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英国首相元顧問が暴露したコロナ対策の迷走ぶり

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ジョンソン首相元右腕の告白

以前、英国のジョンソン首相の右腕として活躍したドミニク カミングス上級顧問について、ブログを書きましたが、彼はロックダウン中に長距離移動した事を咎められ、辞職させられました。

そんな彼が最近古巣の英国政府のコロナ対応を厳しく批判し、波紋を呼んでいます。

 

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英国の永遠のライバル:フランスでもこの話題は注目を集めている様で、仏経済紙Les Echosが「L'ex-bras droit de Boris Johnson l'étrille sur sa gestion de la pandémie」(ジョンソン首相の元右腕が、新型コロナ感染の対応について首相を糾弾)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

パンデミックの発生で混乱した政府、「集団免疫」に目がくらんだ政権、「1日10回気が変わった」首相、そして平気で嘘をついた保健大臣。これは、今週水曜日にジョンソン首相の元右腕であるドミニク・カミングスが描いた終末論的な現実です。

彼は議会で、「2020年初頭新型コロナ感染に関する大混乱は首相官邸により引き起こされた」と語りました。

 

「真実は、私を含めて大臣、高官、顧問が、このような危機において国民の期待に悲惨なほどに応えられなかったということです」と彼は述懐しました。

そして「数万人の命」が救われたかもしれないと告白しました。

 

彼によると、首相は最初に新型コロナを「豚インフルエンザのように国民を怖がらせる話」と見なしていた様です。

伝えられるところによると、彼は主任医療顧問のホウィッティ氏に、テレビで生のウイルスを接種して「恐れるものは何もない」ことを示すように依頼することさえ考えたと言います。

最も厳しい批判は、多くの理由で解雇されるべきであった保健大臣、マット・ハンコックに向けられています。

特に彼は公に嘘をついたと批判されています。

カミングスは彼がまた、「テストと追跡」のプログラムに干渉して、4月末に1日あたり10万回のテストという目標を達成したことをテレビで自慢したと非難しています。

これは決定のプロセスに大混乱を引き起こしたと語りました。

 

集団免疫

ジョンソン首相が2020年3月23日にイギリスに最初のロックダウンを課すことを決心する前に、政府とその科学顧問のグループの「Plan A」は、カミングスによれば、人口の大部分が感染した後、ウイルスに対する耐性を発揮させる集団免疫でした。

「私たちが直面した選択肢は、9月の集団免疫を期待してパンデミックの即時のピークを受け入れるか、秋に2番目のピークを被るリスクを冒して、重いコストを受け入れて、ピークを平準化し、1月に集団免疫を獲得するかでした」と元顧問は説明しました。

その頃、集団行動の専門家は、英国人はロックダウンの厳しい制限を受け入れる準備ができていないと政府に説明していました。

 

3月11日から14日までの間にすべてが変わり、人命を失うリスクに直面しました。

国民を検査し、閉じ込め、予防接種を行う「プランB」を実施する必要がありました。

実は、プランBは 「存在しなかった」ため、ロックダウンの発表には2日、実施にはさらに1週間かかりました。

「私は何年もの間、これには計画があると聞かされてきました。しかし計画はありません。」内閣府の顧問、ヘレン・マクナマラ氏は3月12日、ダウニング街での主要会議で述べたそうです。

 

カミングスはまた、9月末に彼が首相に再度のロックダウンを提案した時、それを首相が拒否したと非難しました。

彼は11月4日と12月2日まで、2回目のロックダウンを課しただけでしたが、新しい変異種のために1月と2月に3回目の監禁を命じる必要がありました。

 

これらの告発はボリス・ジョンソンに害を及ぼすでしょうか?

危機の混沌とし​​た管理について長い間批判されてきた首相は、彼のワクチン戦略の誰も否定できない成功によって人気を回復しました。

すでに成人人口の72%に少なくとも1回の注射を行いました。

そして土曜日に発表されたYouGovの世論調査では、昨年自らロックダウンの規定に違反した事から、突然解雇された後、復讐を望んでいる、傲慢さと残忍さで知られるドミニク・カミングスを信頼しているのは英国人のわずか14%でした。

一方、 英国全体のウイルスの犠牲者が128,000人近くに達しているにもかかわらず、首相の支持率は38%に達しています。

求められる客観的で公正ななコロナ対策の総括

上記の英国政府のコロナを巡る大混乱は、福島原発事故の際の日本政府の慌てふためき方を思い出させました。

国難ともいうべき大きなリスクに遭遇した場合、政治家がどの様に立ち向かうかは政治家の器の大きさを表わすと思います。

 

元々、コロナに対する対処法としては二つのやり方があると言われてきました。一つは英国やスウェーデンの様に、ロックダウンを行わず、集団免疫を早期に獲得するやり方、これは感染のピークが大きくなる一方、経済面での損失は最小限に抑えられます。

もう一つのやり方は日本の様にピークの山を出来るだけ低く抑えるために、何度も非常事態宣言を繰り返し、来るワクチンの開発を待つというやり方です。

こちらは犠牲者を少数に抑える事ができる反面、経済面でのダメージは大きくなります。

日本は後者を選び、高齢化が進んだ社会でありながら犠牲者の数をかなり抑え込むことに成功しました。ここまでは欧米に比べて劣っていたわけではないと思います。

しかし、最後の最後で大きな失策を犯してしまいました。それはワクチンの手当が遅れた事です。

 

しかしワクチンの手当が素早かったからと言って、13万人近くの犠牲者を出したジョンソン首相の手腕を手放しで評価するのは公平ではありません。(因みに日本の死者は10分の1以下)

喉元過ぎれば暑さを忘れるとばかりに人間は忘れやすい動物ですが、コロナ対策の統括だけは結果だけではなくそのプロセスも公正に評価して欲しいものです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。