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アメリカにBBCは必要か

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政治的に偏った米国メディア

大統領選挙を巡る米国メディアの偏った報道ぶりは、我々日本人には理解しがたいものでした。

CNNFox Newsは民主、共和候補の応援団とばかり、それぞれの支持者に猛烈なキャンペーンを行いました。

大統領選挙期間中、米国のメディアは偏向報道が目立つので、私もしばらくの間敬遠した程です。

これに対して、英国のメディア特にBBCは比較的中立な報道を維持しており、当時米国選挙のネタに関しては、主に欧州から引っ張ってきたことが多かった様に記憶します。

米国メディアの党派性については、さすがに米国内でも問題としてされている様で、米誌Foreign Policyが「The United States Needs a BBC」(米国もBBCを必要としている)と題する記事でこの問題を取り上げました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要約

2020年7月、BBCはいくつか注目すべき数字を発表しました。

過去12か月で、4億3800万人がBBCニュースに、3億5100万人がBBCワールドサービスに、1億3700万人がBBCグローバルニュースを視聴し、 3つのチャンネルすべてが2桁の成長を記録しました。

米国の報道機関やオンラインメディアとは異なり、BBCはビジネスモデルとして政治の二極化に依存していないことを考えると、この数字は驚くべきものです。

 

何年にもわたる偏った報道に悩まされている米国は、注意を払うべきです。

国が今必要としているのは、公共ニュースかもしれません。

法的に中立を義務付けられている英国独自の公共ニュースであるBBCが上記の数字を発表したとき、BBCの会長は次のように説明しました。

「我々は紛れもなく英国最強のブランドであり、 品質と正確さの代名詞です。」

確かに、それは視聴者が最も切望しているものです。

 

アメリカの視聴者はドラマや誇張が好きだと主張する人もいるでしょう。

しかしオックスフォード大学のロイタージャーナリズム研究所によると、むしろ、アメリカ人の60パーセントは中立的なニュースを望んでいるそうです。

アメリカ人の56%がBBCを信頼できると感じているため、BBCはアメリカで最も信頼されている海外通信社となっています。

BBC Newsのアメリカ人視聴者は5,000万人に達しており、英国以外では、米国よりも多くの視聴者を抱えているのはインドだけです。

実際、偏向が話題になっている一方で、事実に基づくニュースが欲しいという点では、アメリカ人は他の多くの国とそれほど変わらない、とオックスフォードの研究者たちは分析しています。

自分の見解を共有するニュースを好むのか、それとも見解のないニュースを好むのかを尋ねられたとき、ドイツ人の80%が中立的なニュースソースを好むと答え、日本人の78%、英国人の76%がそうでした。

 

アメリカ人の大多数は中立的なニュースを望んでいますが、彼らはそれを得る環境にありません。

穏健な共和党員であるベンサス上院議員は、この状況を嘆き、より多くの視聴者を得ようとするメディアの商業主義が Fox Newsや、One America Newsを片方に、もう一方としてMSNBC、CNN、およびNew YorkTimesを動かしていると主張しています。

「不正選挙との戦いであろうと、地元の警察署の廃止であろうと、メディアはますます激しく、視聴者を煽り、高い視聴率を得ようとします。」と語ります。

しかし、イデオロギー的にはっきりした聴衆を獲得することは、対立する人々から信頼を失う事を意味します。

BBCはアメリカ人の56%、ローカルニュースは60%の信頼を得ていますが、米国の全国局であるCBCとABCは51% CNNは47%しか得られていません。

 

オックスフォード大学の調査によると、英国では、過去数年間にBBCへの信頼が徐々に低下しており、欧州の他の国でも公共放送局は同様の傾向を記録しています。

それでも、これらの国の一般市民は、少なくとも、事実に基づくニュースを低料金で入手することができます。

多くのヨーロッパ諸国はここ数十年、激しい選挙を戦ってきましたが、結果の正当性に異議を唱える国内の反乱を経験した国はありません。

 

アメリカの偏向したメディアに対する明らかな解決策は、より多くの公共サービスのニュースです。

二極化に煽られる悲惨さを軽減することはすべての人の利益になることを考えると、ソーシャルメディア企業、報道機関、および政府は、1つ以上の公共サービスの報道機関、つまり非営利の質の高い報道機関に資金を提供するために力を合わせる必要があります。

これは、無料で、中立性を約束します。

そのような努力には、地元メディアへの支援が含まれるべきです。

2005年から2020年の間に、アメリカの9,000の地元新聞の内、25%が破産しました。アメリカで最も信頼されているニュースソースは消えつつあります。


公共サービスの実現は難しいかもしれません。それでも、アメリカの偏向したメディアが国に害を及ぼしていることは明白です。

新型コロナ感染が拡大する中、オックスフォード大の研究者たちは、米国の偏向したテレビやWEBサイトへのアクセスが減少していることを発見しました。

新型コロナの報道に、視聴率を拡大させる政治的メッセージが含まれていない事を考えると、この現象には誰も驚きません。

米国の商業主義の落とし穴

米国は資本主義を代表する国ですが、時にその商業主義が弊害を生みます。

今回の大統領選における混乱は、トランプ大統領をはじめとする政治家の責任ももちろんありますが、リベラル、保守双方のメディアの責任も大きいと思います。

私も、NHKの信者ではありませんし、NHKの受信料はいつも高いなと思います。しかし、客観的にみて、NHKの党派に左右されない中立性は、視聴率に左右されない公共性から生まれていると思います。

上記論文の指摘する通り、米国でBBCの様な公共放送局を作り出す事は大変難しいと思いますが、商業主義に染まったマスコミは国民の対立を更に煽りかねません。

新政権がこの問題に的確に対処してくれる事を祈ります。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。