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金融界に革命を引き起こすか - フィンテック企業の将来

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フィンテック企業の快進撃

先日、中国のフィンテック企業Ant Groupについて書きました。

近々上場される同グループはサウジの巨大石油会社アラムコの企業価値を上回るのではと言われていますが、フィンテック企業の快進撃は中国にとどまらず、世界中で同じ現象が起きている様です。

そもそもフィンテックとは何でしょうか。

一言で言えば「最新のIT技術を駆使して、ユーザーに安価で便利なサービスを提供する新しい金融業」と言えるでしょう。

その領域は従来の銀行業に留まりません。

保険、証券、資産運用アドバイスなど多岐に亘ります。

英誌Economistが「How digital surge reshape finance』と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要旨

2012年、デビッド ベレス氏はブラジルで銀行口座を開設しようとしました。

「それは刑務所に行くようなものでした」と彼は言います。

1時間も待たされた後、彼は店員からの質問攻めにあいました。

年に数百ドルの費用がかかる口座が開設されるまでに5か月かかりました。

翌年、彼はブラジルの理不尽な銀行寡占を終わらせるべく、デジタル銀行であるNubankを設立しました。

2020年初頭に、この銀行の企業価値はは100億ドル(一兆円)と評価されました。

その後、コロナ感染が拡大し、これはオンライン銀行への追い風となりました。

今年だけでも、Nubankの口座数は50%増加し、合計で3,000万になりました。

6月には、ブラジルに1億2,000万人のユーザーを抱えるWhatsAppと提携し、メッセージアプリを通じて支払いを提供しました。 1

1月、ブラジルはオープンバンキングを実施します。これは、フィンテックが銀行、証券会社、保険会社が保有するデータにアクセスできるようにする改革です。

 

コロナ感染の拡がりが小売業の変革を加速させているように、今年のデジタル決済への移行は劇的でした。

専門家は、世界中のキャッシュレス取引のシェアが2〜5年で到達すると予想していたレベルまで一気に上昇したと考えています。

アメリカでは、4月にモバイルバンキングの扱いが85%増加し、オンラインバンキングの登録数が200%増加しました。

一部の企業はデジタル化の波に乗り、他の企業は取り残されます。

従来の銀行は現在、世界の銀行および決済業界の市場価値全体の72%しか占めておらず、10年前の96%から減少しています。

Ant GroupやPayPalなどのフィンテック企業は11%を占めており、その市場価値は今年ほぼ2倍の9,000億ドル近くになりました。

Visaなどの従来型のノンバンク決済会社も活況を呈しており、業界全体の残りの17%を占めています。

 

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主な金融会社の時価総額推移(出典:Economist)

デジタル化の加速は、支払いで最も顕著です。

消費者は、P2P(Person to Person)サービスを使用して、親戚に送金したり、オンラインでフィットネスクラスを購入したりしています。

デジタル化は、他の金融分野でも進んでいます。

何百万もの世帯がオンラインで株に投資しました。

一方、保険の販売を代理店に依存していた保険会社は、オンラインでの販売を始めました。

デジタルラッシュの真っ只中で、。銀行、オンラインショッピング、フィンテック、ソーシャルネットワーク、タクシーアプリ、携帯通信会社はすべての「プラットフォーム」になることを目指しています。

シンガポールで最も人気のあるモバイルウォレットに成長したライドシェアアプリであるGrabは、銀行、保険会社、その他の金融会社と60を超える提携関係にあります。

彼らは、東南アジアの金融ニーズを満たす「ワンストップ プラットフォームになりたい」と述べています。

「勝者が全てを取る」法則がこの分野でも適用され、最も人気のあるプラットフォームが圧倒的に多くのユーザーを引き付けると予想されています。


利益の多くは、長い間お蔵入りしていたデータを再利用し、活用する機能からもたらされる可能性があります。

ユーザーの行動の全体像を把握している企業は、夢の実現のために貯蓄する方法などを提案するアルゴリズムを使用したいと考えています。

これにより、プラットフォームがさらに人を引きつけ、さらに多くの金融商品を推奨できるようになります。

金融当局の考え方次第で、フィンテック企業の行動範囲は規定されます。

米国の様に既存の銀行やクレジットカード会社が優遇されている国では、フィンテック企業は既存の金融インフラに依存せざるを得ませんが、中国の様にフィンテック企業に自由裁量が与えられれば、Ant Groupの様な会社は金融のスーパーマーケットになり得ます。

各国の金融当局の考え方にもよりますが、フィッテック企業が伸びる余地は世界中に十分あり、今後もフィッテック企業の勢いが留まる事はないでしょう。

日本のフィンテックの将来は

最近、デジタル化、規制緩和が日本でも叫ばれる様になりましたが、日本の現状は他国に比べて遅れています。

例えば、キャッシュレス化について他国と比較してみましょう。(下図ご参照)

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各国のキャッシュレス化推移(出典;Economist)

日銀発行の紙幣が幾ら信用があるからと言っても、上のグラフはお恥ずかしい限りです。

デジタル化、規制改革を一丁目一番地の政策として推進する現政権は、本気でこの問題に取り掛かって頂きたいと思います。

もたついていると心配なのは黒船の来襲です。

アップルは既にクレジットカードサービスを米国で開始しましたが、一番心配なのはアマゾンが日本で金融サービスを開始する事です。

アマゾンカードで購入すれば、アマゾンの商品が1割値引きになるなんて事になると、雪崩を打ってアマゾン銀行に口座を作る事になるでしょう。

アマゾン保険、アマゾン証券それぞれ顧客を容易に獲得するでしょう。

日本のメガバンクも本気で改革に取り掛かる必要があるでしょう。為替手数料が1ドル1円掛かるなんて時代遅れと思います。

黒船が来ないと変わらないのが、日本人の習性ですが、もたもたすると本当に国を乗っ取られかねません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。