エネルギーメジャーの相次ぐ撤退
ロシアに対する経済制裁は日々厳しさを増しています。
経済制裁に関するニュースの中で、おやっと思ったのは、ロシアのサハリンで行われているエネルギープロジェクトからエクソンやシェルと行った欧米のメジャーが相次いで撤退を表明した事でした。
これらのプロジェクトは日本政府の支援を受けて、日本の民間企業も資本参加して始めたものです。
彼らも欧米企業と共に撤退するのでしょうか。
この点について米紙ウォール・ストリートジャーナル(WSJ)が「Japan Sticks to Russian Oil and Gas, Bucking Western Pullouts’(欧米企業が撤退を決めたロシアエネルギープロジェクトに固執する日本)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
WSJ記事要約
石油とガス購入のためにロシアへの数十億ドルの流れを遮断することは、日本がロシアを懲らしめる観点から言えば最も効果的な手段でしょう。
しかし、日本の当局者は、それが消費者価格を押し上げ、中東への依存を高める可能性があると述べています。
これまでのところ、日本はいくつかのロシアの銀行とプーチン大統領に制裁を課し、ウクライナに一億ドルの援助を提供しています。
岸田文雄首相は木曜日、ロシアのウクライナ侵攻を「絶対に受け入れられない」と明確に主張しました。
一方、日本がロシア政府主導の石油・ガスプロジェクトへの投資をシェルが行なった様に撤回するかどうか尋ねられたときに彼のトーンは弱まりました。
「エネルギーの安定供給」は「国益の一部であり、可能な限り保護しなければならない」と彼は述べました。
彼は、「日本は他国がどうするか見定めるため、しばらく様子を見るだろう」と語りました。
日本の躊躇は、ロシアとの関係をどこまで断ち切るかについての世界各国で始まっている再考の一例です。
米国でさえ、ロシアに厳しい制裁を課していますが、ロスネフチやガスプロムのようなロシア政府が管理するエネルギー会社との取引を許可しています。
日露エネルギー協力の目玉は、ロシアのサハリン島での二つの天然資源開発プロジェクトです。サハリン-1は石油を生産します。
株主には、30%の株式を保有する日本政府主導のコンソーシアムが含まれます。
日本の経済産業省は、サハリン-1が1日あたり22万バレルの石油を生産したと述べた。
一方、サハリン2は天然ガスを生産し、液化して海外の顧客に出荷しています。
日本はこのプロジェクトが生産するガスの約60%を購入しています。
このプロジェクトはガスプロムが主導しており、三井物産が12.5%、三菱商事が10%を株を所有しています。
2021年、日本は天然ガスの9%、石油の4%近くをロシアから入手しました。これは主にサハリンからの輸入によるものです。
ロシア事業の構築に数十年を費やした後、日本政府と民間の投資家は、欧米企業がサハリンのプロジェクトから撤退したため、衝撃を受けました。
撤退を決めた欧米企業は、プーチン氏のロシアとの取引はもはや不可能であると述べました。
サハリン-1の運営者であるExxonMobil Corp.は火曜日、生産を停止する準備をしており、ロシアへの新規投資を終了すると述べました。
サハリン2の投資家であるシェルも、プロジェクトから撤退すると述べました。
三井と三菱を含む日本の関係者は、現在事実関係を確認中と回答しました。
撤退することが選択肢であると具体的に言った人はいませんでした。
現在、一部の日本のビジネスリーダーは、日本企業がロシアへの投資案件を簡単には放棄できないと述べています。
日本商工会議所の三村明夫会長は、「日本企業がすぐに欧米企業に右にならえする必要があるとは思わない」と述べました。
萩生田経産相は金曜日、サハリン-1を「我が国の安定したエネルギー供給のための重要なプロジェクト」と定義しました。
これは、ロシアが、石油の約90%を供給している中東以外の数少ない供給業者の1つだからです。
ロシアのエネルギープロジェクトの主要な貸し手である国際協力銀行の前田匡史総裁は、ロシアの侵略を踏まえ、「このまま同じ様に事業を進めることはできないでしょう。」と語りました。
ただ何を変更する必要があるか彼は明確にしませんでした。
アナリストは、日本のロシアのエネルギーへの依存度は、ドイツなどの一部のヨーロッパ諸国ほど大きくはないが、撤退は依然として苦痛をもたらす可能性があると述べています。
ムーディーズのアナリストは、「日本は、ロシアからの供給減少分をオーストラリアによって補填する可能性が高い。天然資源価格の値上がりは、インフレを引き起こすでしょう。その結果、成長が遅くなります。」と語りました。
オイルメジャーの戦略には要注意
ロシアのウクライナ侵攻は間違った行為であり、ロシアは批判されるべきであり、その対価を払ってもらう必要があると思います。
しかし、古今東西、戦争の危険を避けるためには経済関係を維持することが重要です。
相手憎しとばかり経済制裁をとことんまでエスカレートさせれば、窮鼠猫を噛むとばかり戦争拡大の引き金を引くことになりかねません。
日米戦争の原因を作ったのは日本側かも知れませんが、最終的に日本に開戦の決定を下させたのは、米国の日本に対する厳しい経済制裁でした。
ロシアと一定の経済関係を維持する事は、交渉の際のテコにもなりえます。
一方、エネルギー安全保障は我が国にとって一丁目一番地の重要課題です。
欧米のオイルメジャーは日本からロシアという選択肢を消して、高い自分のエネルギーを買わせようとしているのかも知れませんが、我々はその手には簡単に乗らない方が良いでしょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。