保守派女性候補の参戦
フランスは今年の4月に大統領選挙があります。
現職のマクロン大統領はそれまでの「右派共和党VS左派社会党」という構図に「私は右でも左でもない」と殴り込みをかけた事で知られていますが、現在のところ大統領レースではトップを走っている様です。
ところが気になる強敵が昨年12月に現れました。
それは伝統を誇る共和党の女性候補ヴァレリー ペクレス氏です。
彼女の選挙戦について英誌Economistが「Meet Valérie Pécresse, the French centre-right hopeful - Her campaign is in trouble, but she fights on」(フランスの中道右派のヴァレリー・ペクレスの可能性 - 大統領選挙選で苦労しているが彼女の戦いは続く)と題した記事を掲載しました
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
「うーん、アルデンヌの素敵なバゲット!」 ヴァレリー・ペクレスは、パン屋で買ったばかりのパンを一口頬張ると唸りました。
中道右派の共和党大統領候補であり、現職の知事である彼女は、フランス北東部アルデンヌ地方で最近キャンペーンを行いました。
彼女は村のレストランやカフェをくまなく訪れました。
訪問を受けたレストランのオーナーは「女性の大統領も悪くないね。」と語りました。
ペクレス夫人は12月に党の大統領候補選で勝利した後、4月に予定されるフランスの大統領選で、現職マクロン大統領に対する最も有力な候補として急浮上しました。
世論調査では、ナショナリストでポピュリストのマリーヌ・ル・ペンや、極右のエリック・ゼムールよりも現職大統領に対して決選投票(二回目の投票)で善戦するだろうと予測されています。
しかし、最近、ペクレス夫人の第一回投票での支持は減少し、彼女の選挙活動は行き詰まりを見せています。
ペクレス夫人にとって最大のリスクは、彼女が決選投票に進めない可能性です。
フランスの高級官僚養成機関であるENAの卒業生であるペクレス夫人は、有能で、討論ではタフです。
その上、彼女は聞く方法も知っています。
ただし、スマートでタフで素敵なだけでは不十分な場合があります。
ペクレス夫人は、フランス初の女性大統領を目指しているため、2つの困難に直面しています。
1つ目は、ステージでの聴衆に向けてのパフォーマンスが苦手な点です。
彼女は一対一の対話の方が得意であると告白しました。
もう1つは彼女の政治的立場です。
ペクレス夫人は穏健な欧州主義、中道右派に属しており、かつてはマクロン政権でも登用される可能性があると見なされていました。
彼女は党大会で党の右翼候補であるエリック・チオッティを破ることによって彼女の指名を確保しました。
チオッティ氏は、フランスが外国人移民により乗っ取られるという「大代替論」を唱え、この理論は白人至上主義者によって世界的にスローガンとして採用されています。
彼の支持層を取り込む為、ペクレッセ夫人は、アスリートがイスラム教徒のスカーフを着用して競技することを禁じ、曖昧ですが、大代替論に言及しました。
彼女は、強硬派に転じたとの批判を否定し、ドゴール主義者のシラク元大統領に彼女の血統をたどり、元々、保守派である事を強調しています。
彼女は自分自身を「3分の2はメルケルでの3分の1はサッチャー」と呼ぶフェミニストです。
マクロン氏を「ブレア派」、「左翼リベラル」、「都市の利益を代表する候補者」として批判しました。
しかし、多くの中道右派の有権者は当惑しています。
彼らは、パンデミックの際にマクロン氏の下で急増した公共支出を抑制し、560万人いるフランスの公務員を15万人削減し、定年を62歳から65歳に引き上げるというペクレス夫人の緊縮財政論に惹かれます。
しかし、一方で「制御されていない移民を止める」と唱える彼女のナショナリストの主張と、彼女が「悲惨」と評するマクロン氏の経済政策に対する批判に当惑を隠せません。
昨年フランス経済は、過去半世紀で最も速い速度で成長しました。
これらの矛盾により、ペクレス夫人のキャンペーンは綻びを見せています。
共和党の前大統領であるニコラ・サルコジでさえ、これまでのところ、彼女に公的支援を提供することを拒否しています。
おそらく有権者は、ヴェルサイユ(高級住宅街として有名)に住んでいて、パリ郊外のヌイイ・シュル・セーヌで教育を受けたペクレス夫人との関係を築くのが難しいと感じているのかもしれません。
ペクレス夫人のリスクは、彼女が勢いを失うことです。
ゼムール氏は2つの新しい世論調査で彼女を上回りました。
マクロン氏が立候補を正式に発表すると、支持者の動向が変化する可能性がありますが、ペクレス夫人にとって、残された時間は多くありません。
フランスはアメリカより早く女性大統領を誕生させられるか
この人の経歴を見ると、日本に滞在してソニーのインターンとして働いた事もあり、基礎的な日本語も話せる様です。
彼女が仕えたシラク 元大統領も知日派の大統領で相撲の四十八手を熟知していた事で知られていましたが、フランスのインテリには日本に関心がある人が多い様です。
大向こうを唸らせるパーフォーマンスが苦手な様ですが、マクロン大統領との決選投票に進めればチャンスがあります。
何故ならフランスは右傾化の傾向があり、ほぼ6割の国民が極右を含む保守派になっていると言われるからです。
決選投票になれば、彼女はこの保守派の票を取り込む事が可能となります。
しかし、一回選で右翼候補マリーヌ・ル・ペンや、エリック・ゼムールを上回る必要があり、ここがポイントになると思われます。
彼女がヒラリー クリントンも破れなかったいわゆる「ガラスの天井」を打ち破る事ができるか、これからが正念場です。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。