バイデン 氏に祝電を打たない国々
バイデン氏当選確実の報が出された後、各国首脳は続々とバイデン氏に祝電を打っています。
菅首相も既に発信しましたし、バイデン氏と好関係とは思われないサウジやトルコも打った模様です。
しかし、未だに祝電を打っていない国が幾つか存在します。
中国の習近平主席やブラジルのボルソナロ大統領、メキシコのオブラドール大統領らがそうですが、もう一人大物がいます。
それはロシアのプーチン大統領です。
米露の関係はトランプ時代も決して順風満帆という訳ではなかったのですが、両国のトップ同士はうまがあった様です。
今年米国で行われる予定だったサミットに、プーチン大統領を呼びたいとトランプ大統領が突然提案した事を覚えておられると思いますが、トランプ大統領は、プーチン大統領と話さないと、世界中のいろいろな問題は解決できないと思っていた様です。
確かに、中東やアフリカの問題を解決しようとする際に、西側の首脳とだけ話しても埒が開きません。
ヤクザが他の組と闘争している時に、親分が同じ組の子分たちと話しても直接的な効果が薄いのと同じです。
実利主義者のトランプ大統領は敵の親分と直接対話を好んだのです。
しかし、バイデン氏になるとそうは行きません。
プーチン氏はバイデン政権との長い対立を覚悟しないといけないでしょう。
米誌Foreign Policyが「Putin Expects a Long Confrontation With America Under Biden」(プーチンはバイデン 政権下の米国と長い対立を予想している)と題する記事を発表しました。
かいつまんでご紹介しましょう。
Foregin Policy記事要約
プーチン大統領は、バイデン氏を未だに祝福しておらず、トランプ大統領の法廷闘争が終わるまで祝福しない様です。
公式の祝辞が出された後でも、ロシア政府はバイデン政権下での米国との長期にわたる対立を予想しています。
トランプ大統領のプーチン氏に対する友好的なコメントにもかかわらず、米国と欧州の同盟国は、トランプ政権時代に、ロシアに対する複数の経済制裁に合意しました。
米国議会でのロシアに対するネガティヴな見方を考えると、ロシア政府はそれらの制裁が無期限に維持されるだろうと考えています。
さらに、トランプは米露の軍縮交渉に大打撃を与え、2014年のウクライナでの戦争の勃発とロシアのクリミア半島併合後で二国間関係は更に悪化しました。
クレムリンの観点から見たトランプ政権の前向きな側面は、米国における国内の二極化と、米国の同盟国との関係悪化でした。
2020年の米国選挙結果は、ロシアにとっていくつか前向きな側面があります。
選挙結果は、米国社会の深い分裂が存続することを示しているので、新政権は国内問題に忙殺される可能性があります。
上院が恐らく共和党に支配される事も、次期政権を弱体化させます。
さらに、長くて問題含みの選挙プロセスとそれに対するトランプ氏の攻撃は、ロシアのシステムが混乱する民主主義よりも優れていることをロシア国民に納得させようとする国内プロパガンダを容易にします。
プーチン政権の実用主義者たちは、ロシアに対する将来の制裁に対するバイデンのアプローチが、感情ではなく、戦略によって導かれることを望んでいます。
ロシアへの制裁が、欧州同盟国の経済的利益を傷つけたり、ロシアの中国への依存を増大させるなどの副作用を最小限に抑えるよう調整されることを期待しています。
バイデン氏がが約束した戦略兵器削減条約を延長するチャンスもあります。
しかし、バイデン政権誕生は、ロシアにとって、期待するよりも憂慮すべき多くの理由があります。
プーチン大統領は、2011年3月にバイデン氏が副大統領としてモスクワを訪れた時の言動から、彼に対して非常に否定的な見解を持っています。
ロシアの野党指導者グループとの会談で、バイデン氏は、「プーチン氏は2012年に再び大統領に立候補すべきではなく、代わりに、オバマ前大統領と良好な関係を持っているメドヴェージェフ大統領が留任する事を認めるべきである」と述べたと伝えられています。
この発言が(後に殺害された)野党の政治家ネムツォフのブログを通じて公表された事は、プーチン氏を激怒させました。
プーチン政権に関して、バイデン氏と彼の顧問は選挙期間中に何度も厳しい見解を表明しました。
バイデン氏は、民主主義への世界的な信頼を回復し、権威主義と海外の腐敗と戦うことに彼の外交政策を集中させたいと述べました。
ロシア政府にとって、それは、政権と関係のあるロシアのエリートの隠された富を暴露されるリスクをはらみます。
更に、2016年の米国選挙へのロシア政府の干渉は、バイデンチームの主要メンバーを含む米国の外交専門家を激怒させており、ロシアに罰を与えたいと彼らが考えている事をロシア政府関係者は認識しています。
とはいえ、新政権は国内問題と中国との覇権争いに焦点を当てる可能性が高く、ロシアに対する政策詳細は、バイデン氏が持ち込む外交チームによって決定されるでしょう。
アルメニアに与えたお灸
ロシアもバイデン政権においては、米国との関係が悪化する事は避けられそうもありません。
しかし、アメリカが世界中のすべての紛争に首を突っ込んでくる時代は終わりそうですので、ロシアが引き続き中東や中央アジア地域で重要なプレーヤーを演じる事は可能と思われます。
先日、停戦合意が署名されたアゼルバイジャンとアルメニアの武力紛争も、ロシアの介入によって最終合意に導かれました。
この武力紛争はプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が後ろで糸を引いていたと思われますが、最後はこの両者が手打ちをし、両者にとって都合の良い落とし所を見つけたのだと思います。
プーチン大統領にしてみれば、反ロシア的性格の強い現在のアルメニア政権にお灸を据える事になりました。
ロシアと安全保障条約を結んでいても、アルメニアの様にロシアにはむかえば、ロシアは守ってやらないよと他の旧ソ連諸国に教訓を与える効果もありました。
一方、トルコは兄弟国と言って良いアゼルバイジャンを勝利に導いた事で、国内外にアピールする事ができました。
この停戦合意に米国の影は殆ど見られませんでした。
バイデン政権下でも、この傾向は変わらないと思われます。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。