MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

アマゾンに反撃を開始した小売業界

f:id:MIYOSHIN:20210821200726j:plain

アマゾンは無敵か

アマゾンはコロナの感染拡大によって大きな利益を享受した企業の一つと言われます。

ロックダウンともなると近くのコンビニやスーパーに行って買い物するのも一苦労ですから、自宅まで届けてくれるアマゾンのサービスは貴重ですし、人々の生活を維持する上で重要なインフラとしても評価されたと思います。

どの国でもアマゾンの小売業におけるシェアは拡大した様ですが、しかし、その数字は当初予想されたものより小さかった様です。

それどころか米国ではウォルマートなど伝統的な小売業者の健闘が目立った様です。

小売業で何が起きているのでしょうか。

英誌Economistが​​「How American retailers have adapted to the Amazon effect」(アメリカの小売業者がアマゾンに対抗したやり方)と題した記事を掲載しました。

Economist記事要約

パンデミックの衝撃から立ち直った後、ワクチン、景気刺激策として配布された小切手、そして彼らの本能的な強気に刺激されて、アメリカの消費者は今年初めに活発な消費活動を行いました。

今、彼らの熱意は衰え始めています。

7月の小売売上高は前月より1.1%減少しました。

しかし、消費が落ち着きを取り戻したとしても、支出のパターンが変化したことは明確です。

1つの変更はよく知られているeコマース取引の増加です。

もう1つはあまり馴染みがない事実です。

アマゾンによって全滅させられるはずだった業界が立ち直りました。

 

2017-19年は、「小売業の衰退」の話でもちきりでした。

コダックがデジタル写真革命に適応できず、最終的に破産したように、eコマースの着実な増加とAmazonの新製品への絶え間ない拡大により、従来の小売業者は絶滅の危機に瀕するのではないかという懸念がありました。

第二次世界大戦後に郊外のショッピング文化の台頭を導いたシアーズが2018年に破産を宣言したとき、より多くの大規模小売業者が同じ運命を辿るのではと思われました。

物事はかなり異なった結果になりました。

JPモルガン・チェース銀行によると、パンデミックは確かにeコマースへのシフトを加速させ、2018年の全体の14%から今年は20%に上昇しました。

過去数ヶ月で成長のペースは鈍化しましたが、過去に戻ることはありません。

 

その間、業界の構造は異なって見え始めています。

アマゾンは確かに成長しました。

eコマース市場におけるシェアは全体で約40%です。

ショッピングセンターは以前と同じ数の訪問者を引き付けるのに苦労しており、一部は債務不履行に陥っています。

それにもかかわらず、Amazon以外の小売業者はかつてよりも健全に見えます。

たとえば、米国の上場小売業者の市場価値は2.5兆ドルで、2018年の初めより88%高くなっていますが、純債務負担の合計は2019年の終わりから縮小しています。

小売業で雇用されている人の数は2017年の戦後のピークをわずか4%下回っているだけです。

 

これらの数字の背後には、3つのタイプの反論があります。

まず、最大の小売業者はデジタルの世界を受け入れています。

今週、ウォルマートは、グローバルなeコマース 取引の収益が通年で750億ドルに達すると予測しました(会社の総売上高の約13%)。

ライバルのTargetも同様のサービスを推進しており、デジタル販売は現在、全体のほぼ5分の1を占めています。

 

2番目の反論は、Amazonの様なオンライン販売業者としてのライバルの存在です。

老舗のeBayは長年苦戦してきましたが、顧客企業がオンラインで販売して注文を処理するのを支援するShopifyは、アメリカのオンライン販売のシェアが9%に達し、市場価値が1,880億ドルに急上昇しました。

 

最後に、いくつかのブランドが直接流通を管理しています。

ナイキは2019年にAmazonでの直接販売を停止し、代わりに独自のアプリとプラットフォームを通じて消費者に直接アクセスしました。

そのデジタル売上高は、5月までの1年間で3分の2増加し、全体の20%になりました。

 

小売業界のドラマからはいくつかの教訓が得られます。

デジタルの混乱に直面している他の業界の企業にとって、鍵となるのは実験と投資です。

ウォルマートが、アマゾンへの反撃を開始するまでには、無数の失敗したプロジェクトがあり、設備投資を40%引き上げました。

独占禁止法の規制当局は、最新の状態を把握する必要があります。

彼らがビッグテックへの規制を急いでいる様ですが、eコマース市場が彼らが認識しているよりもダイナミックであるという事が証明されています。

 

実験の波はおそらく続くでしょう。

多数の顧客を抱える新しい決済アプリやソーシャルメディア企業はeコマースに進出しており、小売業者はオンライン広告やエンターテインメントに移行しています。

アメリカの消費者とその労働者にとって良いニュースは、競争がアマゾンの衝撃と相まって活性化し、世界の終わりではなく、より革新的な産業につながったことです。

独占禁止法の重要性

私もアマゾンを愛用しています。

Amazon Primeは強力な武器であり、ユーザーにとって最も使いやすいインターフェイスとあいまって、今後も世界のeコマース市場においてリーダーである事は間違いありません。

しかし、ライバルも対策を打ってきており、ナイキの様に一部のメーカーは、アマゾンを通さない販売方法を行う様になっています。

資本主義社会の強みは、市場社会における競争が革新的なサービスを生む原動力となっている事だと思います。

一方で、資本主義社会の欠点は、市場をコントロールする様な巨大企業を生み出しやすい事であり、この意味で市場経済の活力を生かすも殺すも独占禁止法規制当局の判断にかかっていると言えるかも知れません。

くしくも中国でもアリババの様なビックテックに対する締め付けが厳しくなっていますが、巨大企業の管理の匙加減は体制の差異にかかわらず、難しい様です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。