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欧米も認めるトルコの戦略的価値 - トルコ側にも変化の兆しが

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シリア担当米国特使トルコを訪問

トルコは12月4日夜より週末のロックダウンを開始しました。

トルコは欧州と同様にに感染拡大に見舞われていますが、死者数から見ると1日あたり194(12月4日米ジョンズホプキンス大学調べ)に留まり、欧州各国と比べれば抑えられています。

ちなみに同日、イタリアは814人、ドイツは480人です。

トルコ政府が週末のロックダウンを選択した背景には、感染の拡大は抑えたいが、経済へのダメージを最小限に抑えたいという事情があるものと思われます。

そんな中、米国の外交団が、トルコを訪問しました。この背景には何があるのでしょうか。

トルコ紙Hürriyetの関連記事をご紹介しましょう。

Hürriyet記事抜粋

米国特使訪問

シリア担当米国特使であるレイバーン氏はアンカラで、トルコの高官と会談し、インタビューに答えて次の様に語りました。

 

「私たちは時には意見の相違がありますが、最悪の時でさえ、トルコ当局と緊密に協力してきました。結局のところ、私たちは同盟国なのです」

トルコとの協力は、シリアのイスラム国を壊滅させ、アルカイダがシリアで安全な避難場所を持てないようにし、イランとその同盟組織であるヒズボラの役割に対抗するための取り組みの重要な部分です。」

「シリアに関しては、米国とトルコの関心、目標、アプローチが、一部の人々が思っているよりもはるかに重なっているといつも感じています」

 

トルコと米国はシリアの紛争に関して長い間協力してきましたが、シリア民主軍(SDF)への米国の支援は、二つの同盟国の間に亀裂を引き起こしました。

トルコがテロ組織と見なしているSDF(クルド人民防衛隊YPGを主体として結成された)への米国の支援をめぐる両国間の意見の不一致について、レイバーンは次のように繰り返しました。

「米国とSDFとの協力は、イスラム国を完全に壊滅させる為に継続される。」

 

シリアの政策に対する超党派の支援

シリアにおけるトルコとアメリカの協力が、バイデン政権の下で困難になるかもしれないという懸念について、レイバーン氏は「新しい政権を代表して語ることはできないが、現在実行している政策に対する超党派の支がある。」と指摘しました、

「この政策は、イスラム国を敗北させ、イランの活動に対抗し、アサド政権がシリアの人々や近隣諸国に脅威を与えるのを防ぎました」と付け加えました。

 

トルコはイドリブの大惨事を防いだ

 トルコとロシアの合意の下、3月5日に停戦が行われたイドリブ(シリア北西部の県)で、アサド政権による軍事攻撃から300万人をトルコが保護した点について、米国は称賛しました。

 「イドリブの人々に人道的大惨事が生じ、トルコや他国に膨大な数の難民が流れ込むところでした。トルコが行った事はやらなければならない行動でした。」と彼は語りました。

EU代表の発言 

12月4日EU外交政策責任者であるボレル氏は、ローマ地中海対話フォーラムで演説し、次の様に語りました。

「10月1日の前回の欧州理事会で、EU首脳は東地中海の天然資源をめぐる問題に関して、トルコの前向きな関与を模索し、トルコ側からより建設的なアプローチが見られるかどうかに応じて判断することを決定しました。」

 「トルコには地域的な野心があります。一方、トルコはシリアからの350万人もの難民を受け入れており、我々もそれを手伝う必要がある事を理解すべきです。」と彼は付け加えました。

 ボレル氏は、「領海紛争を解決し、EU加盟国の主権を尊重し、ガス田の収入を共有する方法を模索する様トルコ側に求めているが、同様にトルコもそれを模索している。」と付け加えました。

バイデン政権の対トルコ外交はどうなるか

バイデン 氏は、エルドアン氏と個人的な相性は良くないかもしれません。

しかし、米国が外交目標を効率的に追求する為には、NATOの一員であるトルコは欠くべからざる存在です。

地政学的に言えば、黒海と地中海に面し、ヨーロッパとアジアの結節点にあたるトルコは戦略上極めて重要な位置にあります。

バイデン 氏は中国よりもロシアに厳しいと言われていますが、ロシアの南下政策を押さえ込む上で、黒海から地中海への出口にあたるトルコは極めて重要です。

米国の軍事リソースは限られている上に、インド太平洋地域へのシフトが始まっています。

その様な状況下、バイデン 政権はこの地域で大きな影響力を持つトルコとの関係を悪化させる事は難しいでしょう。

トルコの協力なくして、シリアやイラクやアゼルバイジャンなどの問題は解決できません。

一方、トルコ政府にしても、米国との関係悪化は避けたいところです。

今回の米国特使アンカラ訪問も、トルコ政府の要請で行われた可能性があります。

EUにもトルコとの関係を正常化しようとの動きが見られます。

EUにしてみると、トルコは中東からの難民の防波堤になっており、トルコとの関係悪化は、膨大な難民の欧州流入に繋がりかねないのです。

 こうやって見ていくと、トルコの役割は米国、EUにとって非常に重要であり、これから多少の紆余曲折はあるかも知れませんが、対ロシア、対イラン、対イスラム原理主義テロ組織といった観点から、欧米はトルコとの関係を重視せざるを得ないと思います。

ご関心のある方は、以前のブログ「バイデン 政権はトルコにどう向き合うべきか」をご参照ください。

 

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