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石油増産に応じないサウジの思惑

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米国の要請に応じないサウジ

ロシアのウクライナ侵攻が引き起こした影響として、エネルギー価格の高騰そしてロシアへのエネルギー依存度を低下させようとの動きが挙げられます。

しかしいずれもそれほど簡単な仕事ではなさそうです。

というのもロシア以外のエネルギー大国であるサウジアラビアもロシア同様一筋縄では行かない国だからです。

この問題について米誌Foreign Policyが「Mohammed bin Salman Has Leverage on Biden—and Is Using It - Saudi Arabia’s cooperation on lowering oil prices will come at the cost of the West’s values.」(バイデンに対して切り札を持つサウジはそれを行使している - 石油価格の引き下げに関するサウジの協力は、西側の価値を犠牲にしてもたらされる)と題した論文が掲載されました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

ウクライナ侵攻後にロシアに課せられた制裁は、世界のエネルギー市場に大混乱をもたらしました。

西側各国は、石油が1バレルあたり140ドル近くまで上昇したときに、石油の価格を抑える方法と、ロシアの供給を引き離す方法についてパニックに陥りました。

ロシアの石油購入禁止を発表した米英は、彼らの古くからの同盟国に油田の蛇口を開けて世界の石油価格を下げるよう説得しました。

しかし、石油の最大の生産国の2つであるサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)はこれに応えず、これをチャンスと捉えました。

 

サウジアラビアは、UAE以上に、油井の鍵を握っており、増産する前に、米国からの大きな譲歩を期待しています。

人権活動家たちは、エネルギー安全保障の為に人権が再び犠牲になることを恐れています。

米国も英国も、3月中旬にサウジアラビアが81人を死刑に処したことを公に批判しませんでした。

サウジアラビアとUAEは1日300万バレル以上の予備能力を持っており、その一部を解放すれば石油価格を下げる可能性があります。

彼らの支援の保証は、ヨーロッパ諸国の懸念を和らげ、ロシアへの依存を減らすのに大いに役立つ可能性があります。

 

しかし、2つの湾岸諸国は、ロシアを含む石油カルテルであるOPEC+1へのコミットメントを理由に欧米の要求を拒んでいます。

彼らの論理的根拠は、ウクライナでの戦争はこれまでのところ石油供給の大規模な混乱をもたらしていないということです。

しかし専門家は、それが世界政治の大きな変化を反映した政治的決定であると信じています。

価格を維持するという選択は、ロシアにも利益をもたらし、湾岸の独裁政権がもはや米国の側に立つ必要性を感じなくなり、志を同じくする権威主義者との新しい同盟を受け入れていることを示しています。

 

バイデン氏はまだ大統領選挙の候補者の時に、サウジアラビアをならず者と表現し、在任中、ワシントンポストのジャーナリストであったジャマル カショギの暗殺に王子が関与したとする報告書を公表しました。

さらに、サウジアラビアとUAEは、イランの核取引再開に関する懸念が無視された際に強い不満を抱きました。

サウジの統治者は、カショギ氏の殺害を命じたという非難に関して彼を終始支持したプーチンのより緊密なパートナーとして見られることをまったく意に介していません。

 

サウジアラビアの権威主義者への接近は、2015年に当時のオバマ大統領との関係が冷え込んだ時に始まりました。

1年後、ロシアはOPECに含まれました。

リヤドとモスクワの関係はその後強化され、米国との関係は弱まりましたが、イランとの核合意から撤退したトランプ大統領在任中に改善しました。

しかしバイデンがイラン合意の復活交渉を再開したため、再び急落しました。

トランプ政権の間、ビン・サルマンは改革者として描かれましたが、バイデンの下で、彼は民間人を殺したイエメンでのサウジアラビアの軍事行動と王国内の人権侵害のために広く非難される様になりました。

専門家であるトリタ・パルシ氏は、「サウジの皇太子はプーチンに賭けている。彼は信じているだけでなく、共和党が中間選挙に勝ち、バイデンをレームダックに変えることを望んでいます。 2025年までに、バイデンと民主党が権力を失い、プーチンがロシアの大統領であり続けると皇太子は信じているようです。」

 

現在世界最大の石油生産国であるサウジアラムコは、2021年に記録的な利益を報告し、前年の490億ドルから124%の純利益が1,100億ドルに増加しました。

同社は短期的には供給を増やす必要は感じていません。

国際エネルギー機関は、今年末までに、ロシアから1日あたり少なくとも150万バレルの石油が失われる可能性があると述べています。

それは間違いなくさらなる価格上昇につながるでしょう。

 

厳しい国益の世界で最も犠牲にされやすいのは、個人の自由です。

世界的な石油の安定と価格の引き下げの為に個人の人権は犠牲になるかもしれません。

しかしサウジの皇太子は、バイデンからもっと譲歩を引き出せると考えている様です。

ダブルスタンダードのツケ

現在バイデン大統領は自由や民主主義と言った西側が大事にする価値のために戦おうと同盟国に呼びかけています。

それは正しい主張だと思いますが、一方で、サウジを代表とする資源国が人権を侵害したり、他国を侵害したりする事に、これまで目を瞑ってきたのも事実です。

このダブルスタンダードのツケを今米国は払わされているのだと思います。

このあたりで米国もダブルスタンダードをやめる時期に来ているのではないかと思います。

しかし、ウクライナ紛争で漁夫の利を得ているのは米国も同じですから、彼ら自身も油価の上昇を内心ほくそ笑んで見ているかもしれません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。