主要国の最後に中国と会談したバイデン大統領
ようやく水曜日の夜にバイデン大統領は習主席と電話会談を行いました。
これは新大統領が中国を軽視している訳ではありません。
全く逆です。
同盟国の全てと入念な打ち合わせを行った上で、中国との会談に臨んだバイデン大統領の姿勢は、米国新政権の中国に対する警戒感を物語っています。
日米メディアは一斉にこの面談を取り上げました。
しかし今日は敢えてフランスの経済紙Les Echosの記事を取り上げます。
欧州はもちろんNATOという安全保障条約によって、米国と同盟関係にあります。
一方、経済面では中国の存在感がますます高まっており、昨年末に新しい貿易投資協定を中国と結びました。
経済面では中国との関係を維持したいとの本音が透けて見えます。
ある意味、日本と同じ様な立場の欧州が米中の関係をどう見ているのでしょうか。
「Premier round musclé entre Joe Biden et Xi Jinping」(緊張感のあるバイデンと習近平の最初の会談)と題した記事をご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
バイデン大統領は、就任以来初めて中国の習近平主席と話をしました。
ホワイトハウスの報告によると、気候変動、核拡散、新型コロナとの戦いに協力する可能性を示しながらも、両国が対決する人権と商慣行の問題も提起された様です。
バイデン氏がヨーロッパとアジアのほとんどの同盟国と話をした後、会談は中国の大晦日に当たる水曜日の夜(ワシントン時間)に行われました。
今後数年間、中国に対処するために、団結した民主主義国家の最前線で主導権を握る意欲を強調しました。
バイデン氏は、経済問題については継続性を示しながらも、人権の問題に関してトランプ前大統領よりも厳しく対応したいという彼の意向を示しました。
ホワイトハウスの発表によると、彼は「香港での弾圧」、ウイグル人少数派への「人権侵害」、そしてこの地域での中国の拡張主義について特に台湾に対して「深い懸念」を表明しました。
南シナ海での膨張主義についても警告を中国に送った後、彼は「自由で開かれたインド太平洋地域の保護」を訴えました。
前政権よりは柔らかい表現で、バイデン氏は、北京の「不公正で強制的な」経済慣行を非難しました。
トランプ氏が中国の輸出に課した関税は引き続き適用されるが、米国の通商政策の見直しを現在行っているとバイデン氏は述べました。
彼はまた、前任者によって無視された、気候変動などの問題に関するより実際的なアプローチを提案しました。
「私は、中国がアメリカの人々に利益をもたらす時、中国と協力するだろうと彼に言いました」とジョー・バイデンはツイートしました。
習近平は「中国と米国の対立は両国のみならず世界にとって『災厄』になる」と述べ、両国間の対話の再開を求めたと国営報道局の新華社は発表しました。
しかし、彼は、台湾、香港、新疆ウイグル自治区に関する問題に関しては「これは中国の内政だ」と主張しました。
彼は米国に対し、中国の主権に関連する問題について「慎重に行動する」よう求めました。
中国、米国にとって「最も深刻な競争相手」
ジョー・バイデンと習近平の間の会話は、米国の元首が国防総省に、米国がその戦略的敵と見なしている中国に対する新しい「確固たる」軍事戦略を策定するように求めた同じ日に行われました。
この目的のために国防省内に特別なワーキンググループが設立されました。
15人の民間および軍の顧問で構成されるこのチームは、4か月後に、国防相のロイド オースティンに勧告を提示します。
目的は、北京の領土的野心に対抗するために太平洋で必要な軍事姿勢を決定することです。
ジョー・バイデンは先週行われた最初の外交政策演説で、中国を「アメリカにとって最も深刻な競争相手」と呼びました。
彼は、「中国の経済的不公正に立ち向かい、その攻撃的かつ強制的な行動に対抗し、人権、知的財産、およびグローバルガバナンスに対する中国の攻撃を撃退する」ことを約束しました。
欧州メディアのバイデンに対する好意的な論調
このLes Echosの論調もそうですが、英仏メディアの論調はバイデン氏に対して概ね好意的です。
やはりトランプ氏の「America First」がよほと腹に据えかねていたものと思われます。
バイデン氏が就任後最初に電話をかけたのは欧州の首脳たちでした。
プライドの高い欧州の人たちからしてみると、プライドをくすぐられたのでしょう。
しかし、二強である米中の戦いの主戦場は欧州ではありません。
インド太平洋が間違いなくこれから最重要の地域となるでしょう。
この地域で米国にとって最も頼りになるパートナーは我が国です。
この地域で同盟国と共に米国が如何に中国に立ち向かうかが鍵を握ります。
もちろんクアッド(米国、豪、印、日)4カ国の協力は重要ですが、最近ここに英国が加わる姿勢を見せています。
英国の人たちは決して侮辱された事を忘れません。
プライドの高い彼らは、香港をめぐる国際条約である中英共同声明をいとも簡単に反故にされ、国家安全維持法を導入された屈辱を決して忘れていないと思います。
彼らは本気で中国を押さえ込もうと考えていると思いますので、英国のクアッド参加は大変強力な援軍が登場した様なものです。
日本がここで気をつけないといけないのは、対中の旗を振る時に目立ちすぎない事だと思います。
英米という国際的に発言力のある両国に中国を叩かせ、困った中国が日本に泣きついてくる様なしたたかな外交を展開してもらいたいと思います。
歴史的に見ても、米中の関係が悪い時に、日本の立場は強まります。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。