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ドイツは信頼すべき同盟国ではないとの米紙報道

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米独間の不協和音

ウクライナ紛争は今やどこの国でもトップニュースの一つとして取り上げられていますが、米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)に衝撃的なタイトルの記事を見つけました。

そのタイトルは「Is Germany a Reliable American Ally? Nein」(ドイツは米国の信頼すべき同盟国ではない)というものです。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

プーチン大統領のウクライナ侵攻が迫る中、米国の同盟国のほとんどはウクライナ政府を支援しています。

しかしドイツはロシアの利益を西側の利益よりも優先するという異なった対応を行っています。

ドイツ政府の対応は深刻な現実を明らかにしています。

アメリカと第二次世界大戦後の民主的な国際秩序の最も重大な安全保障上の脅威である中国とロシアに直面する中、ドイツはもはや信頼できる同盟国ではありません。

ドイツにとって、安価なガソリン、中国への自動車輸出、そしてプーチン氏を怒らせない事は、同盟国との民主的連帯よりも重要であるように思われます。

ウクライナの運命は、ドイツに大きな責任を負わせるでしょう。

 

ドイツはウクライナに武器を供給することを拒否しており、エストニアがドイツ製武器をウクライナに供給する事を積極的に妨げています。

最近、英国はウクライナに対戦車兵器を空輸しましたが、ドイツの領空を迂回しました。

英国国防省はドイツに領空内の飛行許可を求めていないことを発表しましたが、許可を求めなかった事が重要なポイントです。

英国が許可を要請した場合、ドイツが許可または拒否する選択を余儀なくされるため、英国はあえて要求しませんでした。

 

ロシアからヨーロッパにガスを送るノルドストリーム2パイプラインへのドイツの対応もドイツの姿勢を明確に表しています。

ドイツの規制当局は、パイプラインは企業の法令遵守基準の確認がなされるまで運転を開始できないと述べています。

それは、プーチン氏をいらだたせています。

これに対して、プーチン氏の息のかかったガス会社であるガスプロムは、既存のヨーロッパ向けパイプラインのガスの流れを4週間以上止めました

ロシアはまた、ウクライナへの一般炭の供給を3か月以上遮断しています。

プーチン氏のメッセージは明確です。

ウクライナはロシア支持に寝返るのが賢明だ、ドイツはノルドストリーム2を承認しろという事です。

 

これが米共和党と今月まで民主党がノルドストリーム2に対する制裁を支持していた理由です。

彼らは、プーチン氏がパイプラインを使用して、ヨーロッパの寒い冬を暖める見返りに、言う事を聞かせようとする事を知っていました。

しかし、バイデン政権と上院民主党に対するドイツの圧力のために、ノルドストリーム2は息を吹き返しました。

先週民主党は、パイプラインに制裁を課すというテッド・クルーズ上院議員(共和党)の法案を拒否し、ドイツは米国を犠牲にして勝利を収めました。

相互主義の同盟原則を考えると、バイデン大統領が見返りに何を受け取ったかは明らかではありません。

 

ドイツはまた、国内総生産の2%というNATOの防衛支出目標を放棄し、GDPの1.5%しか支出しておらず、国内でロシアの化学兵器に関する研究を行わせる事を容認しています。

このような研究は、ロシアの野党党首アレクセイ・ナワルニーと元英国のエージェントを標的とした暗殺キャンペーンを支援しています。

ショルツ氏はまた、核兵器禁止条約でオブザーバーの地位を追求し、NATOの核抑止を漠然としか支援していません。

こうした譲歩はプーチン氏によって長い間求められてきました。

 

中国に対するドイツのスタンスにも問題があります。

バイデン大統領は、就任直前に、当時のメルケル首相に欧州連合と中国の貿易協定を延期するよう要請しました。

彼女は、逆に交渉を加速させ、バイデン 氏が就任する前に合意に達することで対応しました。

中国共産党はメルケル氏を高く評価し、彼女のためにデジタルタペストリーをデザインしました。

ショルツ氏も同様の栄誉を得ようと決意しているようです。

 

ショルツ氏は、ドイツの中国への年間1,500億ドル(約17兆円)の輸出をあらゆる犠牲を払って維持する意向を固めているようです。

これは最近、台湾に駐在員事務所を開設させることで中国の制裁に苦しんでいるリトアニアに対する姿勢で明らかにされました。

ドイツの企業は、民主的な隣国を支援する代わりに、リトアニアが中国の要求をのまなければ、ドイツのリトアニアへの投資が停止されると警告しました。

民主的な連帯の欠如は、ドイツ首相官邸から生じています。

 

バイデン氏は、ドイツはアメリカの最も重要な同盟国の1つであると主張しています。

2つの主要な敵に対するドイツの対応を考えると、バイデン氏の主張に説得力を見出すのは困難です。

ウクライナ紛争で得する人たち

この記事は米国のニュースサイト「Washington Examiner」のライターであるトム ローガン氏によるものです。

同氏はドイツが信頼すべき同盟国ではないと批判していますが、これはいささか極端な意見ではないかと思います。

地政学的に言えば、ドイツはロシアと近く、経済的にも深い関係を有しています。

第二次世界大戦でこの両国は戦い、旧ソ連は2,700万人もの犠牲者を出しておきながら、現在ロシアの市場はドイツ製品で溢れています。

私も以前ロシア市場を担当していましたが、旧ソ連時代からドイツ企業はいち早くロシア市場を開拓し、圧倒的な市場占有率を誇っていました。

エネルギー面で言えば、ドイツはロシアの安価なガスなしでは、自国産のガスや石油を使用できる米国企業に太刀打ちできません。

ドイツはビジネスの事しか考えていない、もっと自由や人権の事も配慮しろという批判があるのは理解できますが、自国に巨大市場とエネルギー源があり、自立できる米国と我々は違うとドイツ人は考えるでしょう。

 

上記の様な米国による同盟国批判はドイツだけでなく、我が国を含む他国にも矛先が向く可能性がありますので注意が必要です。

うがった見方をすれば、自国に豊富なエネルギー源を持つ米国は、ロシアからのエネルギー供給を妨害することによって、経済面ではライバルであるドイツ企業の競争力を削ごうと考えている事もできます。

今回のウクライナ騒動もひょっとすると米国はロシアと裏で手を握っているかも知れません。

というのも気がつかないうちに石油の値段が急上昇しているからです。

石油の最大生産国である米国と第二位のロシアは油価の上昇にほくそ笑んでいる筈です。

表向きはプーチン氏もバイデン 氏も拳を振り上げていますが、狙いは別のところにあるかも知れません。

国際紛争では陰で利益を得る人が必ずいます。

今回は石油関連業者とウクライナへの武器供給業者かも知れません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。