MIYOSHIN海外ニュース

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中国が露呈したアキレス腱

頻発するデモ

最近、中国でデモが頻発しています。

中には共産党や習近平の退陣を求めているものもあると報じられています。

共産党の一党支配に公然と反旗を翻す事はタブーとされてきましたが、中国で何かが起きている様です。

勿論西側の報道には政治的バイアスがかかっていますので、報道内容を100%鵜呑みにするのは危険と思われますが、反政府の機運が広がっている事はどうやら事実の様です。

しかもその理由はコロナに関する政府の政策だというので、少々驚きました。

少し前まではコロナ感染を見事に封じ込めた中国の政策は世界から賞賛の対象ではなかったでしょうか。

この点について米誌ウォール・ストリートジャーナル(WSJ)が「China’s Zero-Covid Reckoning」(中国ゼロコロナ政策の報い)と題された社説で取り上げました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ社説要約

新型コロナウイルスへの中国の対応が世界のモデルになるとみられていた頃を覚えているでしょうか。

西側諸国の公衆衛生の専門家たちは、感染拡大初期に実施されたロックダウンがひどい結果をもたらした後、「ウィズコロナ」政策へと移行した米国の厄介な民主的決定に代わるものとして、中国の「ゼロコロナ」政策を好意的に見ていました。

そうした評価ももはやこれまでです。

 

新型コロナの感染が初めて確認されてから間もなく3年となる中、中国では記録的な感染者数が報告されています。

1日当たりの新規感染者数は過去最高に達し、2カ月間にわたり封鎖された上海で4月に急増した際の水準を上回っています。

中国全土で感染が拡大しており、複数の都市で再びロックダウンが敷かれています。

中国の国土の5分の1以上が移動制限の対象になっていると推定されています。

 

最近の感染拡大は、ウイルスの変異に伴って感染力が高まっていることを考慮すると、大きな大陸の国では避けられないものでした。

中国特有の問題は、厳格なゼロコロナ政策の結果、国民がワクチンないし自然免疫によって守られる度合いが小さくなっていたことです。

中国共産党はナショナリスト的な理由で、中国国産のワクチンより効果が高い西側諸国産のワクチンの受け入れを拒否しています。

長期のロックダウンが行われたことは、世界の他の地域の人々のように、ウイルスにさらされて、自然免疫を獲得した人がより少ないことを意味します。

中国の高齢者は、とりわけ脆弱です。

同国には、重病が広範囲に拡大した場合に対応できるだけの病院の収容能力や集中治療室(ICU)の病床が不足しています。

ある推測によると、活動が完全に再開されれば、10万人当たりのICU病床が4床を下回る国において、580万人が集中治療を必要とする状態になる可能性があります。

中国の支配者の意図は不明瞭だが、ロックダウンは病気の流行を遅らせるだけで、経済や社会に大きな打撃を与えるという世界的な証拠があるにもかかわらず、同党がゼロコロナ政策へのこだわりを主張し続けるのは、これが理由かもしれません。

 

習近平国家主席が抱える他の問題は政治的なものです。独裁的な政権は、監視、強制措置、ロックダウンなど自分たちが最も得意とすることを常に実行できます。

しかし、ゼロコロナ政策の打ち切りに伴って生じる痛みについて国民の支持を得るメカニズムが欠けています。

民主主義は、さまざまな主張が存在する面倒なものですが、事実に基づいて必要だと国民が考える時には、政策を変更し、適応するずっと大きな柔軟性を備えています。

 

一方、最近の新型コロナの感染急拡大とそれに伴うロックダウンにより、さらに多くの国民の不満や反発が生じている兆候が増え始めています。

iPhoneを組み立てている中国河南省鄭州市にある台湾・鴻海科技集団(フォックスコン)の工場で今週発生した抗議行動は、国際的なメディアが伝えた一例です。

国民が不満を表す公式の手段がないことから、これほど巨大な国であれば他にも多くの事例が存在することは間違いありません。

 

新たな一連のロックダウンによって中国経済は減速し、今年第4四半期と通年の同国の成長率は、当局者らが数字を操作しないとすれば、3%を下回るとみられています。

中国の今年の国内総生産(GDP)伸び率目標は5.5%でした。

最近、国際舞台での中国の好戦的姿勢が以前ほど目立たなくなっていますが、その背景には、新型コロナ対策と経済運営面での同国の苦況があるのかもしれません。

しかし米国は、こうした状況が続くと思い込んではなりません。

新型コロナで中国が被った打撃から得られる、より大きな教訓は、ロックダウンが機能しないということであり、公衆衛生やその他すべての面で独裁体制は模範にならないということです。

独裁体制が模範になると信じた米国民は、あまりにも多過ぎました。

米中の覇権争いの結末は

ここに来ての中国のコロナ対策の不手際は、ある程度予想されたとはいえ、社会に大きな損害をもたらし、国民の不満が高まっている様です。

一時は中国の様な強権国家はロックダウンなどを国民に強制しやすいので、感染症対策では有利であるなどと論評されていましたが、結果としてはワクチンを有効に活用し、ウイズコロナに早期に移行できた西側諸国の方が上手であった事が明らかになりました。

筆者も15億に近い巨大な市場と勤勉で優秀な人材を持つ中国が今後米国を上回る可能性があると推測していましたが、意外な所に落とし穴がありました。

WSJが指摘している様に、専制国家の泣き所は、政府が間違った方針を採用した場合にこれを修正する事が非常に難しいことかも知れません。

一旦中央が西側からのワクチン輸入禁止を決定すれば、これを覆す事は難しいと思われます(トップへの忖度が邪魔します)。

西側諸国もコロナに対して間違った対策を講じましたが、その後、間違いに気づいて修正を行ってきました。

民主主義というのは確かに面倒で、判断も遅くなるきらいがありますが、間違いを訂正するという意味では柔軟性がある様です。

中国はこの部分を根本的に改善しなければ、西側を追い越すのは難しいのではないでしょうか。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。