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コロナに悩む英国ージョンソン首相の苦悩

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英国首相上級顧問のロックダウン破り

日本のマスコミではほとんど取り上げられていませんが、ジョンソン英国首相の上級顧問であるカミングス氏が、国民に課されたロックダウンを破った話が、英国メディアではトップニュースとして扱われています。

英国は既に4万人に近い米国に次ぐ死者を出してしまっています。これは欧州で最大の数字です。

ジョンソン首相自身、感染し、集中治療室に入った事はご存知の通りですが、今も毎日2千人以上の新規感染者が発生しており、感染に歯止めがかかりません。

英国は、3月23日ロックダウンを開始し、都市間の移動を厳しく制限した訳ですが、カミングス氏はそんな中でロックダウン破りを敢行し、400キロ離れた両親の家を訪れました。彼の行動を振り返ってみましょう。

  • 3月27日、妻の体調が悪くなったため、この日の夜、妻と息子を連れて、ロンドンから400キロ離れたダラムまで、自ら自動車を運転し、両親の所有する農場のコテージに滞在
  • 3月28日、カミングス氏自身もコロナの症状を発症
  • 4月13日、家族を連れてロンドンに戻る

この行動を新聞社デイリーミラーにすっぱ抜かれた訳ですが、これに対してロックダウンの下、不便な生活を強いられていた国民の怒りが爆発し、野党はもちろん、与党の一部議員もカミングス氏の辞任を要求する事態に発展しました。

カミングス氏自身は「妻も自分も発症すれば、4歳の息子の面倒を見てくれる人がいなくなるので、両親に預けに行った。」と語っており、これはこれで情状酌量の余地もあると思いますが、それより国民はジョンソン首相のコロナ対策の不手際に不満があるのでしょう。辞任辞任の大合唱になってしまっているようです。

ジョンソン首相は辞任には及ばぬとして擁護していますが、批判の矛先は政府そのものに向いてきており、世論調査では内閣への支持率が急速に低下しています。

カミングス上級顧問って誰?

そもそもこのカミングス氏というのはどんな人物でしょう。彼の経歴を調べていくと、そこには異能の人物像が浮かび上がってきました。

彼はオックスフォード大学で近代史を学び、最優等の成績で卒業していますが、担当教授が彼の事を「才気煥発。常識にとらわれず、機能していないものは迷わずとっかえようとするロベスピエール(ルイ16世を死刑に処した急進的政治家)の様な性格」と称しています。

彼はその後、有力政治家のアドバイザーに収まりましたが、彼は当初から欧州懐疑派であり、英国のユーロ導入の反対キャンペーン(Business for Sterligs)でも重要な役割を果たしました。

しかし、最も有名な業績は、なんと言ってもブレグジット国民投票の際の作戦参謀としての役割でしょう。

Take Back Control(コントロールを取り戻そう)」というスローガンは彼が考案したものですし、データ分析やSNS上の広告に多くの予算を配分し、離脱派を勝利に導きました。

あの時、離脱派が勝つと予測した人は殆どいませんでしたから、このカミングス氏と言う人は天才的な作戦参謀と言えそうです。

英国は現在、ブレグジット後の戦略を立てる必要がありますが、彼はその中心的役割を期待されているようです。

彼はこの目的を達成するために、今年一月、自身のブログで、数学、物理、データサイエンス、コンピューターサイエンスの専門家を募集しています。変わり者でも良いので、卓越した頭脳が改革に必要だと彼は語っています。

要するに、既存の官僚が英国の将来戦略は立てることは不可能だと見切りをつけているのです。

ジョンソン首相の判断

彼は現在最もジョンソン首相に影響力があると言われています。首相も彼の手腕に期待していると言う事でしょう。

ジョンソン首相は今回の事件で、支持率の低下とカミングス氏の進退を天秤にかける必要があるでしょうが、彼はカミングスを続投させる事で腹を括っていると思います。

というのは、ブレグジット以後の国家戦略は今後の英国の運命を大きく左右すると思われます。まかり間違えば、英国はその地位を大きく失い、欧州の弱小国に仲間入りするかもしれない。

その様な状況下、ロックダウンを破った程度の事で英国のグランドデザインを描ける貴重な人材を失いたくないと言うのがジョンソン首相の本音だと思います。

 

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