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子供を甘やかす米国は中国に勝てるか

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米中対立

米中の対立は今後も長く続きそうです。

最後にどちらが勝つかという点に関して、欧米のメディアは実に多くの論文や記事を掲載しています。

その多くは中国には創造性を育む自由な環境がないので、最後は米国が勝つと予想していますが、本当にそうなるでしょうか。

米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)がこの点に関して興味深い投稿記事を掲載しました。筆者は米国の大学院(政治学)で学ぶ中国人のZhang氏です。

「The Coddling of American Children Is a Boon to Beijing - In China, my son had to study hard. Here in the U.S., he just needs to bring a ‘healthy snack’ to school.」(子供を甘やかす米国は中国を有利に - 中国では、息子は一生懸命勉強しなければならないが、アメリカでは、「健康的なおやつ」だけを学校に持っていく)と題された記事をかいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ寄稿記事要約

アメリカで幼い息子を育てている中国人の博士課程の学生として、私はアメリカの小学校がどうして生徒を甘やかしているのか不思議に思っています。

中国では、学校は新兵訓練キャンプのように運営されています。

アメリカが若者に与える甘やかしは、激化する中国との競争にどの様な影響を与えるのでしょうか。

 

私は最近、息子をニュージャージーの公立学校の3年生に編入させました。

彼は最近、中国の成都で小学校2年生を終えたばかりです。

そこでは、分厚い教科書や宿題やテスト用の教材でぎゅうぎゅう詰めになったリュックを背負い、毎日学校に通っていました。

アメリカで彼は、「健康的なスナック」だけをリュックに入れて学校に行きます。

 

初日、彼は数学の宿題を持って帰宅しました。

35の足し算の問題です。彼は約1分で終えました。

2日目に、彼はさまざまな形で328を書くように求められました。

彼はまずヒントに従って300+ 20 + 8と書き留め、次に164x2、82x4、および656÷2を書き出しました。

 

私の息子は天才ではありませんが、幼い頃から数学を勉強し始めました。

彼が5歳のとき、私は彼に分数を教えました。

2年後、私は彼に代数を紹介しました。

才能は養うことができるというのが中国社会の基本的な信念であり、学校は子供たちに厳しくあるべきです。

中国の学生は、国際的な数学と科学のテストでトップを占めています。

 

これはアメリカの学校が共有する哲学ではありません。

金曜日の夜、息子は宿題がないことに戸惑いながら帰宅しました。

中国では、生徒は週末に2倍の宿題を受け取るのが普通であり、それを完了するのに2日かかります。

アメリカは、最高の数学者、科学者、エンジニアを育て上げようと決意した中国とどのように競争するのでしょうか。

 

いま東洋と西洋で、二つの毛沢東主義的な文化革命が進行しています。

前者は好戦的愛国心をあおるナショナリズムで、中国共産党への忠誠心と至る所に配置された秘密警察がこれを可能にしています。

後者はこれまでの米国の在り方を否定するような反アメリカ主義で、警察予算の削減を求める進歩派の群衆が担い手となっています。

いずれも表現を制限し、思想を統制し、行動を規制することを目的としています。

中国の習近平国家主席は金融から娯楽まであらゆるものを取り締まり、「民族の復興」を掲げて国家を奮い立たせようとしています。

中国のナショナリズムは明らかに毛沢東主義を基盤とし、習氏は新たな個人崇拝の象徴と化しています

一方で、人種差別などの社会的不公正の問題に高い意識を持つ「ウォーク(覚醒した)」と表現される米国人――自覚しているかどうかは別として、毛沢東主義的な戦術を用いている――は西洋文明の核となる伝統をぶち壊しています。

どちらの国でも、公式のイデオロギーのイメージで彼らを形作るために、支配は非常に若い人にまで及ぶ必要があります。

2021年の秋、中国の生徒たちは「習近平思想」を学ぶという新たな要件を持って学校に戻りました。

学校は「党、国、社会主義を愛する種を若い心に植え付けなければならない」と宣言しています。

海を越えて、アメリカ人の生徒は、個人の意図や行動に関係なく、白人アメリカ人は本質的に人種差別主義者であると教えられています。

 

中国の教育は、若者を党と国家に奉仕する方向へと押しやります。

若者はきつい労働と苛酷な競争に耐えることができる高技能労働者になるよう訓練されます。

このような政治的教化は、数学や科学と並行してすり込まれます。

米国の教育は、偏見のないオープンな心を育てるはずですが、あまり身についていないように思われます。

さらに悪いことに、米国の若者は大人になるための準備が出来ていません。

米国の大学に何年も通う中で、筆者が違和感を覚えたのは、精神障害ではない学生に対し、大学側が「不安」や「うつ」を抱えていると決めつけることです。

これが被害者意識を生み出す原因になっています。

この不条理がピークに達したのは、2016年の米大統領選でトランプ氏が当選した直後です。

有力大学の学生らが存在に関わる絶望感を訴え、ココアや塗り絵の本、セラピー犬などに心の平安を見出しました。

大人としての現実にどう適応すべきかを学ばなくてはならない20歳過ぎの若者を落ち着かせるという名目で、大学の授業は中止され、試験も延期されました。

中国の市民は、欧米の「スノーフレイク」(自意識過剰な人を指す)を嘲笑しています。

しかしこの傾向が米国にとって何を意味するのかを考えると、あまり愉快ではいられません。

中国がもはや米国への憎悪を隠さない現状ではなおさらです。

米国は大丈夫か

国の競争力を支えるのは教育であることは言うまでもありません。

冷戦の時代に米国と対峙したソ連も実は教育には相当力を入れていた様です。

以前ロシア語の同時通訳で作家の米原万里さんが自らソビエト学校で受けた教育のレベルの高さについて書いていた事を思い出します。

彼女は日本に帰国して中学校に編入しますが、そこで日本のマルバツ式の試験にカルチャーショックを受けた様です。

国語と数学を徹底的に教え込むロシアの教育を彼女は高く評価していました。

そんなロシアも冷戦では米国に敗北したではないかと言われる方も多いと思いますが、ロシアが負けたのは社会のシステムがいくら働いても給料が上がらない悪平等の社会だったせいで、教育のせいではありません。

今度米国が戦わなくてはならない中国は、起業して億万長者になるチャンスもあるし、もともと勤勉な国民です。

しかもその人口は米国の四倍近いとなると、米国も相当気を引き締めてかからないと今度は一敗地に塗れるかもしれません。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。