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外国人記者から見たGo toトラベル

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東大寺の鹿にも影響を与えた新型コロナ

鳴り物入りで始まったGo toトラベルですが、コロナ感染の再拡大に伴い、大阪や北海道では一時停止されました。

一方、同じ様に感染者が拡大する首都東京では継続されています。

同様のキャンペーンを行っている国はあまりありませんが、外国人はこの制度をどの様に評価しているのでしょうか。

英誌Economistが「A crash in tourism leaves Japanese deer ravenous for treats」(観光業の崩壊は日本の鹿をおやつに貪欲にさせる)と題する記事を掲載しました。

このタイトルだけでは何を指しているのかよくわかりませんが、奈良の東大寺の鹿が観光客の激減により、コメ煎餅が貰えなくなったというエピソードからGo toトラベルについて論評を加えています。

かいつまんでご紹介しましょう。

Economist記事要約

日本の古都奈良を訪れる1,300万人以上の観光客は、古くからの道をたどるのが普通です。

街の端にある公園に向かう途中、710年に建てられた寺院群である興福寺のそびえ立つ木造の塔を通り過ぎます。

彼らは近くの東大寺に向かい、重さ 400トン、高さ15メートルもある日本最大の巨大な仏像に畏敬の念を抱きます。

そして最後に、特別な種類の米で作られた鹿せんべいを、公園に住む約1,300頭の神聖な鹿に食べさせます。

鹿は野生ですが、せんべいを好むようになりました。

新型コロナのの影響で観光客が減ったため、彼らは空腹です。

多くの鹿が食べ物を求めて公園から遠く離れてさまようようになりました。

奈良鹿保護財団と北海道大学による最近の調査によると、公園で過ごす日数は20%少なくなっている一方、鹿による被害が急増しています。

せんべいだけを食べることに慣れている、あまり行動的でない鹿は明らかにやせ衰えています。

 

お腹が空いているのは鹿だけではありません。

近年、観光業にますます依存するようになった奈良のような場所の企業もそうです。

2009年に日本を訪れた外国人観光客は700万人未満でした。

昨年は何と3200万人に達し、観光収入は過去最高の4.8兆円に達しました。

今年の夏にオリンピックが予定されていたので、日本は今年4000万人の外国人を迎えることを期待していました。

残念ながら、コロナ感染拡大のため国境がほぼ完全に閉鎖された為、外国からの訪問客は99.4%減少しました。

 

そこで政府は、自国民にもっと外出するように促すことで経済的打撃を和らげようとしました。

国会は、国内のホテルや旅館で最大35%の割引を提供する「Go toトラベル」と呼ばれる補助金に、1兆3500億円を割り当てました。

「Go To Eat」と呼ばれるキャンペーンは、飲食業に適用されます。

観光省によると、このキャンペーンは7月に開始されて以来、約4,000万泊が予約されましたが、思わぬ被害をもたらしました。

新型コロナの新規感染者数は11月28日に2,680と記録を更新しましたが、キャンペーンが感染者数拡大の主因と考えられています。

菅義偉首相は最近、新規感染者の多い地域では補助金を停止すると発表しました。

また、年配の日本人はそれらを利用しないように求められています。

 

日本は観光業を見捨てたり、それを支えるインフラを衰退させたりする事はできない様です。 (菅氏自身、安倍政権時代、内閣官房長官として観光業を擁護しました。)

当局は、外国人観光客による支出を、日本自身の人口減少を補う手段と見ています。

日本経済研究センターの斉藤淳氏は、観光業は将来、日本を外国人移民に対してより開放的にするのにも役立つかもしれないと述べています。

 

一方、奈良のより賢い鹿は、植物やナッツと言った健康的な食事に戻り、それは彼らの体に良い影響を与えました。

せんべいによって青白くて水っぽくなった彼らの糞は、再び固くなり、濃い色となりました。

あたかも引き締めが経済に良い影響を与える様に。

Go toトラベルが抱える問題

Economist記事も批判的ですが、このキャンペーンは次の様な問題を孕んでいると思います。

  1. もともと東京などの大都市に住む金持ちの高齢者の懐から金を引き出そうと言う制度設計になっていますが、ターゲットになっている高齢者をこの時期、旅行させるのは非常に危険です。
  2. 最高2万円まで一律に補填すると言う規定は、高級旅館を優遇しますが、本当に困っている低価格の旅館などにはあまり客が入りません。
  3. そもそも旅行業界に1兆円を超える様な補助金を出すのが妥当か疑問が残ります。世の中には困っている業種が山ほどある訳で、旅行業界だけを優遇する特別な理由があるのではと考えたくなります。

Economist記事の最後のフレーズが指摘する様に、この厳しい時期を自助努力で乗り越える事によって、筋肉質でコスト競争力のある観光業が生まれるはずです。

一定の支援は必要でしょうが、一兆円を超える様な多額の補助金に慣れさせてしまっては、日本の観光業の将来は暗いものになるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。