コパ アメリカでの優勝
日本は今オリンピックの話題で持ちきりですが、先日アルゼンチンが久しぶりにコパ アメリカ(サッカー南米選手権)で優勝しました。
この大会でMVPに選ばれたメッシ選手は、バルセロナの所属プレイヤーとして数々の栄光に包まれていましたが、アルゼンチン代表としてはことごとく優勝カップを取り損ねていました。
優勝が決まった瞬間グラウンドに跪き、涙ぐむ姿は、彼がどれだけアルゼンチンに優勝カップを持って帰りたかったかを物語っていました。
メッシ選手の特徴は華麗なプレースタイルにありますが、テニス界にも似たタイプとしてロジャー フェデラーという天才がいます。
パワーテニスが主流の男子テニス界において、力任せでない彼の優美なプレースタイルは他と一線を画しています。
そんな二人の共通点を英誌Economistが「Roger Federer, Lionel Messi and the pursuit of greatness」(ロジャーフェデラー、リオネルメッシの偉大なわけ)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
史上最もスタイリッシュで成功したアスリートとして、ロジャーフェデラーとリオネルメッシは当然のことながら比較の対象となります。
フェデラーは、ナダル選手とジョコビッチ選手と同じく20の男子シングルスのメジャータイトルを獲得し、他のどのプレーヤーよりも多くのグランドスラム決勝に到達しました。
メッシはバルセロナで34のトロフィーを獲得し、世界最高のサッカー選手の賞であるバロンドールを6回も受賞しています。
フェデラーは、多くの専門家が彼のテニスを説明するために使用するのと同じ表現で、メッシ選手の能力を称賛しています。「彼には常に3つの選択肢があります。 彼はそれを持っている数少ない人の一人です。」
近年、二人の類似性が深まっています。
フェデラーは35歳になった後、3つの主要なタイトルを獲得しました。
34歳のメッシは、これまで一度も優勝できなかった国際トーナメントで優勝したばかりです。
これらのスポーツでは、30歳を過ぎれば、プロとして衰退するだけと考えられていました。
フェデラーとメッシはどちらも、もはやその様な常識が時代遅れになっている事を示しています。
彼らに関する2冊の本が同時にリリースされたの時宜を得ています。
「TheBarcelonaComple」では、フィナンシャルタイムズの記者であるサイモンクーパーが、メッシ氏を「推進力」として、スペインのサッカークラブが如何に巨大になったのかを分析しています。
ニューヨークタイムズの記者であるクリストファー クラレイによる「The Master」は、テニスプレーヤーと彼の内輪へのインタビューに基づいた、より一般的な伝記です。
両方の本は、スポーツの素晴らしさがどのように達成されるかについての貴重な洞察を提供します。
現代のアスリートは、ロックスターのように暮らし、中年になる前に体がボロボロになった一世代前の選手よりも規律があります。
1970年代初頭、バルセロナの伝説的プレイヤーであったヨハン クライフはチェーンスモーカーでした。
彼は、アヤックスでプレーしていた頃、チームメイトがトレーニングを行っている間、森の中に隠れて、最後のラップで彼らに加わったそうです。
対照的に、メッシは、彼がキャリアを延ばす事ができた理由が主に菜食主義の食事療法である事を認めており、栄養、睡眠、心理学に彼のクラブが重きを置いていることから恩恵を受けています。
フェデラーのチームで最も長く活躍しているメンバーは、2000年からフィットネスコーチを務めている元十種競技のピエールパガニーニです。
「私が今日ここにいられるのは、間違いなくピエールのおかげです。」フェデラーは語りました。
現代のテニスプレーヤーは「爆発的な耐久性」を必要としています。
つまり、スプリンターの加速とマラソンランナーのスタミナです。
パガニーニ氏のお気に入りのドリルは、フェデラー氏が重いメディシンボールを頭上に持ったまま、4つのポストの間をダッシュすることです。
「TheBarcelonaComplex」と「TheMaster」はどちらも、最上級のアスリートを特徴付ける意思決定能力に触れています。
メッシ氏は、華麗なドリブル、ピンポイントパス、ゴール前での冷静なフィニッシュで有名です。
しかし、これらすべての資質を支えているのは、スポーツ科学者が「スキャン」と呼んでいるものです。
試合中彼は、常に周りを見回しています。
2014年のワールドカップでは、彼の移動距離は出場選手で2番目に短かったのですが、元コーチのグアルディオラが観察したように、常に「頭を右、左、右、左に動かしています」。
世界最高のサッカー選手は1分間に約50回ピッチをスキャンします。
フェデラーも、対戦相手の胴体と腰の位置、ボールを打つ方法などの視覚的な手がかりを使用して、ボールに触れる前にボールがどこに着地するかを推測します。
「それはあっという間に起こる事なので、ほとんど考えずにショットを打たなければなりません」とフェデラーは説明します。
フェデラーを指導したマルク・ロセは、フェデラーのプレーを「頭脳が処理するためにより多くの時間を与えられている様だ」と形容します。
彼は楽にプレーしている様な印象を与えますが、それは見事な幻想です。
両方の著者は、メッシ及びフェデラーが生まれながらに勝つ運命にあったという考えを否定します。
クラリー氏は、幸運、特にオーストラリアのテニスコーチであるピーター カーターがバーゼルでの仕事を受け入れるという決定と、フェデラーの成功を可能にした努力を強調しています。
メッシは、サッカー選手になれなかった可能性があります。
スポーツは長い間身長についての定見を持っていました、
彼がアルゼンチンからスペインに移籍した時、バルセロナによって供与された成長ホルモンがなければ、170cmという基準に達する事が出来ませんでした。
フェデラーの成功が「運命ではなく、長期にわたる努力の結果であった」とクラリー氏が主張するように、メッシにも同じことが言えます。
伸びるトッププレーヤーの選手寿命
フットボールに革命を起こしたヨハン クライフがチェーンスモーカーで練習嫌いだったとは知りませんでした。
しかしよく考えてみると、当時のトップ選手の選手寿命は今と比べると、比べ物にならないくらい短かったと言えます。
ヨハンクライフと並び称されるアルゼンチンの英雄マラドーナも最後は麻薬中毒になり早逝しています。
不世出の天才と言われた両者のバロンドール(世界最高選手の賞)の受賞回数はメッシに比べると圧倒的に少ないのです。
破天荒な一生を送ったマラドーナの様な昔ながらのスターもそれはそれで面白いのですが、そんな選手の見頃はあっという間です。
20年以上にわたって世界最高のプレーを見せてくれるフェデラーとメッシに感謝しなければいけません。
最後まで読んで頂き有り難うございました。