MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

日米首脳会談から日本が勝ち取るべきもの

f:id:MIYOSHIN:20210415214859j:plain

最初の首脳会談の相手として菅首相を選んだバイデン 大統領

バイデン は最初に面談する首脳として日本の菅首相を選びました。

いよいよ今週ワシントンで日米首脳会談が行われます。

この会談の主要議題が中国である事は間違いありませんが、この会談を米国側はどの様に見ているのでしょうか。

米誌Foreign Policyが「The Summit That Can’t Fail」(失敗のできない首脳会談)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要旨

米国の新大統領ジョー・バイデンと最近就任した菅義偉首相は、金曜日の最初の会談を成功させる必要があります。

これは、バイデン大統領就任後初めての首脳会談です。

両者はほとんど同じ理由でこの会談を必要としています。

中国の高まる脅威に対抗し、国内での政治的信頼を得るためです。

コロンビア大学の日本政治研究家であるジェラルド・カーティスは、次のように述べています。

「自民党選出の首相としては珍しく、菅首相は自らの派閥を有していない。米国との関係をうまく処理できなければ、日本に帰って自民党のリーダーに再選される可能性は無い。第二次世界大戦の終結以来、アメリカとの好関係を確立できずに生き残ることができた首相はいない。」

 

一方、バイデン氏もまた、「同盟国との関係の回復を彼の外交政策戦略の中心に据えている以上、この首脳会談を失敗できない。」とカーティス氏は述べました。

ブリンケン米国務長官が最近、中国を米国の「最大の地政学的挑戦者」と表現している中、日本ほど重要な同盟国はありません。

茂木外務大臣は先月の米国国防長官ロイド・オースティンとの会談で、台湾海峡での中国の積極的な軍事行動に対し、尖閣諸島をパトロールすると述べました。

日中間の関係は、数年前よりも緊張を増しています。

 

菅氏が大統領選出後に行ったバイデンとの電話会議で、バイデン 大統領は「尖閣諸島が攻撃された場合、米国の対応を要求する日米安全保障条約第5条を発動する」と示唆しました。

今回の首脳会談のために、日米は台湾海峡の安定の重要性を明確に示す共同文書の作成を開始したと報じられており、東京は中国に対する米国のミサイルネットワークに参加するかどうかを検討しています。

これは沖縄とフィリピンを結ぶいわゆる「第一列島線」に関係しますが、この動きに関しては日本国内で物議を醸しています。

 

一方、日本政府は、過去に人権侵害について北京を批判することをしばしば躊躇していましたが、米国の要請に応えて、首脳会談の直前にそれを行うと同意したと伝えられています。

その合意について、中国政府は反応し、米国に「引きずられない」様にと日本政府に警告を行いました。

「特定の超大国の意志は国際社会を代表するものではない」と中国の王毅外相は述べました。

 

菅にとって、2つの超大国の間で交渉することは危険です。

中国は日本の最大の貿易相手国です。

2019年の日本の輸出の22.1%が中国向けだったに対し、米国向けは18.5%でした。 (米国の最大の貿易相手国はEU、カナダ、メキシコです。)

日本の中国への輸出は2019年から2020年にかけてさらに5.1%増加しました。

菅が厳しい人権声明に署名すれば、日本は中国のボイコットに苦しむ可能性が非常に高いでしょう。

 

しかし、菅首相の下で、日本は、中国に対して、過去よりも厳しい姿勢をとっています。

「私が感じているのは、日本の国民の態度に非常に大きな変化があるということです。」と、米国外交官だったクライド・プレストウィッツは言いました。

「彼らは中国からの脅威が現実のものであると考え始めています。

台湾が琉球諸島と尖閣諸島にどれほど近いかを見てください。

沖縄は琉球諸島の中で最大です。

人民解放軍が台湾を占領した場合、彼らは日本に向かうすべてのものをブロックする事が出来ます。」

これらの脅威に直面して、バイデン ー管の関係はどのように展開されるでしょうか?

第二次世界大戦の終結以来、日本は防衛のために米国に依存してきました。

その結果、日本の政治家は彼らの名声と人気がしばしば米国大統領が彼らをどのように扱うかに依存していることに気づきます。

1980年代、レーガン大統領は、中曽根首相が日本をソ連に対する「不沈空母」に変えると宣言した後、中曽根が日本で在位期間の長い首相の一人にするのを助けました。

 

最近では、菅の前任者の安倍晋三が、トランプ大統領との関係を築こうと懸命に努力しました。

彼は米国大統領の要求に応じて彼をノーベル平和賞にノミネートしました。

しかし、安倍首相はトランプの貿易不均衡に対する不満から逃れませんでした。

大統領は日本に25%の鉄鋼関税を課し、安倍首相はトランプにTPPから離脱しない様懇願しましたが、トランプは聞き入れませんでした。

トランプ氏の北朝鮮に対する無茶なアプローチや、米軍駐留費用として現在の4倍に当たる年間80億ドルを支払うことを日本に要求した事が、両者の実際の関係を証明したかも知れません。

安倍首相は昨年秋、消化器疾患を訴えて辞任しました。

 

菅とバイデンは、彼らの利益がより一致していて、多くの点で類似していますので、良好な関係を築く可能性があります。

72歳の菅は、「日本のバイデン」と表現することができます。

カリスマ的な前任者とは異なり、地味なプロの政治家です。

バイデンのように、菅は息子を取り巻くスキャンダルと戦わなければなりませんでした。

バイデンは庶民出身と自信を形容する事が好きですが、菅も労働者階級出身です。

 

バイデンがそうであったように、菅もしばしば過小評価されています。

上智大学の政治専門家である前嶋和弘氏は、「彼らの性格には多くの共通点がある」と述べました。

菅氏は、安倍首相の下で内閣官房長官を務めていたとき、「強力な権力を背景に、強硬な方法で官僚機構を管理した。」と述べました。

 

すべてのサミットと同様に、金曜日の会議の見え方は実体と同じくらい重要であり、双方が居心地の良い見え方を演出します。

バイデンが比較的高い支持率を維持している一方、人気のあった安倍に比べて支持率が低いという理由で、菅は危機に瀕しています。

菅はまた、コロナ対策に失敗したことでも批判されています。

これまでに予防接種を受けた日本人は1%未満であり、日本は米国やヨーロッパ、更には一部の発展途上国にも大きく後れを取っています。

 

「今回の米国訪問は、日本の首相にとって、日本が米国の最も忠実な同盟国であることを確認するために重要です」と、国家安全保障評議会の国際経済学の元ディレクターであり、戦略国際問題研究所のアジア貿易専門家であるマシュー・グッドマンは述べました。

「バイデンが主要な同盟国やパートナーと協力するつもりであると言う時、私たちが真剣であることを示すことも非常に重要です。そして、バイデン が主要な同盟国と直接それを行うことができるのはこれが初めてなのです。」

 

両首脳が発表する可能性のある共同コミュニケは、日米関係の緊密さと新技術を共同開発する合意を確認するものと予想されています。

そしておそらく、日米同盟を、彼らが参加しているクワッドとともに、インド太平洋地域の治安を守る平和の要であると呼ぶでしょう。

中国との関係を築くのがいかに難しいかという中心的な問題は、2人の指導者の間に光明を生み出す可能性があります。

「バイデンの取り巻きが菅首相を縛る国内の制約にどれほど敏感であるかが、未解決の問題です」とカーティスは言いました。

「菅は、日本を新しい米国政権の中国戦略に近づけることにどれほど勇敢になれるでしょうか?」

米国から譲歩を引き出す最高の好機来る

この論文が指摘する様に、米国大統領との好関係を築いた日本首相は長続きしています。

中曽根ーレーガン、小泉ーブッシュ、安倍ートランプが有名ですが、長く首相を務めたいが故に、米国大統領の言いなりになるのは如何なものかと思います。

現在、日本が置かれている状況は、朝鮮戦争当時と同じくらい、米国が日本を同盟国として頼りにしています。

外国の首脳のトップバッターとしてワシントンに呼ばれたのが菅首相である事は、米国の日本に対する期待を物語っています。

中国も同じ様に日本に秋波を送っている状況ですので、ここは現在の状況を十分に認識した上で、米国から取れるものは全て取るという姿勢で日本政府は交渉すべきと思います。

日本は安保条約で米国に守ってもらっていますので、米国の同盟国として振舞う事は当然ですが、米国の要請に応じて、中国に厳しい姿勢に転ずれば、当然中国から制裁を受ける可能性があります。

菅首相は、バイデン 大統領に、日本が米中の綱引きの間で厳しい立場に置かれている事を認識させる必要があると思います。

その状況を米国側に十分認識させた上で、日本が米側に付く事を米国政権が要求するのであれば、それなりの見返りを要求すべきと思います。

外交は平和的な手法をとった戦争です

日本は有利な国際状況を梃子に、米国から譲歩を勝ち取るべきと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。