3年間で8カ国の軍事クーデター
アフリカでは過去3年の間に何と8カ国で軍事クーデターが起きたそうです。
その理由は経済不信、貧困、宗教問題など様々でしょうが、旧宗主国や彼らが支援してきた政権に対する不信感もその背景にありそうです。
新型コロナのワクチンを富裕国が買い占めた事件は、元々あった西側諸国への不信感を倍増させました。
この事件について米誌Foreign Affairsが「The Roots of the Global South’s New Resentment - How Rich Countries’ Selfish Pandemic Responses Stoked Distrust」(グローバル・サウスの新たな憤りの根源 - 富裕国の身勝手なパンデミック対応が煽った不信感)と題した論文を掲載しました。
著者はBill & Melinda Gates FoundationのCEOを務めるMark Suzman氏です。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Foreign Affairs論文要約
今年6月、パリで開催された新世界金融協定サミットの閉会式で、南アフリカのラマポーザ大統領は、国際金融とはほとんど関係のない話題を紹介しました。
数十人の世界的リーダーに対して新型コロナワクチンの問題を提起したのです。
「2021年に最初の新型コロナワクチンが展開されたとき、北半球の国々は…それらを買い占め、私たちが最も必要としている時にそれらを分け与えようとはしませんでした。
それは私たちの失望と憤りを生み出しました。北半球の命の方がグローバル・サウスの命よりもはるかに優先されていると感じたからです。」と彼は続けた。
物事をこのように見ているのはラマポーザだけではありません。
2021年、ジンバブエの実業家で慈善家であり、現在はビル&メリンダ・ゲイツ財団の理事でもあるストライブ・マシイワ氏は、パンデミック中の富裕国の行動が「意図的な世界的不公平構造」を永続させていると述べました。
この裏切られたという感情は国家間の信頼を損ない、地政学的影響は重大です。
もちろん、新型コロナに関する問題は、グローバル・ノースとグローバル・サウスの間で繰り返された約束の破棄のほんの一部に過ぎません。
しかし、より裕福な国々が特にウクライナ戦争に対するアフリカ諸国の曖昧な反応を理解する上で、パンデミック下で生じた不信感の影響は過小評価されています。
資源を公平に共有することに対するグローバル・ノースの躊躇と、共通の危機に対処する上でグローバル・サウス諸国を対等なパートナーとして扱うことに消極的であるという2種類の失敗でした。
富裕国が修復に向けて具体的な措置を講じない限り、亀裂は深まるばかりでしょう。
2020年4月、G20各国政府、慈善団体、多国間組織の連合は、ワクチン開発を加速し、検査、治療、ワクチンへの公平なアクセスを確保するための協力である「Access to COVID-19 Tools Accelerator」を立ち上げました。
パンデミックの発生当初から、ゲイツ財団は、命を救うワクチン、検査、治療は富ではなくニーズに基づいて配布されるべきだと主張し、その信念に基づいて、私たちは「Access to COVID-19 Tools Accelerator」と「COVAX」の創設と資金提供を行いました。
その目的は、どの国もリスクの低い人々にワクチンを接種する前に、新型コロナウイルスによる最も高いリスクに直面している人口の10パーセント(高齢者や重度の併存疾患を持つ人々)にワクチンを接種できるようにすることでした。
COVAXは、2021年末までに世界中で20億回分の新型コロナウイルス感染症ワクチンを供給し、そのうち13億回分を低・中所得国に供給することを目指していました。
ロシアと当時トランプ大統領が率いる米国は署名リストには名前を連ねませんでしたが、180カ国以上が署名しました。
しかし、COVAX が成功できるのは、富裕国が協力し、多大な援助を提供した場合のみです。
全く彼らは期待はずれでした。
2020年末に規制当局がワクチンを承認し始めた頃、彼らは逆にワクチンの大部分を買い占めました。
これらの行動の悪影響は、ゲイツ財団が活動のほとんどを行っているアフリカで特に顕著でした。
5月までに米国では35%の人が完全に予防接種を受けていたのに対し、アフリカでは0.3%でした。
STATの報道によると、米国を含む富裕国は、7億8,500万回分のワクチンをCOVAXに寄付することを約束しましたが、2021年9月までに到着したのはわずか18%でした。
不平等はひどいものでした。
米国では、私の8歳の息子は、他の多くの米国の子供たちと同様に、マラウイの人口の97パーセントよりも前に、重症化するリスクが非常に低いにもかかわらず、ワクチンを受けました。
新型コロナの最も致命的な段階は終わったようです。
しかし、低所得国は依然として余震に見舞われています。
彼らは今も健康、開発、教育、気候変動など回復力への投資ではなく、その債務返済に多額を費やさなければなりません。
医療費よりも対外債務の返済に多くを費やしている国の数は2020年以前と比べて25%増加しています。
その様な環境の中で、低所得国の人々の間で、世界にはダブルスタンダードがあるという感覚を助長しています。
新型コロナに関する先進国の振る舞いは南北の亀裂が広がる要因として特に過小評価されていますが、それは決して唯一のものではありません。
同様の約束違反は、気候変動に関しても生じています。
2015年にパリで開催された気候サミットで、先進国は発展途上国の気候緩和と適応を支援するために年間1000億ドルを支出することを約束した。
しかし、これらの援助国はそれ以来、毎年この目標を数百億ドルも達成できていません。
さらに悪いことに、裕福な国が約束した資金の70%が融資で占められているのです。
低所得国は、裕福な国が引き起こした損害を補うために、実質的に利子付きでお金を借りています。
多くの低所得国は現在、新たなパートナーを探しているか、自国だけで問題を解決しようとすることが唯一の実行可能な行動なのかと思い始めています。
裕福な国には、行動するという道徳的義務があるだけではありません。
グローバル化された世界では、どこであれ不平等があらゆる場所で安全と繁栄を損なうため、そうすることは彼らの利益になります。
有望な枠組みの1つは、アフリカ開発銀行のハイブリッド資本モデルです。
これは、各国が未使用の国際通貨基金の資産準備金を多国間開発銀行に振り向けることを可能にし、それによって債務に苦しむ国々を支援できます。
広がる中露の影響力
ワクチンにしても、気候変動にしても、アフリカの国民たちは、先進国の利己的なな振る舞いに呆れ、彼らがアフリカで支援している各国政府への失望に繋がっている様な気がします。
そんなアフリカで経済力と軍事力を武器に影響力を伸ばしているのがそれぞれ中国とロシアです。
BRICSにエチオピアが加盟して驚きましたが、G20にもアフリカ連合が参加を認められる様です。
アフリカ連合のG20への加入は、アフリカ諸国の先進国への接近ではないかと批評する向きもある様ですが、G20には中国もロシアもインドも入っています。
G20におけるこれら三国の影響力がアフリカ連合の加入により高まると見た方が良いでしょう。
わが国もアフリカ諸国などグローバルサウスの国々を味方につけたいのであれば、欧米諸国の様な利己的な行動から一線を画す必要があります。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。