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飢餓とコロナ対策のジレンマに悩む北朝鮮

極東での新たな危機

ウクライナでの戦争は未だに継続し、いつ終わるか目処が立っていませんが、極東アジアでも新たな問題が生じている様です。

中国と同様にゼロコロナ政策をとってきた北朝鮮でオミクロン感染が公式に認められたのはついこの間ですが、あっという間に(というか実際はかなり前から感染が拡大していた可能性が高い)爆発的な感染が広がっている様です。

この問題について米誌Foreign Policyが「North Korea May Be Trapped Between Famine and Plague」(飢饉と感染症に脅かされる北朝鮮)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要約

2020年1月に北朝鮮は、当時新しいコロナウイルスの流行が中国で発生したことを懸念して見ていました。

与党労働党の公式新聞である労働新聞は、このウイルスが中国の国境を越えて広がるのを防ぐことは「国民の生存」の問題であると述べました。

その後28か月間、北朝鮮は、新型コロナの症例がゼロであると信じられない報告を行ってきました。

隣の中国共産党のように、朝鮮労働党は国境を封鎖することを前提としたゼロコロナ戦略を追求することを選びました。

そこでは中国と異なり、感染者の処刑も含まれます。

 

ゼロケースの主張は先週、国内でオミクロンの最初の感染を報告したため、突然停止されました。

ワクチン接種を受けた北朝鮮市民は一人もいません

また、以前のコロナ症例が確認されていないため、自然免疫も存在しない可能性があります。

 

数日のうちに、国営メディアは、100万件を超える「発熱」(診断検査能力の欠如を考えると、コロナ感染の疑いの婉曲表現)が全国に広がったことを認めました。

4月の最後の日に大規模な軍事パレードを行った平壌は、発生の震源地となりました。

北朝鮮の指導者である金正恩は、国営メディアでマスクを着用していることが示されました。

 

ほんの数ヶ月前に就任10周年を祝ったキムにとって、オミクロンは深刻な脅威です。

しかし、コロナは、現在、国にとって唯一の課題ではありません。

北朝鮮は再び飢饉の危機に瀕しています。

広範囲にわたる食糧不安と致命的な呼吸器ウイルスの組み合わせは、新たな危機の到来です。

状況は流動的なままですが、この二つの難題は、ウイルスの拡散を管理する方法において、体制に根本的なジレンマをもたらすように思われます。

 

国営メディアがオミクロンの感染が確認されたと報じる数日前に、平壌は封鎖されました。

北朝鮮の国営メディアによると、金氏は「全国のすべての市と郡を徹底的に封鎖し、作業と生産を組織化するよう求めました。」

これは、全国レベルの封鎖の要求を意味します。

北朝鮮のトップダウンシステムはそれを速く行うことができるはずです。

しかし、すべての兆候は、国がまだ完全な封鎖に入っていないことを示しています。

望遠鏡で南北国境を越えて覗き込んでいる韓国のジャーナリストは、南の農場で通常の農業活動が行われている事を観察しています。

完全な封鎖が意味するのは、確実で壊滅的な飢饉です。

深刻な食糧不足を防ぐためには、国の主食として米を生産することが不可欠です。

北朝鮮では、28か月の自主隔離の間に、食料在庫が少なくなっています。

全国的な封鎖は、全国でコロナ感染者の命を救うことができますが、飢餓や栄養失調によって失われる命を犠牲にする可能性があります。

 

最悪の事態が発生し、オミクロンを封じ込めることが不可能であることが判明した場合、国の指導部がどのような措置を講じるかは不明です。

労働新聞は、通常は外国の影響を認めたがりませんが、今回中国の経験を利用するという珍しい呼びかけを行いました。

これは、たとえ大量の飢餓者を生むとしても、パンデミックを封じ込めるために国家レベルの封鎖を支持する事を示している可能性があります。

 

北朝鮮のジレンマを迅速かつ簡単に解決することはできません。

2020年初頭の国家封鎖以来、平壌は常に孤立しており、外部からの援助を求めることに関心がないままです。

平壌は、国民のためにCOVAX(国連主導のワクチン供給システム)に割り当てられたワクチンを繰り返し拒否し、COVAXは4月下旬に、北朝鮮に割り当てられたワクチンを他国に転用すると発表しました。

しかし、北朝鮮がコロナの流行に巻き込まれた今、金正恩が外部からの援助を受け入れる可能性は高いかもしれません。

「自立」を強調する北朝鮮のスローガンにもかかわらず、北朝鮮は、以前の経済的困難の時期に、韓国や米国を含む外国からの援助の申し出を繰り返し受け入れてきました。

実際、北朝鮮当局がCOVAXに割り当てられたアストラゼネカワクチンを受け入れなかった理由の一つは、米国製のmRNAワクチンを好んだためでした。

 

韓国の新たに就任した尹錫淵(ユン・ソクヨル)大統領は、必要に応じて北朝鮮にコロナウイルス特有の支援を提供する用意があると述べました。

バイデン政権もまた、予防接種キャンペーンを促進するために北朝鮮に国境を開放するよう要請しました。

北朝鮮が北朝鮮を受け入れる意思を示した場合、米韓政府は無条件に北朝鮮への支援を拡大する準備をしなければなりません。

今月下旬、ユン大統領がバイデン大統領と会うとき、無条件で北朝鮮を支援する意欲を伝える機会があるでしょう。

世界が7回目の北朝鮮の核実験と継続的なミサイル実験を予想しているとしても、コロナ感染の問題に積極的に対応することに躊躇してはなりません。

米韓政府がこの危機を乗り切るため、北朝鮮に近づくように導く原則は、パンデミックによる無実の北朝鮮市民の苦しみを最小限に抑えることであるはずです。

この目的を達成するための努力は、核ミサイルの問題とパンデミックとの間に明確な関連性がなくても、コミュニケーションチャンネルを回復し、交渉に戻ることができる条件を整えることができます。

対岸の火事と傍観してはいけない

北朝鮮がアストラゼネカ製ワクチンを拒否したという事実は初耳でした。

現在はそんな選り好みを行う状況ではなくなり、政権は青くなっているというのが実情でしょう。

核の脅威を振り回す独裁政権に対して、手を差し伸べるなんてとんでもないという方もおられるかもしれませんが、相手が困った時こそ、外交交渉が可能になるわけで、筆者は積極的に人道支援を行うべきだと思います。

現在、日本は人気のないモデルナ社製のワクチンが余って、期限切れとなったワクチンが大量に廃棄されているという状態にあります。

余剰のワクチンは北朝鮮に譲るべきだと思います。

飢餓と感染により大量の犠牲者が出る様な事態を対岸の火事と指をくわえてみているのは、人道的な観点からも地域の安定の観点からも避けるべきでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました