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Black Lives Matterは米国だけではない - フランス社会の闇

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パリで起きた警官暴行事件

人種間の対立は米国だけの問題ではありません。

多くの有色人種を抱えるフランスなどでも深刻な問題と言えるでしょう。

コロナ感染の拡大は、経済に大きな爪痕を残していますが、真っ先に影響を受けるのは有色人種です。

フランスの有色人種(アフリカ系、アラブ系)の失業率は白人に比べて遥かに高くなっています。

そんな中、フランスで警察が黒人に暴行を加えた事件が発生し、大きな反響を読んでいます。

英誌Economistが「After police are filmed beating a black man, France does a U-turn - A gagging bill that could shield cops is being revised」(黒人を殴打した警官の映像がフランス政府の方針を転換させた。論議を呼んでいた警官を保護する法律は修正される予定だ)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

11月21日、3人の警官がパリにあるレコーディングスタジオに押し入り、黒人のプロデューサーであるゼクレール氏を殴打しました。

マスクを着用していないことを問われたゼクレール氏は、当初、警察に対する暴力のために48時間拘留され、殴打中は「汚い黒人め」と呼ばれたと述べています。

監視カメラに撮られた殴打の動画がソーシャルメディアに投稿されてから4日後の11月30日、意図的な暴力と記録の改ざんを理由に3人の警官は起訴され、警察官として職務停止となりました。

このエピソードはフランス全国に衝撃を与えただけではありません。

マクロン大統領はソーシャルメディアで「恥ずかしい行為だ」と述べ、異例の政策転換を余儀なくされました。

この事件は、警察権を強化するために準備された「一般的な安全保障」法案が議会を通過しようとしている時に起こりました。

11月24日に下院で可決され、次に上院に提出される予定だった法案の第24条は、警察の作戦中に個々の警官を特定する画像を投稿または放送すること及び心理的に彼らに害を及ぼす事を禁じています。

法案がすでに成立していたら、ゼクレール氏への暴行を記録したビデオを投稿することは違法だったかもしれません。

第24条の狙いは、法案をマクロン氏の内諾を得て起草した強硬派の内務大臣であるダルマニン氏によると、物理的に或いはソーシャルメディアを通じて、個人を特定して標的にしようとする試みから警官を保護することです。

フランスの警官は常にインターネット上の脅威にさらされています。

2016年、3歳の息子の前で、警察官が刺殺されました。

捜査官は、加害者のコンピューター上で、警察官の名簿を見つけました。

 

しかし、フランスのメディアやその他の人々は報道の自由を懸念して、この法案に反対しました。

仏紙ルモンドの社説は、第24条を「有害」と呼びました。

マクロン氏の与党も、10人の議員が法案に反対票を投じ、さらに30人が棄権しました。

11月28日、何万人もの人々がフランス中で抗議デモを行いました。

マクロン支持者でさえ、治安問題に関する大統領の右傾化を懸念しています。

 

当初、政府は第24条を守ろうとしました。

しかし、反対意見の高まりに直面して、マクロン氏は11月30日、エリゼ宮殿での危機対策会議で法案を完全に書き直すように命じました。

「それは苦境から抜け出すためのあまり格好の良い方法ではありません」と、与党副党首であるレスキュール氏は語ります。「しかし、少なくともその判断は明確で迅速であり、『申し訳ありませんが、間違っていました。もう一度考え直しましょう』と国民に伝えました。」と彼は付け加えました。

 

マクロン氏の第24条に関する判断は、報道の自由に関する緊張を和らげる可能性があります。

しかし、彼の判断を促すのに役立った出来事、特にゼクレール氏に対する殴打事件は、より長期的な政策対応を必要とするでしょう。

フランスは市民の民族に関するデータを収集していないため、人種差別の規模を知ることは困難です。

しかし、2016年の公式調査によると、「黒人またはアラブ人として認識されている」若い男性は、身分証明書のチェックを受ける可能性がはるかに高いことがわかりました。

フランスの警察による人種差別の問題は少なくとも認識され始めています。

フランス社会の闇は深い

フランスは広大な植民地をアフリカや中東に有していました。

この様な植民地が独立した後も、続々と移民はフランスに流れ込んできており、パリやリヨンなど大都市には大規模なコミュニティーが存在しています。

彼らの多くは第二世代、第三世代となり、もはやアフリカの言葉も喋れませんし、母国はフランスです。

前回のサッカーワールドカップで優勝したフランスチームにおいて、白人はほんのわずかであり、ほとんどがアフリカ系かアラブ系です。

ワールドカップに優勝した時、マクロン大統領は「フランスチームは異なった民族で構成されたフランスを象徴している。」と誇らしげに語りました。

しかし、現実には、フランスは米国以上に民族間の軋轢があると思われます。

そしてそれを助長しているのが、マクロン大統領の最近の言動ではないでしょうか。

欧州においてイスラム教徒が最も多く住んでいるのはフランスで、その数500万人以上と言われています。

マクロン大統領はイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を授業中に生徒に見せた為、イスラム過激派によって殺害された中学教諭の葬儀において、「我々は風刺画をやめない」と語りました。

確かに、フランスは政教分離を国是とする国ですので、大統領でも神様でも風刺の対象になる国ですが、国が2分されている最中に、あえて相手を刺激する様な発言を行うのは如何かと思います。

マクロン大統領の右傾化はかねてから指摘されていますが、その背景には、ル ペン氏が代表を務める右翼政党国民戦線の台頭があります。

国民戦線に自らの支持層を侵食されない為には、マクロン大統領は強硬姿勢を取らざるを得ないのです。

ポピュリスト政党の台頭が政治をおかしくさせているのは世界的傾向の様です。

フランスの迷走は今後も続きそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。