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現代資本主義の問題を象徴するボーイング墜落事故

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空の巨人ボーイングが犯したミス

2018年と2019年に2機が相次いで墜落したボーイング最新型B737の事故は記憶に新しいところですが、この事故に関して英誌Economistが「A new book explains the tragic failure of Boeing’s 737 MAX」(ボーイング737MAXの悲劇的な失敗を説明する新著)と題する記事を掲載しました。

この事故には資本主義社会の問題が凝縮されている感があります。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

離陸直後、さまざまなアラームが点滅し、警告音が鳴り響き、2機のボーイング737 Maxのパイロット(1機はフィリピンのライオンエア、もう1機はエチオピア航空が運航)は、操縦桿と格闘しました。

どちらも、人間の操縦を補完する筈のソフトウェアの問題を克服できませんでした。

2018年と2019年の2回の墜落事故で、346人が死亡しました。

エチオピアの墜落事故の補償訴訟で、今年11月10日にボーイングは機体が安全な状態でなかった事をようやく認めました。

 

ブルームバーグのジャーナリスト、ピーター・ロビソンによる「Flying Blind」では、悲劇につながった一連の出来事と、それに続くアメリカ最大の企業の混乱が巧みに描かれています。

ボーイングは1997年にマクドネル ダグラスと合併した後、株式市場のパフォーマンスと投資家を満足させる事が、エンジニアリングの卓越性よりも優先されました。

かつてのライバル会社からの社長抜擢、およびゼネラルエレクトリックで金融工学の技術を学んだ一連の幹部の登用は、「収益が最優先」との考えを定着させました。

ロビンソン氏は、安全性が最優先されるべき会社でのそのアプローチの欠点を詳細に記録しています。

そして彼は、ボーイングがエアバスとの激しい競争下にあるとは言え、ボーイングが自身の飛行機の安全性を証明する上で主導的な役割を果たす事を容認した連邦航空局(FAA)の責任放棄についても批判しています。

株主還元、競争力向上、投資のバランスを取ることは、どの企業にとっても難しい課題です。

ボーイングはこの方程式をうまく解けませんでした。

 

2010年にエアバスがより燃料効率の高いA320neoを発表した時、ボーイングは全く新しい対抗機を開発する事も検討しました。

しかし、ボーイングは、新しい旅客機の開発中に数年間市場市場シェアを譲るのを嫌がり、新しいエンジンを従来の737に取り付けることを選択しました。

しかし、1967年に就航した飛行機に巨大な新型エンジンを取り付けると、飛行機の重心が移動しました。

失速を防ぐことを目的としたMCASシステムは、飛行機の1,600ページのマニュアルでも特に注意されるべきでした。

 

どちらの事故でも、パイロットが注目していなかったこのシステムに接続された小さなセンサーの障害が原因となりました。

飛行機の制御を取り戻す方法を見つけることは、最後の数分間の混乱と絶望の中で、パイロットが1インチの厚さのハンドブックをめくることを意味しました。

ボーイングのエンジニアの何人かは懸念を表明しましたが、MCASシステムは当局によって承認されていたため、フライトシミュレーターでの高額な再トレーニングは不要でした。

前世代の737で訓練されたパイロットは、iPadで数時間を費やすだけで済みました。

 

ボーイングの反応もその優先順位を間違えました。

2回目の墜落後、飛行機は飛行禁止とされましたが、会社は飛行機を作り続け、事故の責任をパイロットに転嫁しました(最新の裁判所の判決はエチオピア航空のパイロットを免責としています)。

苦痛はゆっくりとやってきました。

実際、飛行禁止期間は20か月続き、その間にパンデミックが発生し、何百機もの注文がキャンセルされました。

 

事故はこれまでのところ、ボーイングが支払う罰金と納期遅延に対する航空会社への補償として210億ドル(約2兆4千億円)の費用が生じています。

遺族への支払いは確定していません。

それでも、より燃料効率の高い飛行機を求めている航空会社からの3,000機の注文のバックログがあります。

ある匿名のパイロットは、ロビンソン氏に彼の著作の新しいタイトルを提案しています。「ボーイングは危機を乗り越えました」

資本主義社会が抱える欠点

B737は1967年に初飛行しているんですね。

いやーこの飛行機は数限りなく乗りました。

ずんぐりむっくりの体型ですが、力強く上昇する機体には安心感がありました。

アメリカ航空機産業の歴史でも名機中の名機と謳われたものです。

このB737の栄光と失敗の歴史からは多くを学ぶ事ができます。

 

先ず、人間というものはベストセラーを出すと、それに固執してしまうという事です。

本来であれば、1967年に就航した飛行機の基本設計は相当時代遅れになっていた筈です。

しかしボーイングはそれを無理して長く使おうとしたところに問題があったと思います。

 

もう一つの教訓は最近の資本主義の悪い点ですが、とかく目先の利益を追求したがる事です。

株主至上主義が行き過ぎると、肝心の安全対策や研究開発に十分な資金がまわらず、ボーイングの様な失敗を引き起こしてしまいます。

 

この様な資本主義社会の利益至上主義を是正するには、当局が適切に介入する必要がありますが、ボーイングの事故では、当局もボーイング任せにするなど期待される役割を果たせていません。

 

ある意味アメリカの資本主義の欠点を象徴する様なボーイングの事故だったと思います。

B737Maxは飛行許可を得られた様ですが、個人的にはこの機体には乗りたくありません。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。