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西側への不信感が影響したトルコ大統領選

予想に反して得票を伸ばした大統領

トルコの大統領選挙が14日に行われました。

選挙前の世論調査の結果を覆して、エルドアン大統領が第一回の投票で第一位となりました。

決定戦が28日に行われる予定ですが、エルドアン氏の優位は揺るぎそうもありません。

第一回の選挙結果に関して、米誌Foreign Policy論説委員のEmma Ashford氏とMatthew Kroenig氏が対談しました。

その内容をかいつまんでご紹介したいと思います。

西側の人たちのトルコに対する見方が良くわかる対談となっています。

Foreign Policy対談要約

Emma Ashford(以下EA):エルドアン大統領がトルコの有権者から見放されるだろうと期待したのは間違いだったのでしょうか。?

 

​​Matthew Kroenig(以下MK): 間違っていたと思います。

エルドアン氏は過半数には達しなかったものの決選投票に進むことになり、そこで勝利を収める可能性が高い。

もしそうなら、それはトルコにとっても、そして潜在的にはNATOにとっても悪い結果となるでしょう。

彼の対抗馬であるクルッチダオール氏は、トルコの民主主義の回復とトルコの国際的役割の正常化を約束しています。

決選投票の行方を見守りましょう 。

しかし、米国政府はあと数年間エルドアン政権と付き合う必要があるでしょう。

 

EA: 他の候補者とは異なり、少なくともクルッチダオール氏は決選投票まで残りました。

しかし、選挙期間中に彼が直面した障害は深刻でした。

トルコの主要メディアはエルドアン氏を応援し、自宅の台所でインターネット用のホームビデオを作成することになったクルッチダオール氏を無視しました。

 

エルドアン大統領の勝利はバイデン政権にとって良くありませんが、一般的に米国にとってそれほど悪いとは思いません。

エルドアン大統領は常に交渉を好み、利己的な人物です。 理想的な同盟者ではありませんが、彼と協力することはできます。

しかし、バイデン大統領が米国の外交政策として民主主義を強調するという選択をしたことで、トルコとの関係を困難にさせています。

 

MK: そうですね、選挙の結果は米国にとって重要だと思います。

あなたが指摘するように、エルドアン大統領は是々非々ですが、クルッチダオール氏はより親西側、親NATOの外交政策を約束していますので、彼の方が良いです。

しかし、もし最終的にエルドアン氏が勝利すれば、米国はエルドアン氏と協力する以外に選択肢はないと私は考えます。

 

幸いなことに、最も重要な短期的な項目に関しては、それほど大きな違いはないかもしれません。

私が話を聞いたトルコ専門家らは時間がかかるとしても、エルドアン大統領がスウェーデンのNATO加盟を承認すると考えています。

 

あなたはエルドアン氏が地域における唯一の交渉相手だからバイデン大統領は彼と協力すべきだという私の考えに同意しますか。

 

EA: トルコは良い同盟国ではないと思います。

彼らをNATOに加盟させることが素晴らしい考えだとは思えません。

しかし、ここ数年は、この国が依然として地政学上重要な重要性を持っていること(黒海へのアクセスを制御する役割にご注目ください)や、西側諸国と他の当事者との間の調停において重要な役割を担っていることも浮き彫りになりました。

私は米国とトルコの関係を、サウジアラビアとの関係と同じように考えています。

どちらも相互防衛に値するとは思いませんが、トルコの重要性は、米国がトルコとの良好な外交的、経済的関係を維持する必要があることを意味します。

世界のすべての国が「同盟国」である必要はありません。

欧米のご都合主義が同盟国を減らしている

第二回投票でエルドアン氏が勝利する事はほぼ確実と思われます。

上記の対談では、強権的なエルドアン政権がメディアをコントロールしたから野党候補が敗北したと言わんばかりですが、実際は、トルコ国民が持つ欧米諸国への不信感が勝敗を左右したのではないかと思います。

筆者がトルコ滞在を始めた21世紀初頭は、欧米諸国、特に米国との関係がトルコにとっては死活的に重要で、米国が認めない政権は長く続かないとさえ言われていました。

エルドアン氏自身も政権に就いた2003年以降、EU加盟を最重要政策として掲げ、西側への接近を図りました。

しかしイスラム教徒の多いトルコをEUメンバーとして受け入れたくない欧州側から様々な言いがかりをつけられ実現しませんでした。

2015年に生じた欧州難民危機の際には、大量の難民の処理に困ったEUは、トルコに難民をとめおいてもらう様要請します。

これに対してトルコ人へのEU入国ビザ付与を条件にトルコ政府はEU側の要求を受け入れますが、難民問題が片付いた後、EU側はビザ付与の約束を守りませんでした。

この様なEUの自分勝手な行動を前にしてトルコ人たちは徐々に西側に背を向け始めました。

今回の選挙は欧米への接近を唱えるクルッチダオール氏とトルコ独自の立場、トルコ民族主義を唱えるエルドアン氏の戦いでした。

エルドアン氏の勝因は、国民の間にある反欧米意識を的確に把握し、西側に追従するか否かを問うた彼の選挙戦略にあると思います。

トルコの戦略的重要性を考えた場合、今回の選挙結果は国際的にも非常に重要な意味を持つ様に思います。

というのも欧米に対して不信を持っている国はトルコだけではないからです。

グローバルサウスやBRICSという国々は多かれ少なかれ欧米が作った世界秩序に不満を抱えています。

トルコがグローバルサウス側に振れた事は今後他国にも波及する可能性があります。

上記Foreign Policyの対談が示す通り、西側がグローバルサウスの国々を上から目線で捉えたり、自分たちの都合しか考えていないのであればその傾向は強まるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。