機関とパリ協定への復帰イスラム教徒の入国禁止解除など、彼の最初の外交政策決定は、トランプ前大統領がとった行動の単なる否定でした。

バイデン氏が国務省で演説するという決定は、前政権の4年間で傷つけられた外交官を安心させることを意図していました。

しかし、彼の演説と初期の行動は、バイデン氏が全体主義国家や経済的ライバルの台頭の時代に、外交政策にどのように取り組むかについてのいくつかのヒントを明らかにしています。

バイデン氏は、トランプ氏のナショナリストのビジョンを完全に放棄するわけではありません。

まったく逆です

中産階級の福祉を外交政策の中心的な信条にするというバイデン氏の目標は、トランプ氏を権力の座に押し上げたポピュリストのメッセージの痕跡を残しています。

かつて自由貿易を含むグローバル化した経済システムの擁護者であったバイデン氏は、現在、すべての外交政策決定は「アメリカの労働者を念頭に置いて」行われなければならない」と約束しています。

 

しかし、一方で、バイデン氏はトランプ氏からの明確な離脱と、米国の正統派の外交政策への復帰を示唆しました。

バイデン氏は、「過去数年間の怠慢で萎縮した民主的同盟の再建を約束する」事を誓いました。

トランプ氏は同盟国が米国を利用していると見なしていましたが、、バイデン氏は、同盟国と共に協力する事によって、遥かに安いコストで、気候変動やパンデミックなどの世界的な脅威と戦い、ライバルであるロシアや中国と戦い、最先端の技術を使った新しい市場を作る事ができると見なしています。

バイデン氏は、「世界にとって正しいことだからという理由だけで、米国は外交に投資していない。」

「それは私たち自身の国益のためです。」と述べました

それは、よりソフトな「アメリカファースト」のように聞こえます。

 

バイデンが中産階級のために外交政策を機能させようとしている事は、外交政策の将来について民主党内で進行中の議論を反映しています。

ブルッキングス研究所の学者であるトーマス・ライトは、グローバリゼーションと多国間外交のレンズを通して米国のリーダーシップを見る人々と、外交政策が主に国内の経済的および政治的目標に役立つべきであると信じる人々との間の戦いと呼んでいます。

バイデン氏の発言と、米国の優先事項は「ゴールドマン・サックスに中国市場にアクセスさせる事ではない」と述べた国家安全保障問題担当補佐官のジェイク・サリバンの発言は、貿易協定に懐疑的で労働者階級のアメリカ人には不公平だと言う民主党進歩派の意見を反映しています。

 

米国経済、民主主義制度、道徳的地位を再構築することは、米国のリーダーシップを回復するためのバイデンの戦略の鍵です。

より公平な貿易協定を通じて中産階級の雇用を保護し、「Buy America」政策を通じて米国の製造業を支援し、研究と技術により多く投資することにより、米国は競争力を強化し、台頭する中国に対抗すると主張しました。

バイデン氏が「民主主義に不可欠」と呼んだ報道機関へのブリーフィングのような伝統的な慣行に戻ることで、彼は過去4年間にひどく傷ついた政治的信頼への癒しを始めることを目指しています 。

そして、人種差別や国内過激主義と戦うことによって、バイデン氏はすでにイスラム教徒の入国禁止を覆し、国内過激主義と戦うための政府全体のアプローチを発表しました。

世界中の人権の促進は、はるかに強力になります。

バイデン氏「米国は私たちの力によってではなく、私たちが模範を示す事でリードする」と語りました。

これは、バイデン氏が「近年激しい圧力にさらされており、過去数週間で危機に瀕している」と述べた米国に道徳的リーダーシップを再構築することを意味します。

米国議事堂への暴力的な攻撃は言うまでもなく、民主主義機関と法の支配に対する4年間の攻撃は、米国の道徳的権威を弱体化させたようです。

 

木曜日の彼の演説で、バイデン氏は、厳しい試練を経験した後、より強い米国のリーダーシップが国を更新する事で現れるだろうと予測しました。

米国市民は、近年ダメージを受けた民主的行動の習慣を取り戻さなければなりません。

米国が全てを失いかけていた事を正しく認識する事が、米国を民主的に更新する上で最も重要かも知れません。

バイデン氏のAmerica First

バイデン氏はダメージを受けた米国の民主主義のリーダーとしての権威を取り戻す事を期待されています。

この面では、彼はかなりやってくれそうです。

もちろん米国自体の国力が以前ほど圧倒的という訳ではないので、優先順位が付けられると思いますが、米国にとって重要な地域では、期待する役割を果たしてくれるのではないかと思います。

しかし、一方で上記論文が示唆する通り、米国の国益特に米国労働者の利益になるかならないかが重要な尺度になりそうですので、我が国を含めた同盟国は米国の厳しいプレッシャーに晒されそうです。

貿易交渉でもそうですし、おそらく駐留米軍の負担についても、厳しい姿勢で望んでくるのではと思います。

バイデン政権の唱える同盟強化は、同盟国の負担を上手く引き出すためのお題目として使われる可能性があります。

日本や同盟国にとっては、バイデン政権のソフトな「America First」はなかなか厳しいものになりそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。