意外なトップランナー
ワクチン接種において、先頭を走ったのはイスラエルでした。
英国や米国も急ピッチで接種を進めています。
しかし意外な伏兵が現れました。
それは南米のチリです。
人口比で言えばどうもこの国がワクチン接種レースのトップを走っている様です。
仏紙Les Echosが「Covid : le Chili, champion inattendu de la vaccination」(新型コロナ:チリ、ワクチン接種の予想外のチャンピオン)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
世界的な予防接種レースでは、チリは先頭集団にはいませんでした。
2月上旬に遅ればせながら接種が始まりました。
しかし、その予防接種キャンペーンはすぐに勢いを増し、他のすべてを凌駕するまでになりました。
Our World in Dataによると、過去7日間に、人口比で最も多くのワクチンを注射したのはチリでした。
注射されたワクチンの数に関して、同国は現在、英国と米国を上回っています。
ワシントンポスト紙によると、チリの人口の4分の1以上が、現在、完全にワクチン接種されています。
複数の契約
この成功には多くの要因があります。
チリのピニェラ大統領は、社会経済的不平等に直面した激しい抗議運動と相まって、昨年6月に新型コロナ感染拡大に直面しました。
チリ政府は、その信頼性を回復するために、ワクチンに関するできるだけ多くの契約に署名しようと努めてきました。
国は単一のワクチン製造業者に依存せず、可能な限りその供給源を多様化しようとしました。
アストラゼネカとファイザーのワクチンを購入しましたが、遅れて登場したジョンソン&ジョンソンからも購入しました。
ヨーロッパ諸国とは異なり、チリは西側のワクチン生産者に限定されているだけでなく、中国のCanSinoおよびSinovacとも契約を結んでいます。
チリ政府はワクチンが承認されたらより多くの用量を受け取るという契約に基づき、中国のワクチンメーカーに大規模なテストを行う事を提案しました。
政治的コンセンサス
チリ政府が果たした役割以外に、ワクチンの有効性を疑う人が少ない事を専門家は指摘しています。
チリ大学の健康政策の専門家であるマルチネス氏は語りました。 「私たちの国では、ワクチンの有効性に関する議論は存在しません。」
この国では、遠隔地であっても病院があり、強力な公衆衛生システムを頼りにすることができます。
定期的にインフルエンザなどの予防接種キャンペーンを企画されており、患者は予防接種を受けるために病院に行くことに慣れています。
革新的な組織
予防接種キャンペーンは、他の西側諸国とは根本的に異なる方法で組織されました。
政府は毎日、特定の人々のグループに予防接種を受けるよう呼びかけています。
「たとえば、3月1日に、64歳のすべての人が予防接種を受けることができましたが、63歳または62歳の人はその日は予防接種を受けられず、週の後半に指定されました」とワシントンポスト紙は説明します。
「その日はまた、36歳から39歳の保育園や小学校で働く人々の番でもありました」
政府が発行するカレンダーを参照することにより、住民は予約をせずに予防接種を受ける日を正確に知ることができます。
チリは6月までに人口の80%に予防接種をすることを望んでいます。
国は現在、高い死亡率を伴う新たな艦船の波に直面しているため、このキャンペーンはますます緊急になっています。
症例数に影響を与える冬が近づいています。
国によって異なるワクチンの効果
チリがワクチン接種で世界をリードしているとは意外ですね。
6月までに人口の8割が接種を終わるというのは驚くべきスピードです。
しかし、チリは今のところ感染の拡大を封じ込めたといえる状況ではありません。
累計の死者数も2万人を超えており、これから冬を迎える同国は峠を越えたとは言えない様です。
ワクチンの接種数が必ずしもコロナ感染の鎮静化に繋がらないのはフランスやドイツで見られる現象です。
専門家ではないので自信はありませんが、ワクチンの効き具合は、ワクチンを打つ前に集団免疫がどの程度できているかに左右されるのではと推測しています。
ワクチン接種後、見る見るうちに新規感染者数が低下して行った英国では、コロナ感染が始まった当初、意図的に集団免疫を作ろうと店やレストランを開放しました。
この施策は爆発的な感染拡大を呼び、ジョンソン首相は後に失策を認めざるを得ませんでした。
しかし、この期間国民の間にかなり感染が広がり、集団免疫がある程度出来ていたのかもしれません。
米国も同様の理由でワクチンが効果を発揮しているのではないでしょうか。
もしそうだとすると、集団免疫がほどんど出来ていない日本や中国はワクチンがほぼ全員に接種されなければ、効果が出てこない事になります。
ああー何時になることやら。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。