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一ドル150円もありうるとの英誌報道

「有事の円」はいずこへ

最近の円安には驚かされます。

数日前からイスタンブールに滞在していますが、もはや通貨の暴落で知られたトルコを批判できる様な立場にありません。

景気を維持するために金利を上げられないという意味では日本はトルコと同じです。

ロシアがウクライナに侵攻してから二ヶ月の値動きを見れば、トルコリラの方が円より堅調です。

以前「有事の円」と言われた面影は全くありません。

この円の下落を欧米の金融筋はどの様に見ているのでしょうか。

英誌Economistが「Will an ever feebler currency save or sink Japan’s economy? - The yen’s steepest fall in two decades will be hard to arrest」(円の下落は日本経済を救うのかあるいは沈下させるのか - 止めにくい20年ぶりの円急落)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

前回、日本円が米ドルに対して130円を下回った2002年において、中国経済はフランスよりも小さく、プーチンは笑顔で西洋のリーダー等と会っていました。

今年の初めに、1ドル115円をつけた円の下落は4月28日に130円に達し、その後上下動を繰り返しています。

日本の政策立案者は不安を感じ始めており、市場は下落を食い止めるために政府介入があるかどうかについて推測するようになっています。

しかし政府介入は無駄でしょう。

大きな力が円の下落を推進しています。

 

最も重要な要因は、日米間の金利差の拡大です。

アメリカでは物価が急騰しているものの、日本のインフレ率は日本銀行の目標である2%を下回っています。

今年後半にその目標を達成するかもしれませんが、日銀はそれがコストの一時的な増加によって生じていると考えています。

日本の労働市場の特異性は、賃金の伸びが限定的であることを意味しています。

その結果、FRBが利上げを開始したにもかかわらず、日銀は金融緩和のスタンスを維持しています。

先週の金融政策会議で、日銀はその方向性を再確認しました。

日本の債券よりもアメリカの債券を保有することでより多くのお金を稼ぐことができるため、投資家は後者の購入に動き、円の需要を弱めています。

 

貿易も円の問題に影響を及ぼします。

日本の経常収支は12月に赤字に転じました。

輸入コストの上昇(ウクライナ危機が影響)が主な原因であり、燃料と原材料が日本の輸入額の約3分の1を占めています。

より高価な外国製品を購入するために、輸入業者はより多くの円を売ることを余儀なくされました。

パンデミックにより、日本の国境はインバウンド観光客に対して閉鎖されたままであり、日本の国際収支はさらに弱まっています。

 

政策立案者は伝統的に、円安を日本とその強力な輸出中心産業にとってプラスと見なしてきました。

まだそう考えている人もいます

彼らはまた、少しのコストプッシュインフレが日本の根強いデフレマインドを打ち破り、ゾンビ企業を市場から追い出すのに役立つかもしれないことを期待しています。

しかし、円は懸念が高まるほどの安値まで下落しました。

消費者は輸入価格の上昇に圧迫されています。

政府は、7月に予想される参議院選挙に備えて、4月に新たな財政刺激策を発表しました。

投資銀行であるゴールドマン・サックスは、製造業でも企業のセンチメントが変わったと述べています。

 

その理由の1つは、生産を海外移転することで通貨高のリスクを軽減するため日本企業が継続的に努力してきた事です。

また日本から輸出されているものは付加価値の高い商品である傾向があり、為替レートの変化に反応しにくい傾向があります。

パンデミックとサプライチェーンの障害も、自動車などのこれらの製品の一部の輸出を妨げています。

 

円安は、1ドル150円まで下落し続ける可能性があるとの見方もあります。

これは、1997年から98年のアジア金融危機(147円まで下落したとき)でも見られなかったレベルです。

2023年4月まで続く黒田総裁の任期中は、日銀の金融政策が変更される可能性は小さいですが、今年の総選挙後、日本が外国人観光客に門戸を開放する時に、ターニングポイントが来るかもしれません。

しかし、マネックスグループのジェスパー・コール氏は、「日本の投資家が自国株を購入し始める時に、円安は止まり、逆転するだろう」と主張しています。

円の下落は長期的傾向か

150円まで下落すると予想している向きがある点は驚きです。

おりしもイーロン マスクは「日本の出生率が死亡率を上回る様な事がなければ、日本はいずれ存在しなくなる」と発言した様です。

わが国の行く末が心配になります。

円高と円安のどちらが良いかとの議論がありますが、筆者は円高の方が良いと思っています。

以前は日本の製造業にとって円安の方が有利でしたが、今の様にグローバル化した世界では、円安は日本企業にとって必ずしも追い風になりません。

円安になれば、日本で働こうと考える外国人材も二の足を踏むのではと心配になります。

円安を食い止めるために金利を上げれば景気に悪影響を与えますし、日本経済は袋小路に迷い込んだ感があります。

ウクライナ危機による資源や食料価格の高騰は我が国をスタグフレーションに導く可能性があります。

Economist誌が触れている様に、日本企業が以前の様な存在感を取り戻さない限り、日本市場に賭ける外国投資家は現れない様な気がします。

頑張れ日本。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。