金融的核兵器使用の決定
本日、驚くべきニュースが飛び込んできました。
欧米が急遽ロシア大手銀行に対してSWIFT接続を停止する事を決めた様です。
この処置は英国のジョンソン首相などが強く主張していたものですが、あまりに強硬すぎるという事で、米国もEUも採用を見送っていたものです。
このタイミングでどうして急遽採用されたのか、その理由は何かについて仏紙Les Echosが「Ukraine : l'UE et ses alliés dégainent l'arme Swift contre la Russie」(ウクライナ:ロシアに対してSWIFTを禁じた欧州とその同盟国と題する記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
すべてが非常に速く進んでいます。
欧州外交の責任者であるジョセップ・ボレルは、日曜日の夜、ウクライナへの侵略に対する報復として、ロシアに対する第三の制裁措置を検証する新しいEU外相理事会を招集しました。
今回、EU27カ国は、米国、英国、カナダと協力して、SWIFTシステムからロシアの大手銀行を排除したいと考えています。
この措置をとることに最後まで消極的だったドイツは、国際的な圧力に屈服することになりました。
輸出入のブロック
EU委員会は、土曜日の夕方、ロシアの金融機関をSWIFTから除外することを提案する予定です。
これはブルーノ・ル・メール仏蔵相が「金融的核兵器」と表現した非常に重い制裁です。
ウルズラ・フォン・デア・ライエンEU委員長は、「この措置により、ロシアの銀行は世界的な金融取引のほとんどを実行できなくなり、その結果、ロシアの輸出入が阻止されます。」と述べました。
この措置は何週間もの間ヨーロッパで議論されてきました。
.しかしいくつかの加盟国は先週の金曜日までそれに反対しました。
私たちの情報によると、金曜日のパリでの非公式の会議では、ドイツとイタリアがそれに反対していました。
国際的な圧力
その後の数時間で、イタリア大統領は考えを変え、ドイツ首相への圧力が高まりました。
土曜日に、ポーランドのモラヴィエツキ首相は、「ドイツの利己主義」と非難しました。
ロシアのGDPは7%削減
フォン・デア・ライエンEU議長は、「EU、米国、英国、カナダの連合は、ロシアの中央銀行の資産を凍結させ、ロシアが戦争に必要な資産を使用することを防ぐだろう。」とのべました。
西側の専門家は、提案されたSwift対策がロシアのGDPを7%削減できると見積もっています。
ウクライナへの武器提供
ドイツ政府はもう一つのタブーを破りました。
ドイツはウクライナに武器を届けることに同意しました。
これは、第二次世界大戦以降致命的な武器を外国に提供しないという国の基本方針の転換です。
具体的には、ドイツはウクライナへの対戦車ロケットランチャー1,400基、地対空ミサイル500基、榴弾砲9基の納入を承認しました。
「ロシアのウクライナに対する侵略は戦後から確立された秩序を脅かしている」と、ショルツ毒首相はプレスリリースで語りました。
金曜日以来、ドイツではベルリンからミュンヘンを経由してドレスデンまで、すべての主要都市で一斉にデモが行われました。
金曜日の夜、何百人ものベルリン市民が、ブランデンブルク門の前にあるフランス大使館とアメリカ大使館のあるパリーザープラッツで、マレーネディートリヒの不滅の歌である「花はどこへ行った」を歌いました。
金融的核兵器は効果があるか
SWIFTから排除されるとどうなるのでしょう。
ドルやユーロでの取引が事実上できなくなりますので、ロシアは輸出も輸入も大変苦労する事になります。
最近ではイランに対する制裁で同様の処置が取られましたが、イランは外貨獲得源である原油の取引に大変苦労しています。
他の通貨で取引すれば良いのではと考える方もおられると思いますが、原油の値段はドルで決まっていますし、これを他の通貨でやろうとすると為替差損が発生する事になります。
イランに対する制裁の場合、更に進んで、イランと取引をしている企業は米国で制裁対象になる事になっていますので、これは更に厳しい処置です。
米国で大きなビジネスを行っている日本企業などは、米国市場で制裁を喰らうと大きな損失を生じますので、イランとのビジネスを大幅に縮小せざるを得ませんでした。
ロシアに対しては、いまの処、ここまでの制裁には至ってませんが、今後のウクライナの状況次第では、そこまで制裁がエスカレートする可能性があります。
ロシアがこの西側の「金融的核兵器」を上手くかわす方法はほとんどありませんが、中国がロシアを支援すれば、そのダメージを軽減する事ができます。
実際、イランと中国は関係を深めていますが、同じ様にロシアに経済支援の手を差し伸べる可能性があります。
中国政府は現在のところ、ウクライナ危機に対して姿勢を明確にしていませんが、その判断が注目されます。
ひょっとすると中国はデジタル元を使ってロシアと取引を行う事をロシアに提案するかもしれません。
これはSWIFTの枠外の取引になりますので、西側の制裁に関わりなく取引が可能です。
世界の基軸通貨ドルに中国が元経済圏で対抗する可能性はあります。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。