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記者会見を拒否した大坂選手発言が広げる波紋

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大坂選手の苦渋の決断

23歳にして、グランドスラムを既に4回も制覇した大坂なおみ選手は、BLM運動でも大きな役割を果たしましたが、全仏オープンの開催を前にして、「記者会見を一切行わない」と発言して話題を呼んでいます。

この発言に関して英BBCが「French Open: Will Naomi Osaka's decision not to speak to media prompt change?」(全仏オープン:大坂なおみがメディアに話さないという決断は物事を変えるか?)という記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

BBC記事要約

そのシステムに挑むとしたら、大坂なおみしかありませんでした。

4度のグランドスラム優勝を誇る日本人は、メンタルヘルスを守るため、全仏オープン中は記者会見を一切行わないと語りました。

彼女の発言は、テニス界だけでなく、それ以外のアスリートからも称賛されています。

23 歳の彼女は、再び議論をまき起こし、変化を促すために彼女のプラットフォームを利用しようとしているからです.

一方、一部のテニス関係者はあまり協力的ではありません。

彼女は、メディアとの約束を履行しなかったことで、1 回の記者会見につき最高 20,000 ドル (220万円) の高額の罰金に直面します。

金曜日にインタビューを受けた仲間のプレイヤーの一般的な意見は、彼女のスタンスを尊重するものの、メディアに対する義務は「仕事の一部」であると信じている様です.

 

彼女の行動は何かを変えるのでしょうか?

「もし組織が『記者会見を受けなければ罰金を課します』と言い続け、アスリートのメンタルヘルスを無視し続けるなら、私はただ笑うしかありません」と大坂は語りました。

女子ツアーを管理する WTA は、メンタルヘルスが「最も重要」であると述べ、プレーヤーをサポートするための「システムが整っている」と説明しました。

一方、「プロのアスリートは、自分のスポーツとそのファンに対して、メディアに語り、自分の視点を共有し、自分のストーリーを伝える責任があります。」と主張します。

セリーナ・ウィリアムズは、2月に大阪に準決勝で敗れた後、全豪オープンの記者会見を泣きながら去っていきました。

英国のプレーヤーであるナオミ・ブローディは、プレーヤーは試合後 30 分以内にメディアに話さなければならないというルールを変更することを検討する時が来たと考えています。

これまでのところ、テニス協会からの回答は、変化に対する意欲がないことを示しています。

フランステニス連盟(FFT)のジル・モレット会長は、「大阪の発言は信じられない間違いだと思う」と語りました。


大坂はパリで自分を有利にするか?

全仏オープンで3 回戦を超えたことのない大坂が、次の 2 週間、パリでメディアのプレッシャーなしにどこまで進むかは興味深い点です。

彼女の投稿によると、プレイヤーは「自分の心に疑念を抱かせる」ような質問をされることがよくあり、自分を疑う人に自分をさらけ出す準備ができていないと述べています。

一方、短距離選手のアッシャー・スミスは、「選手の心理に亀裂を見つけようとし、時にはそれを作りだそうとする」と記者たちについて語りました。

「もし彼女が今週うまくやったら、他の選手が彼女を真似して、ウィンブルドンで同じことをするのではないでしょうか。」とブローディは語りました。

 

BBCテニス担当記者 ラッセル・フラーによる分析

大坂なおみの投稿を読んで、2019年、ウィンブルドンでの1回戦で敗れた後の記者会見を思い出しました。

彼女は、全米と全豪のチャンピオンとして参加しましたが、ユリア プチンセワにストレート セットで敗れました。

試合後、私は大坂に、これほど短い時間でメジャーなスターになるのに慣れるのは大変だったのではと尋ねました。

彼女は泣き出しそうだと司会者に伝え、静かに部屋を出ました。

私はその時の会見の様子をもう一度ビデオで見直しました。

すべての質問は配慮が行き届いていましたし、その場にいた全員が、21 歳の子供にとってどれほど難しい経験であるかを十分に認識していたように感じました。

グランドスラムでの敗北は残酷です。

そして、テニスにおいて説明する責任はプレーヤーにあります。

多分それは配慮すべき点です。

そして私達はその口調に十分注意を払う必要があります。

しかし、私たちは難しい質問をする権利を絶対に保持しなければなりません。

スポーツには宣伝が必要であり、長期的な信頼性のために、プレーヤーはSNSを通じてのみファンと交流することを許されるべきではありません。

プロ選手としての義務

大坂選手の言動に同情の余地はあります。

テニスの頂点を目指す選手間の競争は熾烈を極めます。

先日引退表明をしたロシアのシャラポヴァ選手は、ジュニアの頃からテニスプレイヤーの友人を敢えてつくらなかったそうです。

一旦コートに出れば、相手を完膚なきまでに叩き潰す事を仕事とするプロの選手にとって友情など邪魔者でしか無かったのでしょう。

極限までに闘争心を研ぎ澄ます様に宿命づけられたテニス選手にとって敗北の後のメディアの質問は傷口に塩を擦り込む様なもので、耐えがたい屈辱である事は理解できます。

しかし、テニスが興行である以上、そしてメディアが興行を盛り上げる最も重要な媒体である限り、テニス選手は記者会見を拒否できないと思います。

今回の大坂選手の発言に対してセルビア出身のジョコビッチ選手(現在世界ランキング1位)が即座に談話を発表し、記者会見は選手の仕事の一部であると発言しました。

ジョコビッチ選手はセルビア出身という事もあり、どの国に行っても彼を応援してくれる人は少なく、常にアウェイの状態で戦う事を余儀なくされてきました。

記者会見でも神経を逆撫する様な質問を多く受けてきたはずです。

そんな彼が記者会見はプロ選手にとって義務であると発言した事は注目すべきと思います。

今後、大坂選手に対する評価はどうなるのでしょうか。

おそらく海外メディアは厳しい論調になっていく事が予想され、それが彼女を更に精神的に追い詰めるのではないかと危惧します。

彼女はまだ23歳。米国では若くして名誉と大金を手にしたアスリートがその後人生の坂道を転がり落ちた例は枚挙にいとまがありません。

彼女がその様な道を歩まず、偉大なテニスプレイヤーとして歴史に名前を刻む事を祈っています。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。