首相に最短距離のショルツ氏
ドイツの総選挙の結果はご存知の通り、メルケル首相が所属するキリスト教民主同盟(中道右派)が大きく議席を減らし、代わってオラフ ショルツ氏が率いる社会民主党(中道左派)が第一党に躍り出ました。
両党の議席の差は僅かですので、今後社会民主党は他党との連立政権を模索する必要がありますが、同党のショルツ党首がメルケル首相の後釜に座る可能性が高いと言われています。
ショルツ氏はどの様な政策を展開するのでしょうか。
欧州の最強国として君臨するドイツの政策は世界に大きな影響を与えます。
ショルツ氏の人となりについて英誌Economistが「Who is Olaf Scholz, and what kind of Germany would he lead?」(オラフショルツはどんな人か?ドイツをどの様にリードしていく積もりか)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
ドイツ人が首相に直接投票した場合、オラフ ショルツは、9月26日の連邦選挙でメルケル首相の後継者として選ばれたでしょう。
中道左派社会民主党(SPD)の代表であるショルツ氏は、メルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)のアルミン ラシェット党首より遥かに人気があります。
そのショルツ氏の人気が、SPDを全国選挙での勝利をもたらしました。
ただし、SPDの25.7%に対してCDU / CSUの24.1%と差は僅かです。
しかし、ショルツ氏がメルケル夫人の後継者になるには最も有利な立場にあります。
オラフ・ショルツはどのようにドイツをリードしようとしているのでしょうか?
ショルツ氏はSPDの首相候補者であるだけでなく、現在ドイツの財務大臣兼副首相でもあります。
彼は2018年以来、メルケル首相の保守派と連立政権「大連立」を築き、職務を担っています。
パンデミックが発生したとき、ショルツ氏は財布のひもを緩め、過去数年間のドイツの財政の正しさが大災害に対する鯛を鵜を可能にしたと主張しました。
ドイツは1,300億ユーロ(25兆円)相当の国内刺激策を開始し、ショルツ氏の財務省はEUの7,500億ユーロ(96兆円)の復興計画を推進しました。
しかし、彼の大盤振る舞いには限界があります。
彼はドイツが2023年に赤字支出を制限する憲法上の「債務ブレーキ」再び踏む事を望み、イタリアとフランスが望むようなEUの財政規則緩和には反対しています。
ショルツ氏はドイツで最も経験豊富な政治家の一人です。
2000年代初頭、SPDの最後の首相であるゲアハルト シュレーダーの信頼できる部下であったショルツ氏は、内閣(労働大臣)および地域(ハンブルク市長、彼の故郷)レベルで責任を引き受けました。
彼の個人的な特徴は、彼の生まれたハンブルクに典型的なものです:実用的で、平易な話し方とプロテスタント(ハンブルグ市長としての彼のお別れパーティーでアルコールは提供されませんでした)。
党の勝利をまだ彼を首相に押し上げるには不十分です。
しかし、連立パートナーである緑の党とリベラルな自由民主党(FDP)との話し合いが始まりました。
彼は、クリスマスまでに三党をまとめる「信号連立」を結成したいと述べました。
ショルツ氏はドイツに何を望んでいますか?
彼は家賃の上昇を阻止するためにもっと多くの家を建てることを約束しており、この点では、ハンブルク市長時代の住宅に関する実績を示すことができます。
彼はまた、雇用を危険にさらすことなく気候変動に対するより迅速な行動を約束し、ドイツをグリーンエネルギー技術の主要な輸出国に変えることを約束しています。
当面の優先事項は、時給の最低賃金を9.60ユーロから12ユーロに引き上げることです。
これらは根本的な約束ではありませんが、ショルツ氏の党の左翼を満足させるのに十分でしょう。
慎重さと能力、これらの彼の特徴は、彼を首相官邸に連れて行くでしょう。
最低賃金引き上げの意味
ショルツ氏はやはり堅実なドイツ人の様ですね。
しかし倹約家の筈の彼がまず最初に行う政策として最低賃金の大幅アップが挙げられています。
これは低所得者層への配慮も当然ありますが、生産性向上に非常に有効な措置と思われますので、日本政府も是非検討して頂きたいと思います。
日本の実質賃金はここ20年ほどほとんど上昇していません。
日本の現在の最低賃金は驚くなかれ全国加重平均で902円(2020年)です。
ショルツ首相は1540円にしようとしているのですから、差は歴然です。
最低賃金が安いと、企業の経営者は生産性の向上に努力せず、機械ができる様な仕事に人間を使ってしまいます。
日本は今後どんどん労働者人口が減っていきます。
如何に生産性を高めるかが日本の将来を決定づける鍵になります。
経営者は目先のことしか考えませんので反対すると思いますが、岸田新政権には是非最低賃金を上げて欲しいと思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。