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新冷戦の引き金を引いたコロナ 踏み絵を迫られる日本

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米中政府の計算を大きく狂わせたコロナ

米中の貿易摩擦は、昨年後半より激しさを増しましたが、最終的に中国が大きく譲歩した形で、今年一月、米中合意がなされました。

少なくとも表面上は、ハードネゴシエーターのトランプ大統領の軍門に下った形となり、あのしたたかな中国政府が、どうしてこんな条件で、米国に譲歩したのだろうと不思議に思っていました。

おそらく裏には何か取引があったものと推測されます。その取引とは、中国が貿易条件で譲歩する代わりに、米国政府は、香港の人権問題には触らないというものであったと推測します。

トランプ大統領は、元々、人権より経済が大事なタイプの政治家ですので、このディールに乗ったのではないかと思います。

中国はこのディールを通じて、次期大統領選で、トランプ大統領の再選を容認したという事になりますが、中国にしてみると、伝統的に人権にうるさい民主党候補よりトランプの方がまだましだという判断があったのではと思います。

習主席には、絶対に香港の人権問題に触れて欲しくない理由がありました。それは今年9月に香港の立法会(国会に当たる)選挙があるからです。

この選挙では、民主派が勝利する可能性があり、これを阻止しなければ、中国政府は香港に対するコントロールを、大きく失いかねない可能性があったのです。

選挙を控えているトランプ大統領は、対中貿易戦争勝利の実績が欲しいし、中国は香港立法会の選挙に口出しされたくないという両者の思惑が一致し、ディールが成立したわけですが、このディールが音を立てて崩れたのは、まさにコロナ感染のせいでした。

トランプ大統領は、コロナで10万人を上回る死者を出すばかりか、歴史的な規模の失業者が出たことにより、根本的に再選戦略を練り直す必要が出てきました。

新たな戦略において、槍玉に上げられたのは中国でした。コロナ感染初期の情報隠蔽や、香港国家安全法の全人代による決議等、中国政府の対応が次々と批判の対象となりました。

話が違うと思ったのは習主席でしょう。しかし、こうなれば応酬するしかありません。という訳で、米中の新冷戦が始まってしまいました。

両国の戦いが、世界のリーダーの座を争う覇権争いの性格を帯びているだけに、米中間の冷戦は、遅かれ早かれ始まるとおもっていましたが、コロナが引き金を引いてしまった訳です。

米国から踏み絵を迫られる日本

今回の冷戦は、以前の東西間の冷戦とは少し性格も違いますし、両陣営のメンバーも異なってくると思います。

対立軸も資本主義vs社会主義ではなく、自由民主主義vs国家統制主義といったものになるでしょう。

米国につくか中国につくか、どの国も判断を迫られることになると思いますが、5月28日に米国、英国。カナダ、豪州の4カ国で中国の「香港国家安全法」導入に反対する共同声明が出されました。

共同通信によれば、事前に、日本もこの共同宣言に参加しないか打診され、日本はこれを断ったそうです。

日本は今後も様々な機会で、米国から踏み絵を迫られると思いますが、日米安保を破棄するつもりがない以上、米国の陣営に加わるのが当然と思います。

しかし、先ほど触れた共同宣言の4カ国にニュージーランドを加えた5カ国は、Five Eyesと呼ばれるアングロサクソンの集まりで、国際諜報の分野でもこの5カ国だけで情報を共有するほど緊密な間柄です。このアングロサクソンの集まりに、日本だけ参加するというのはあまり得策ではないと思います。

環太平洋パートナーシップを率いる日本

日本にとって理想的なのは、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の参加国のまとめ役として、米国を補佐していくというものだと思います。

このTPP協定に関しては、日本の他に、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、ベトナム、カナダ、シンガポールが既に批准しており、マレーシア、チリ、ペルー、ブルネイが批准待ちの状態です。タイ、台湾やフィリピンも加盟を検討しています。

このTPPは、もともと米国と日本が対中国経済圏構築をめざしていたものでしたが、トランプ大統領はこの協定から離脱を決めました。

米国離脱後、協定締結をリードしたのは日本ですが、今回この加盟国を日本がまとめる事ができれば、米国にも恩が売れると思います。

一方、米中のデカップリングが進めば、日本企業を含め、中国から工場を他国に移転する必要が出てきますが、この面でも、TPP加盟国は受け皿になる事ができます。

TPP加盟国のGDP総額はEUと匹敵するレベルと言われています。一つの経済ブロックとして存在感を持つと思われ、一帯一路といった覇権構想をユーラシア大陸で押し進める中国に対して、有効な対抗軸になると思われます。

Five Eysのアングロサクソンの集団の隅に、刺身のつまの様に添えられても、日本は存在感を発揮できません。TPP経済圏のリーダーとして、自由主義陣営を支えた方が、余程米国からも評価されると思います。

今後の焦点は、9月の香港立法会選挙、そして同じ月に行われる予定の米国でのG7です。

ここで中国を非難する共同声明が採択され、米国は大統領選挙に突入するという流れになるのではないでしょうか。

今年の後半は、世界の将来を決めかねない大きなイベントが続きます。目が離せません。

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