技術革新の時代到来か
昨年2020年は新型コロナに振り回された一年でしたが、2020年代というのはどの様な10年になるのでしょうか。
新型コロナは社会に大きな損害をもたらしました。
一方、その過程でテレワークやオンラインショッピングなど社会のデジタル化を加速させました。
社会様式を変えるだけのインパクトを感染症は持っていたという事になります。
今後10年間がどうなるかについて、英誌Economistが「Why a dawn of technological optimisum is growing」(何故テクノロジーの夜明けに関する楽観論が高まっているのか)と題して記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
過去10年間、イノベーションの成長速度は多くの経済学者を失望させました。
生産性の伸びは鈍く、最も人気のある新しい発明であるスマートフォンとソーシャルメディアはあまり役に立たなかったようです。
強力な独占企業の出現や世論の撹乱など、それらの副作用が痛々しいほど明らかになりました。
自動運転車などの有望なテクノロジーは行き詰まった様に見えます。
タカ派は権威主義的な中国が西側を追い越そうとしていると警告し、一部の悲観的な人々は世界がついに有用なアイデアを使い果たしていると警告しました。
しかし、今、技術的な希望の夜明けが始まっています。
新型コロナワクチンは予想されたより遥かに速く開発されました。
目覚ましい進歩、技術投資ブーム、パンデミック時のデジタル技術の採用が組み合わさって、新しい発展の時代への期待が高まっています。
楽観主義者は「華々しい20年代」を予測しています。
この10年間で癌治療などに多くの進歩が見られたため、技術的ユートピアの予想は誇張されがちですが、特に政府が新しいテクノロジーの発展を支援する場合、生活水準を引き上げる可能性のあるイノベーションが現実になる可能性があります。
資本主義の歴史では、急速な技術の進歩が当たり前でした。
18世紀は機械化された工場が産業革命をもたらしました。
19世紀には鉄道と電気。 20世紀には自動車、飛行機、近代医学、洗濯機のおかげで女性が解放されました。
1970年代には、進歩は一旦鈍化しましたが、1990年代にパソコンが採用された後、効率が大幅に向上しました。
しかし、2000年以降、成長は再度鈍化しました。
この「停滞の時代」が終わろうとしていると考える理由は3つあります。
1つ目は、変革の可能性を秘めた発見の急増です。
ファイザー-BioNTechおよびモデルナワクチン開発の原動力となった「メッセンジャーRNA」技術の開発、および患者に特化した抗体治療の成功は、科学が医学に如何に力を与え続けているかを示しています。
人間は、病気の治療、遺伝子の編集、実験室での肉の生産など、生物学を自分の意志に合わせて応用する事ができるようになっています。
人工知能はさまざまな状況で印象的な進歩を見せています。
Alphabetの一部であるDeepMindによって作成されたプログラムは、タンパク質の形状を予測する優れた能力を示しています。
昨年の夏、Openaiはこれまでで最高の自然言語アルゴリズムであるgpt-3を発表しました。
そして10月以来、無人タクシーがアリゾナ州フェニックス周辺で一般市民を運んでいます。
再生可能エネルギーの価格が大幅に下落したことで、政府はグリーン投資が報われると確信しています。
中国でさえ、2060年までにカーボンニュートラルを約束しています。
楽観的な理由の2つ目は、テクノロジーへの投資が急増していることです。
2020年の第2四半期と第3四半期に、アメリカの非住宅民間部門は、10年以上ぶりに、建物や産業機器よりもコンピューター、ソフトウェア、研究開発(r&d)に多くを投資しました。
政府は科学者により多くの現金を与えることに熱心です。
何年にもわたって縮小してきた24か国の公的研究開発費は、2017年に再び増加し始めました。
テクノロジーに対する投資家の熱意は、現在、医療診断、ロジスティクス、バイオテクノロジー、半導体にまで及んでいます。
テスラの社長であり、ロケット会社も経営しているイーロン マスクが世界一の金持ちであるという事が市場の楽観的な見方を反映しています。
三つ目の理由は、新技術の急速な採用です。
労働者がビデオ会議に参加し、消費者が電子商取引に参加しただけではありません。新型コロナ感染は、デジタル決済、遠隔医療、産業オートメーションの採用を加速させました。
逆境はしばしば社会を前進させることを思い出させてくれました。
気候変動との戦いと米中の大国間の競争は、さらに大胆な一歩を踏み出させる可能性があります。
残念ながら、イノベーションは経済が成長する際の構造的な問題を解決しません。
社会が豊かになるにつれ、自動化が難しいために生産性の向上が不十分なレストランでの食事など、労働集約的なサービスに収入の大部分を費やしています。
人口の高齢化は、労働者を生産性の低い在宅ケアに引き込み続けるでしょう。
グリーンエネルギーが化石燃料よりも安くなる可能性がない限り、脱炭素経済は長期的な成長を後押ししません。
それでも、イノベーションの新たな波が、21世紀に経済のダイナミズムを生む事が期待できます。
それは生活水準の大幅な上昇につながります。
ヘルスケアや教育を含む多くのサービス産業は、イノベーションから大きな恩恵を受けるため、さらに多くのことが達成可能です。
最終的には、合成生物学、人工知能、ロボット工学が、すべてのことが行われる方法を覆す可能性があります。
最終的にどのイノベーションが成功するかは民間セクターが決定しますが、政府も重要な役割を果たします。
彼らは、より多くの大型プロジェクトでリスクを負う必要があります。
国は、研究開発に対してより多くの助成金を提供すると共に、イノベーションが経済全体にどれだけ急速に拡散するかに大きな影響を及ぼします。
政府は、規制とロビー活動が改革を遅らせないようにする必要があります。
これは、一部には、それによって生計を立てている人々に適切なセーフティネットを提供することを含みます。
イノベーションは一握りの企業に集中します。
経済全体が新しいテクノロジーを利用することを保証するには、強力な独占禁止法の施行とより緩い知的財産制度が必要になります。
政府がこの課題に立ち向かえば、より速い成長とより高い生活水準が達成できます。
2020年代は苦痛の叫びから始まりましたが、適切な政策があれば、今後10年まだ明るい未来を切り開く事ができます。
日本はこの波に乗れるか
翻って日本はこの時代の流れに乗っていく事が可能でしょうか。
正直言ってかなり心配です。
日本では変革に対して、常に抵抗があります。
その抵抗勢力、守旧派と言っても良いかもしれませんが、なかなか手強いので、改革勢力は常に押し戻されてしまいます。
日本の歴史を振り返ると、思い切った改革が行われた時期が2回あります。
それは明治維新と終戦直後です。
二回とも旧来の支配層が外圧によって取り除かれ、30代、40代の若いリーダー達にバトンタッチされ、改革が成功しました。
要するに黒船の来襲や敗戦といった大きな外圧が掛からなければ、日本は変わらないのです。
印鑑を廃止しようという運動一つとってみても、印鑑保護団体の様な圧力集団が登場して、骨抜きにしてしまうのを見ていると、かなり日本の将来は厳しいなと思います。
しかし、日本の次世代の事を考えれば、年配の人も含めて改革を応援する姿勢が必要と思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。