2023年はトルコにとって選挙の年
ここのところ欧米のメディアはウクライナの話題で持ちきりです。
皆争い事が好きなんですね。
メディアもビジネスですからどうしても視聴率が取れるとか読者の目を引く方に流れます。
国内問題から国民の目をそらしたい各国政府もこれ幸いとばかりに、この話題に飛びついている様な気がします。
という訳で、今日はウクライナから離れて、その対岸に位置するトルコの政治情勢について取り上げたいと思います。
トルコはNATOの同盟国で、黒海と地中海に面する戦略的要衝に位置する国です。
この国は過去20年間実質的にエルドアン大統領に統治されてきました。
議院内閣制であったシステムは途中で大統領制に変わり、現在に至っています。
来年2023年はトルコにとって重要な年です。
大統領選と総選挙が予定されているからです。
トルコの新聞Hürriyetが「Altılı masa’dan açıklama için 28 Şubat tarihi」(2月28日の為に6つの野党党首が集結)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Hürriyet記事要約
前夜、野党第一党CHP党首のクルッチダオル氏の招待を受けて集まった6人の野党指導者は、ロードマップを作成しました。
合意されたロードマップを2月28日に発表することが決定された一方で、クルッチダオル氏はHDP(クルド系の政党)についても「私たちは彼らを無視しているのではなく、話し合っている」と述べました。
5時間15分に及ぶアンカラでの「円卓会議」で、彼らは政権を獲得した際に実現しようとする「強化された議院内閣制」について議論しました。
二度目の党首会談が2月28日に行われる事は事前に予定されていなかったとのことで、今回の党首会談の準備に携わっている情報筋は、「スケジュールは党首の決定に委ねられた。それは私たちにとって驚きだったが、それはクルチュダオル氏の政界引退に沿った一歩と見なすことができる。」と語りました。
「HDPとの協議」
選挙協力の議論について、クルッチダオル氏は「アライアンスが大きくなるのか小さくなるかよりも 重要なことは、国を現在の状態から脱却させる方法が設定されていることです。HDPを無視しません。 そうすれば、それは私たちが民主主義を信じていないことを示すでしょう。 この過程で、私たちは各当事者と話し合い、交渉を続けていきます。」と語りました。
CHPの情報筋は、「共通の原則は明確であり、これらの原則の枠組みの中に入ることを望む人々に門戸が開かれている」というメッセージを与えました。
会議中に、選挙と権力掌握の目標のために、6つの党の間で合同作業部会を形成することも決定されました。
これらのグループの作業領域は、経済、憲法と正義、外交政策、選挙協力と安全保障、そして政権発足後最初の100日と500日の準備とする事が決定されました。
会談後に署名された共同声明の中で、彼らは「トルコが何年にもわたって見たいと望んでいた歴史的な和解と団結のために集まった。」と述べました。
「それは私たちの問題に対して。民主政治の領域を広げ、多元主義に基づいてそれを解決するためです。トルコでは、協議と合意によって解決できない問題はありません。重要なことは、欧州評議会とEUの規範の枠組みの中で基本的権利と自由が保証され、誰もが自分たちを平等で自由な市民と見なし、自由に自分の考えを表現し、自分たちのように生きることができる民主的なトルコを構築することです。今日、私たちは国を代表して『明日のトルコ』を建設するための重要な一歩を踏み出しました。」と述べています。
トルコを左右する大統領選
トルコのエルドアン大統領は強権的と言われ、トルコでは野党に関する記事など紙面に載らないのではと思っておられる方も多いと思いますが、それは誤解です。
確かに、言論の自由が侵害されている部分はありますが、独裁国家ではありません。
メディアも西側ほど自由ではありませんが、上記記事の通り野党の活動についても報道されています。
選挙もかなり公正に行われ、市民の監視が許されています。
でなければ、昨年行われたイスタンブールやアンカラの市長選で与党候補が破れるなどと言う事はありえません。
従って、与党が選挙結果を操作するのはほぼ不可能です。
その様な環境下、エルドアン大統領を党首とするAKP(公正発展党)にとって、今回の野党連合は大きな脅威になると思われます。
今回大同団結した野党の中には、以前エルドアン政権下、首相を勤めたダブトール氏や財務大臣だったババジャン氏が新しく作った党も含まれています。
要するにエルドアン氏の腹心の部下が袂を分かって反エルドアン連合に加わっている訳です。
この野党連合を仕掛けた人物、野党第一党CHPの党首クルッチダオル氏が今回の野党団結を機に政界引退を考えているというニュースには驚きました。
彼が野党の統一候補としてエルドアン氏との大統領選に臨むのではと、筆者は予測していたのです。
好好爺然としたこの政治家、人は良さそうですが、エルドアン大統領の向こうを張って勝てるほどのカリスマ性は備えていません。
彼が今回自らの政治的野心を封印して野党団結を促したとしたら、政治家として立派な決断だと思います。
来年の大統領選どうなるでしょう。
もし野党候補が勝ち、ババジャン氏(エルドアン政権前半期の財務大臣)が経済の司令塔に返り咲く様な事が起これば、トルコリラは急騰すると思います。
先日のブログで「ビッグマック係数」を取り上げ、トルコでは米国の三分の一の価格でビッグマックが買えるとお伝えしましたが、野党が勝てばそうは行かなくなるでしょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。