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中国を過小評価すべきではないー時代に合わせて進化する国家資本主義

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中国は旧ソ連と同じ様に封じ込められるか

今年に入ってからというもの米国において、反中キャンペーンがエスカレートしています。

反中の姿勢は今や共和党だけでなく、民主党にも拡がりを見せ、大統領選は今や中国にどれだけ厳しいかを争うコンテストの様な趣きを見せています。

しかし、彼らの言動を見ていると、「俺たちは中国にちょっと甘すぎた。でもこれからは違うぞ。中国が米国の向こうを張るなんてありえない。俺たちが本気になれば、簡単に中国をひざまずかせる事が可能だ。」と上から目線で見ている様な気がします。

彼らには原体験があります。

それは冷戦時代のソ連との関係です。

レーガン大統領はソ連を禁輸で締め上げ、ソ連への穀物輸出を認めず、これが結果的にソ連のみならず共産圏の崩壊を引き起こす事になりました。

この成功体験が、中国に対する楽観論のベースになっている様ですが、中国はソ連の様に崩壊させる事が出来るものでしょうか。

この点について、英誌Economistが面白い記事を掲載しましたので、ご紹介したいと思います。

そのタイトルは「Xi Jinping is reinventing state capitalism. Don’t underestimate it (習近平は国家資本主義を再編しようとしている。これを過小評価すべきでない。)です。

Economist記事要約

米国は「中国の経済成長は、膨大な銀行貸付と補助金、縁故主義、それに知的財産の侵害という持続不可能な手段によって実現したものゆえ、十分な圧力をかければ、中国経済は傾き、最終的には国家主導のシステムは自由化するだろう。」という仮定を立てている様です。

 

この仮定は驚くほど単純ですが、間違っています

中国の関税戦争から受けた被害は予想以上に少なかったのは、以前の中国と違い、GDPに占める輸出の割合はわずか17%に縮小しているからです。コロナ感染後の経済回復も他の国より遥かに早く、IMFは今年の中国の経済成長率を1%と予想しています。(米国はマイナス8%)

中国経済を過小評価する動きは今に始まった事ではありません。

しかし1995年以来、中国の経済は購買力平価で測れば、世界のGDPの2%から16%に成長しました。

中国は西側の懐疑論に晒されながらも、国家資本主義を時代に合わせて柔軟に変化させてきました。

2010年代に入るとアリババやテンセントなどハイテク企業 を巨大化させる事に成功しました。

 

今、習主席は国家資本主義を新たなレベルに引き上げようとしています。

彼の新たな目標は、市場とイノベーションのレベルを上げ、これを中国共産党の完全な支配下に置く事です。

この「習ノミクス」と呼ばれる彼の経済政策には三つの柱があります。

  • 金融業を厳しく管理する事

超大型の貸付の時代は終わりました。銀行は健全経営を求められています。

コロナに対する中央政府の対策もリーマンショックの時とは違い、米国のおよそ半分のGDPの5%と抑制が効いています。

  •  効率的な行政システム

新たな商法体系を構築し、お役所仕事は一掃されました。

今や中国で新会社を設立するのに必要な日数はわずか9日しかかかりません。

習主席が就任以来、倒産と特許に関する訴訟件数は5倍に跳ね上がりました。非効率な会社は倒産する資本主義の社会に中国は移行しているのです。

効率的な行政システムは経済の効率を改善します。

  •  国営企業の効率化

国営企業は効率的な経営を行う事により、民間からの投資を引き込む様に指導されています。

一方、民間企業には共産党細胞を送り込む事によって、党の監視を強めています。

 

短期的には習ノミクスは好調の様です。

しかし、彼らの試みが本当に成功するかどうかを判断するには、もう少し時間が必要です。

中国政府はテクノロジー中心型の新たな中央計画経済がイノベーションを持続できると考えている様ですが、歴史を翻れば、分散型の意思決定システム、開かれた社会、言論の自由こそが、イノベーションを生み出す魔法のレシピでした。

 

西側諸国は中国のこういった国家資本主義との長い戦いを覚悟する必要があります。

中国をソ連と同じ様に封じ込めることは不可能です。

中国は遥かに洗練された経済システムを持ち、世界中の国々と密接に関係しています。

西側世界は高い外交能力で、新たな安定したルールを築き上げる必要があります。

中国にどう向き合うか

確かに中国の実力は侮れません。

国家資本主義は洗練され、効率性において西側の資本主義と同等どころか、それを上回るところがあります。

例えば、コロナ に対する対策は、主要国の中で、中国が最も成功したと言えるでしょう。

国の統制が強力であるという特徴を生かし、長期間行った武漢のロックダウンは、結果的にコロナ感染を完全に封じ込めました。

コロナだけではありません。

AI時代において、個人のプライバシーを気にせず、国民のありとあらゆる情報を国が吸い上げられるシステムは圧倒的に有利なのです。

政府はスマホや監視カメラを通じて、国民がどこにいてなにをしているのか24時間監視できる体制を作り上げています。

もともとは反政府分子を抽出する為に築き上げられたのでしょうが、このシステムから国民の健康データ、金融データ、行動データなどが吸い上げられ、巨大なビッグデータが構成されます。

このビッグデータがバイドゥ、アリババ、テンセント、といった中国のIT企業により活用され、新しい効率的なサービスを生み出しているわけです、

西側で同じことをやろうとすれば、個人の人権問題が障壁となってしまいます。

西側は自由で民主的な国だから、AIに必要なビッグデータが思う様に集まらないというジレンマに直面しているのです。

 

また、言論の自由がないところに、イノベーションは生まれないという古くから欧米で唱えられている説に関しても、中国はチャレンジしています。

言論の自由がなくても、金儲けできる環境があれば、中国には新たなイノベーションが生まれていることは明らかです。

 

こんなふうに考えると、中国に待ったをかけるのは容易ではなさそうです。

 中国には、秦の始皇帝の昔から優秀なテクノクラートが中央から国を治める伝統があります。

これからは西欧のシステムと中国の伝統ある中央集権システムが優劣を競い合う時代に入っていくものと思われます。

 

私は、個人的には多少効率が悪くとも、自由がある西欧のシステムを好みます。24時間監視されて、自由にものが言えない社会に住みたいとは思いません。

皆さんはどちらの社会に住みたいと思われますか。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。