保守化する若者
多くの国で、若い有権者はリベラルに傾くのが普通でした。
しかし最近、この傾向が必ずしもあてはまらなくなりました。
日本でも若い人の与党の支持率は意外に高くなっています。
お隣の韓国も同様で、若い人の保守化が目立っている様です。
しかし、韓国の場合、若い男性の保守化が極端に高まっているのが特徴の様です。
その原因について米紙Foreign Policyが「Why So Many Young Men in South Korea Hate Feminism」(韓国でフェミニズムを嫌悪する若い男性が増加するわけ)と題した論文を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Foreign Policy論文要約
若い有権者は、保守的な韓国大統領朴槿恵の弾劾と追放につながった2016-2017キャンドルライト闘争で重要な存在でした。
朴氏の弾劾に続く自由党政権の初期には、強力な若者の支持が引き継がれました。
2017年6月に行われた韓国ギャラップによる文在寅政権の最初の世論調査では、20代の90%が大統領を支持し、全体の支持率の81%を上回りました。
しかし、わずか4年後、5月の世論調査では、若者の支持率はわずか31%でした(全体的な支持率は34%)。
20代の女性の間では、リベラルな文政権への支持は37%であり、全体的な支持率を若干上回っていましたが、20代の男性では、17%とひどいものでした。
これは、年齢と性別で分類されたすべての人口統計の中で最低です。
言い換えれば、20代の韓国人男性は、60歳以上の男性よりも保守的な見方をしているという事です。
若者の失業は、急激な右傾化の理由の1つです。
全体として、文政権は約4パーセントの低い失業率を維持しています。
しかし、2000年代には7〜8%だった30代未満の失業率は、2014年には9%以上に上昇し始め、今日までそのレベルにとどまっています。
しかし、厳しい雇用市場は若い男性よりも若い女性により大きな影響を与えているのですから、高い失業率は若い男性だけが保守化している理由を説明していません。
この問題に焦点を当てた韓国の専門家は、若い韓国人男性の間に見られる歪んだ実力主義と女性嫌悪の崇拝という2つの傾向を指摘しています。
韓国が繁栄した自由民主主義になり始めた1990年代後半に生まれた若い韓国人は、朝鮮戦争や民主主義のための軍事独裁者との戦いなど、より古い世代が経験した歴史的闘争についてほとんど知りません。
代わりに、彼らの闘争は一連の試験にあります:高校の入学試験、大学の入学試験、そして高給で安定した仕事のための入社試験。
彼らは、悪名高いハグォンと呼ばれる塾のシステムで、人生のほとんどを受験の準備に費やしてきた世代です。
その結果、若い韓国人はそれらの試験の論理を内面化し、貧しい人々が自分の苦しみのせいにする一種の歪んだ道徳的感性を身に付けました。
20代の韓国人男性のもう1つの特徴は、攻撃的な女性嫌悪です。
確かに、韓国では性差別は長年の問題でした。
しかし、この世代の性差別のバージョンは、マッチョと厳格な性別の役割を特徴とする父親のより伝統的な性差別とは異なる性格を帯びています。
年配の韓国人男性が自分たちを女性を監督する家長と見なす一方、若い韓国人男性は自分たちをフェミニズムの犠牲者と見なします。
この問題を調査したチョン氏は、調査結果が、若い男性が家父長制に伴う特権と義務の両方を拒否したことを示したと述べました。
代わりに、調査は、彼らのバージョンがフェミニズムに対する過度の敵意によって特徴づけられたことを示しました。
20代の韓国人男性の58.6パーセントはフェミニズムに強く反対すると語りました。
韓国の女性は依然としてかなりの差別に直面しています。
たとえば、エコノミストによる最近の調査では、韓国は、教育、賃金、管理職の男女格差を測定するガラスの天井指数で、先進国の中で最低の位置にありました。
それでも、韓国の若い女性は近年着実に成長しています。
たとえば、大学に通う女性の割合は、2009年以降、男性の割合よりも高くなっています。
教育を受けた若い女性は、韓国のフェミニスト運動に新しいエネルギーをもたらしました。
若い男性は、女性の仲間を、平等を達成したにもかかわらず、優遇措置を受け続け、実力主義を傷つける脅威と見なします。
言い換えれば、若い男性は、自由市場を支持したり、福祉国家に反対したりするという意味で保守的になったわけではありません。
男性が性差別に基づいて構造的な不利益に直面していると信じているのです。
当然のことながら、彼らは文政権を支持していません。
彼らは、文政権を、企業に女性幹部の数を増やすよう奨励したり、内閣の少なくとも30%に女性を任命することを約束したりするなどフェミニズムに優しすぎると見ています。
このグループには現在、政治的リーダーがいます。
6月11日、韓国の保守的な野党である国民の力党は、36歳の評論家李俊錫を党首に選出しました。
彼の選出は異例でした。
彼は国政選挙で当選した事が一度もありません。
しかし、彼の世界観は男性支持者の強い支持を得ています。
李氏は、ソウル市長補欠選挙での党の勝利を分析し、与党が「20代と30代の男性の投票力を過小評価し、フェミニズムを強く支持した」ために敗北したと語りました。
朴元大統領の弾劾を受けて、韓国の保守党は漂流し、ソウル市長補欠選挙に勝つ前に4回連続で国政選挙に敗れました。
保守党は、今回李氏を党首にするという異例の選択をすることで、女性に対する不満を支持に変えようとしています。
愛の不時着が映し出す世相
Netflixで大ヒット作になった「愛の不時着」ご覧になった方も多いと思います。
このドラマでは、韓国の大財閥のオーナーが出来損ないの息子二人を差し置いて、末娘を後継者に指名したところから、兄二人の妹に対する嫌がらせが始まります。
これも韓国の世相を反映しているという事かと思います。
それにしても、韓国の若い男性がこれほどフェミニズムに反感を持っているとは知りませんでした。
裏を返せばそれだけ女性の社会進出が進んでいるという事かも知れません。
最後まで読んで頂き、有り難うございあmした。