プーチン大統領決断の条件
ロシアによるウクライナ侵攻は世界に大きな衝撃を与えましたが、このタイミングでプーチン大統領がウクライナ侵攻を決心したのは、ウクライナが未だNATOに加盟しておらず、核兵器も保有してなかったからだと思います。
この二つの条件の一つでも欠けていたら、さすがのプーチン氏もそう簡単に侵攻を決断できなかったと思います。
実はウクライナには1994年まで旧ソ連製の核兵器が配備されていました。
同年のブタペスト覚書で核兵器は徹去されましたが、この時徹去されていなければ今回の侵攻はなかったかも知れません。
この史実から教訓を得るべきだと2019-21の間、国家安全保障問題の大統領副補佐官を勤めたJohn Ullyot氏がウォール・ストリートジャーナル(WSJ)に「The Lesson of Budapest? Hold On to Your Nuclear Weapons」(ブタペスト覚書の教訓;核兵器を手放すとどうなるか)という記事を寄稿しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
WSJ記事要約
ロシアの侵略によって、1994年のブダペスト覚書に注目が集まっています。
その合意の下で、ウクライナは核兵器を放棄しました。
この譲歩と引き換えに、ロシアと西側はウクライナの主権と領土保全を尊重することを約束しました。
その後、2014年に、ロシアはウクライナの領土であるクリミアを併合しました。
当然のことながら、ウクライナ人は、20年前に核抑止力を放棄することによって攻撃を受けやすくなったのかとの疑念を抱きました。
今日、ロシアはウクライナ全体を征服することを目指しているため、再びウクライナ人は同じ疑念を抱いています。
ロシアの行動を注視している悪意のある国を含む多くの国が、自分の核兵器を求める事は避けられないでしょう。
プーチン大統領は、核兵器が侵略者の攻撃許可証になる事、そしてそれらがなければ平和な国が侵略者の餌食になる事を示しています。
これまで、核不拡散についての楽観論には根拠がありました。
南アフリカは独自の原子爆弾を開発し、少量の弾頭を持っていましたが、アパルトヘイトの廃止に動く過程で、自主的に処分しました。
1960年代から1980年代にかけてのブラジルとアルゼンチンは、独自の核兵器を製造するため開発競争を行っていましたが、最終的には両方とも開発を中止することに同意しました。
リビアは、大量破壊兵器を入手するための努力を2000年代初頭に終了しました。
これらは、核兵器を開発する安全上のリスクが利益をはるかに上回っていたことが明らかになったからでした。
シリアとイラクの核兵器計画は、強制的な介入によって終了しました。
核兵器の開発や保有を検討している可能性のある国々に、核兵器を持たない方が安全であることを理解させる事は、核兵器の拡散を防ぐために極めて重要な事でした。
1945年以来、今日のウクライナに対するロシアのような攻撃、つまり、国家主権の完全な根絶を目的とした攻撃に直面したのは2か国だけでした。
クウェートは1991年のイラクに対する迅速なアメリカ主導の国際行動によって救われました。
イスラエルは何度も絶滅から身を守ってきました。
現在、ウクライナは存亡を賭けた戦いを戦っています。
プーチン氏は、ウクライナは国家ではないと繰り返し主張しており、ウクライナをロシアの付属物として扱うであろう降伏条件を要求しています。
彼の軍隊はが期待した様な迅速かつ容易な勝利を達成できなかったため、核のエスカレーションをほのめかしています。
結末がどうであれ、ロシアのウクライナ侵攻は、核保有の野心を実現していないすべての国に強力な警告を送ります。
核計画を放棄し、安全保障を形式的な保証と通常兵器による抑止力に委ねるなら、あなたは自国の将来を危険な賭けに晒すという事です。
核兵器をあきらめるならば、国家安全保障の切り札を失う事を意味します。
米国とその同盟国は、この新しい安全保障上の課題を正しく解決するという大きな責任を負っています。
それほど前ではない第二次世界大戦
第二次世界大戦以降77年間も我が国は戦争に関与していません。
過去の歴史を振り返るとこれだけ長く平和な時代が続いた事は、鎖国していた江戸時代を除いてないのではないでしょうか。
しかし、今後長く平和が続くかどうかはわかりません。
筆者の父も出兵していますので、戦争はそれほど前の出来事ではないのです。
第二次世界大戦以降長く世界大戦が起きなかったのは核の抑止力が働いたからと言えると思いますが、今回のウクライナ侵攻は核を持たない国は簡単に侵略され、侵略を行なった国は核を保有しているので西側諸国は怖くて戦いを挑めないという現実を示しています。
これを見た多くの国々はこれまでの方針を変えるかも知れません。
我が国の近くにも北朝鮮という予測不能の存在があります。
我が国はこの様な国の野心をどう抑えるか真剣に考える必要があると思われます。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。