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ボーイング737Maxに見る大ヒット商品の呪縛

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737Maxの試験飛行再開される

飛行許可が停止されているボーイング737Maxの試験飛行が米連邦航空局(FAA)の監督の下、再開されたと各紙が伝えました。

ご記憶の方も多いと思いますが、同機はインドネシア航空エチオピア航空の墜落事故のため、FAAから出されていた飛行許可が取り消されました、

この二つの事故は5ヶ月の間に立て続けに起き、合わせて346人もの犠牲者を出した事で、世界に衝撃を与えた事は記憶に新しいところです。

737とはどんな飛行機か

737シリーズは世界で累計1万機以上が販売されたと言われ、歴史上最も売れた飛行機です。

私もこの飛行機には数え切れないほど搭乗した経験があり、お世辞にもスマートとは言えませんが、小さな力持ちを連想させる姿に愛着を覚えていました。

このシリーズ初号機は1967年に初飛行しています。

それ以来モデルチェンジを重ねて、何と50年以上現役を続けているのです。

もちろん基本設計は同じですが、初号機と現在のモデルの間には、数々の変更点があります。

特に最新機種である737Maxには、燃費の良い新型エンジンが搭載されました。

このエンジンは、以前のエンジンより直径が20cmも大きい為、エンジンの位置を引き上げざるを得ませんでした。

これが影響し、このモデルは機体が上を向く癖がつきました。

機体が上を向きすぎると、失速のリスクが高まりますので、それを抑制するため、翼に姿勢を制御するセンサーを設け、機体が上を向きすぎるのを制御する仕組みになっています。

事故の原因は何か

しかし、事故は起きてしまいました。事故の原因は何だったのでしょう。

調査の結果、二つの事故とも、機体が上を向きすぎるのを制御するシステムが誤操作し、システムが機体を下に向けすぎた事が原因である事が判明しました。

しかも、コックピット内では、機体が急降下するのに気付いた機長が、手動で操作しようと試みた様ですが、手動に切り替える方法が見当たらなかった様です。

ボーイング社はこの事故の責任を認め、莫大な補償金を払うと同時に、この機体の生産中止という事態に追い込まれました。

既に納入済みの機体350機余りは飛行停止となり、受注済みの4,600機余りの注文はキャンセルとなりました。

ボーイングはコロナ 感染が始まる前に、ドル箱であった737シリーズの生産停止に追い込まれ、息も絶え絶えの処に、コロナの影響で航空会社からの注文が止まった為、現在は政府の支援なしには事業が継続できなくなっている状況です。

737Maxは本当に安全か

ところで、今回の飛行テスト再開の記事を読む限り、米連邦航空局(FAA)は、事故後にボーイング社が修正を行ったソフトウェアが緊急時にうまく機能するかを確認すると書かれており、ハードウェアの大きな変更は今回行われていない様です。

素人ながら心配されるのは、この最新モデルは機体のバランスがもともと悪いのではと思われる点です。

燃費の良い最新型のエンジンを搭載するために、エンジンの位置が上になり、機体が上向きになる癖がついたと書きましたが、バランスが悪くなった機体の挙動を、ソフトウエアで修正しようとする処に、そもそも無理があるのではと思います。

737は実働50年を超える世界一のベストセラー機です。

その新型機となれば、容易に顧客に売り込めます。

本来であれば燃費の良い新しいエンジンに合わせて、機体を設計するのが本筋の様な気がしますが、新しい機体を一から設計するのは莫大なコストが掛かります。

これをボーイングの経営陣は嫌がったのではないかと思います。

ライバルの存在

ボーイングに新型エンジンの導入を決断させた背景には、ライバルのエアバスの存在があります。

エアバスはボーイング737-800(Maxの一つ前のモデル)のライバルとして、エアバスA320Neoを世に出しましたが、このモデルが燃費の良さと自動操縦を取り入れパイロットの負担を軽減したことにより、大ヒットしました。

これがボーイングをして新しいエンジンの搭載という決断をさせたのですが、エアバスA320とボーイング737では大きな違いがありました。

それは機体の高さです。エアバスの方が機体が高いので、大きなエンジンを位置変更する事無く装着できましたが、ボーイングはエンジンの位置を上に上げる必要があった様です。

大ヒット商品の呪縛

今回のボーイングの失敗は、マーケティングにおいて陥りやすい失敗の典型的な例だと思います。

大成功してきたモデルに固執するため、モデルチェンジがどうしても遅くなってしまうというのは、どこの業界にもある話です。

特にモデルチェンジに膨大なコストがかかる製品の場合、この失敗は頻繁におこるでしょう。

時代遅れのモデルを、マイナーチェンジで生きながらえさせるには限界があります。

経営陣には、大ヒット商品をパッと新しい商品に切り替えるという難しい決断が求められます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。