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米国は台湾を本当に守るのか

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中国の台湾攻撃の可能性

中国が台湾を攻撃した場合、「米国は台湾を守るか」という問いに対して、明確に答えを出せる人は少ない様な気がします。

中国は一国二制度を台湾に対しても、提案していますが、同じ様に一国二制度を国際的に約束していた香港に対して、7月1日に国家安全法を突如導入し、香港の自治を踏みにじりました。

これを見た台湾の人々は震え上がったと思います。

そして絶対に中国の一州になりたくないと思ったに違いありません。

しかし、中国がその気になれば、台湾は中国の攻撃に耐える力はありません。

台湾海峡の反対側には中国の大部隊が控え、台湾向けに無数のミサイルが照準を定めています。

台湾を守るためには、米国が軍事介入する他ありません。

しかし、現時点で台湾と米国の間には公式な外交関係はありません。

一つの中国を認めたニクソン政権以降、米国は台湾に大使館も置いていないのです。

この様な状況で、米国は台湾を本気で守るでしょうか。

この点に関して、昨日米誌Foreign AffairsAmerican support for Taiwan should not be ambiguius.アメリカの台湾支援は曖昧ではいけない。)と題する論文を発表しました。

Foreign Affairs記事要約

米国の共和党、民主党の歴代政権はこの40年間、中国が武力攻撃を仕掛けた場合に米国が台湾の防衛に参加するかどうかという質問に答えてきませんでした。

ワシントンがこの問題について意図的にあいまいであることは、中国が台湾を本土に統一しようとの企図を思いとどまらせるのに役立ちました。

同時に、武力衝突を引き起こしたであろう台湾の独立宣言も思いとどまらせました。

 

戦略的曖昧さで知られるこの政策は、これまで通用してきましたが、攻撃性をとみにます最近の中国に対して、この曖昧さはもはや通用しません。

米国が立場を明らかにする時期がきました。

米国は中国の武力行使に対して対応すると明確に中国政府に伝えるべきです。

米国政府は「一つの中国政策」と矛盾せず、中国とのリスクを最小化する形でこの問題を解決する事が可能です。

実際、この変化は抑止力を改善し、米国と中国の間の衝突の可能性が最も高い台湾海峡での戦争の可能性を減らすことによって、長期的に米中関係を強化するはずです。

 

米国は1979年に台湾(中華民国)との外交関係を断絶しました。

同時に台湾関係法を締結し、台湾に武器を提供し、台湾に軍事的に関与する権利を保持しましたが、肝心なことは、この法律には、台湾の防衛に参加する事が明言されていない点です。

 

現在の曖昧さを維持しても、来たる40年の台湾海峡の平和を維持することはできません。

中国の軍事予算は台湾の15倍で、その多くを台湾関係に費やしています。



習主席の下、中国はますます攻撃的になっています。

習主席は、南シナ海を軍事化しないことをオバマ米大統領に約束しましたが、その約束は守られていません。

多くのウイグル人を投獄し、インドと公然と衝突しました。

台湾海峡での軍事演習を強化し、台湾を国際的に孤立させる取り組みを強化しました。

台湾にとっても同様に心配なのは、中国がこの1年間で香港の自治権をほぼすべて奪ったことです。

 

米国が政策を明確にする時期が来ました。台湾が第二の香港になる可能性を否定すべきではありません。

 

台湾が独立宣言する事に関して心配は無用です。

香港の現政権は米国が台湾の独立を支持しない事は理解しています。

蔡英文総統は、中国をいたずらに刺激する独立に対して極めて慎重であり、現状維持を目指しています。

 

戒厳令の下統治されていた1979年の台湾を、守るに値するかと思った人もいたと思いますが、その後、台湾は権力移行を伴う民主的な国家に生まれ変わりました。

同性婚を認めたアジア最初の国で、地域で最も自由な報道機関を有し、女性の国会議員の率は米国の二倍です。

コロナ対策において、世界に手本を示し、多くの地球規模の問題で、米国の有力なパートナーになりえます。

 

一つだけ、この40年間で変わらないことがあります。中国による台湾の侵略は米国の利益にそぐわないことです。

もし米国が中国のその様な武力行使に対応できない場合、アジアの他の友好国、日本や韓国も米国は信頼できず、この地域から撤退していると理解するでしょう。

彼らは中国に接近していくか、核武装を検討開始するでしょう。

 

トランプ大統領は同盟国との関係において、不安の種を播きました。

彼はNATOの価値に疑問を投げかけ、シリアにおけるパートナーであったクルド人を見捨て、ドイツや韓国で駐留米軍を減らすと発言しました。

この様な動きをみた習主席が、米国は台湾も見捨てるのではないかと期待するリスクがあります。

 

従い、早急に米国は大統領の声明及びそれに付随する大統領令を持って、台湾に対する方針を明確にする必要があります。

米国が台湾の独立を支援しない事を明確にした上で、中国の台湾への攻撃を容認しない事を明らかにすべきです。これは一つの中国というセオリーと矛盾しません。

これは米国が台湾を承認したり、台湾と結ぶ条約ではありません。米国の一方的な誓約です。

但し声明だけでは不十分です。米国は抑止力を強化する措置と組み合わせる必要があります。

地域の軍事力を増強し、台湾問題を国防省にとって最優先事項にする必要があります。

 

中国共産党は、持続的な経済成長によって人心をつなぎとめています。

従って、台湾に対して武力行使することは中国の継続的な成長を危険にさらすことになることを米国は明確に示すべきです。

台湾を攻撃した場合、中国に厳しい制裁を課す法律を米国議会は可決すべきです。

習主席は香港に対して迅速に動きましたが、米国が台湾を守るとの明確な声明を発表し、これを関連する措置を講じた場合、彼は台湾に武力行使する前に熟考する筈です。

彼の判断は、共産党の一党支配を維持したいという考えに動機づけられています。

台湾を中国に「統一」するために失敗すれば、共産党の支配を危険にさらすことになるのであれば、習主席は思いとどまるでしょう。

抑止力の強化は、このようにして台湾海峡の危機を防ぎ、戦争の可能性を低下させ、米中関係をより強固なものにするでしょう。

米国が台湾の防衛に参加する必要がないことを保証する最善の方法は、中国にその準備ができていることを知らせることです。

台湾海峡で何が起きるか、何が起きないかで、アジアの将来が決まるかもしれません。

習主席の野望

この論文を書いた著者は米国外交問題評議会の会長のRichard Haassです。

外交問題評議会は、超党派のシンクタンクで米国の外交政策に対して、大きな影響力を持つ組織として知られています。

その様な組織の会長が台湾を守るべきとの姿勢を明らかにせよと言っているのですから、民主党も含めて、台湾を中国の攻撃から守るというのは米国政界のコンセンサスになっている様に思われます。

彼の指摘はごもっともで、もし台湾を米国が守らなかったら、日本も米国のアジア地域における本気度を疑う事になり、より中国よりのスタンスをとるでしょう。

その意味では、今回の台湾問題に対する米国の判断は将来の試金石になるかも知れません。

一つ不安に思われるのは、米国が台湾を守るとの姿勢を明らかにしたところで、習主席が簡単に折れるかというポイントです。

歴史上、台湾は清の康熙帝が征服しました。康熙帝は長い中国の歴史上、最賢帝と評価される皇帝ですが、軍事面でも抜群の実績を残しており、台湾併合はその一つです。

習主席は毛沢東を超える事を望んでいると言われていますが、ひょっとすると康熙帝を超える事をめざしているかも知れません。

もしそうだとすれば、簡単に台湾併合を諦めない可能性があります。政治家の名誉欲は際限がありません。

日本を含めた米国の同盟国は周到な準備をして、臨む必要があると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。