MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

漁夫の利を得るインド

f:id:MIYOSHIN:20220401192112j:plain

中立ポジションをとるインド

今回のウクライナへのロシア侵攻から漁夫の利を得るのは誰でしょうか。

それはインドであるとする論文が米誌Foreign Policyに掲載されました。

「For India, Putin’s War Starts to Look Like a Gift」(インドにとって贈り物の様に見え始めたプーチンの戦争)と題された論文をかいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

ロシアがウクライナとの本格的な戦争を開始したとき、インドは最初、居心地の悪いコーナーに追い詰められている様に見えました。

インドは、その主要な敵である中国に対する保険政策として近年西側に近づいたため、ウクライナ紛争において米国とその同盟国と連携することが期待されていました。

しかし、インドはロシアを非難することに消極的であり、その軍事装備の大部分をロシアに依存し続けています。

西側諸国がパキスタンと協力する一方、ロシアがインドを支援した1950年代以来、ロシアとインドには長い友好関係があります。

インドの西側諸国との関係は過去20年間で急速に拡大しましたが、ロシアへの共感は続いています。

それでも、インドがロシアの侵略を非難する国連での決議を棄権したことは少なからず驚きです。

 

しかし、戦争は実際にはインドへの贈り物かもしれません。

米国は批判を抑えています。

インドが中国に対抗する上で、パートナーとして必要であると認識しています。

中国と同じように、資源に制約のあるインドは危機をうまく利用して安価なロシアの石油を手に入れました。

欧米の顧客がロシアからの調達を避けているため、市場価格を大幅に割り引いて購入しています。

 

一方、中国とロシアは、ロシアの侵略を非難するために西側に加わることを躊躇したインドを自分達の陣営に誘おうと動いています。

先週、中国の王毅外相が予告なしにニューデリーに到着しました。

今週の木曜日、ロシアのラブロフ外相もインドに到着する予定です。

しかし、中国とロシアがその様な動きを見せる中で、インドは米国とその同盟国への戦略的方向転換をあきらめることはないでしょう。

 

インドは、居心地の悪いコーナーに追い詰められたどころか、中間に位置する事で、双方から譲歩を引き出そうとしています。

必死に新しい買い手を探すロシアから、インドは割引された石油、肥料、および他の商品を手に入れています。

インドはヒマラヤにおける中印の軍事対立の緩和を中国から引き出すことを目指しています。

インドは、米国やその他の西側のパートナーとともに、防衛産業基盤を近代化し、ロシアの軍事物資への依存を減らすことを目指しています。

 

インドの国連投票に対して米国は当初不満を示し、バイデン 大統領はインドを「ふらついている」と形容しましたが、その後、政府高官はインドの立場についての理解を示しました。

米国当局は、ロシアからのインドの石油購入は現在の制裁に違反していないことを認めています。

インドのロシア兵器への継続的な依存については、ヌーランド国務次官は、これは冷戦中にインドに近代兵器を供給することを躊躇した米国のせいであると認めました

ニューデリーへの最近の訪問の間に、彼女は、米国が今より強力な防衛産業の協力を含む、償いをする準備ができていると語りました。

 

中国とロシアは、インドを新しい反西洋アジア連合に誘い込むことを望んでいます。

ロシアの軍事的失敗と前例のない西側の団結を前に、中国とロシアは接近し、非西側世界に新しいパートナーを参加させようとしています。

必然的に、インドはそのリストのトップにあります。

王外相は中国が2022年にBRICSサミットを主催する事を強調し。中国は、BRICSと上海協力機構(インド、中国、ロシアが定期的に会合するもう1つの非西側多国間フォーラム)を、容認できない西側の支配と見なしている世界秩序に対抗する方法として推進しています。

 

しかし、インドは、中国とそのジュニアパートナーであるロシアが主導する新しい同盟に簡単には参加しないでしょう。

インドの最も差し迫った懸念は、ヒマラヤでの中国との国境戦争を終わらせることです。

もし、中国がこの問題に関して譲歩し、インドが中国に対する考え方を見直したとしても、インドは米国とのより深い安全保障協力、特に日本とオーストラリアを含むパートナーシップであるクワッドを重視する考えに変わりはないでしょう。

ロシアの戦争によって生み出された新しい状況では、モディ政権はインドの防衛産業の近代化において米国およびその他の西側の投資を推進する機会を持っています。

 

インドの理想的なシナリオは、ロシアが欧米と平和を維持し、アジアから遠ざかるというものです。

しかし、プーチンのロシアは中国を受け入れ、ウクライナとの戦争で西洋の怒りを呼び起こし、アジアの安定を求めるインドの探求を複雑にしました。

それでも、インドはロシアとの関係を維持し、中国とのチャンネルを開いたままにしておくでしょうが、インドが中国やロシアにできる事をかなり制限する結果となるでしょう。

両陣営から取り合いになったインド

インドを訪問したのは中国やロシアの外相だけではありません。

最近、岸田首相も訪問しています。

それだけ西側と中露双方から重要な国とみなされているのでしょう。

インドは、ロシアから安く原油を購入しても、ロシアの対空防衛システムであるS400を買っても米国からお咎め無しという特別待遇を得ています。

 

今回のウクライナ戦争で漁夫の利を得たのはこのインドとトルコだと思います。

双方ともロシアとエネルギーや軍事面で緊密な関係を有していた事から、戦前は欧米との関係がギクシャクしていましたが、戦争が始まるや否や相手陣営に入られては絶対にまずい国なので、両国とも欧米、中露双方からラブコールを受けています。

モディ、エルドアンという強権的なリーダーに対する批判も聞かれなくなりました。

西側も一貫性がないと言えばないのですが、これが現実の国際政治なのかもしれません。

両国は現在の恵まれた国際環境を最大限利用しようとするでしょう。

朝鮮戦争の際には、日本が漁夫の利を得ましたが、現在はインドとトルコが同じ様な立場にあります。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。