ねじれ議会に直面するバイデン 政権
12月に入り、バイデン 政権が誕生するまで、2ヶ月を切りました。
ジョージア州の上院2議席に関し、1月に決選投票が行われる予定ですが、かなりの確率で、バイデン 大統領は野党共和党が多数を占める上院と対決する事になりそうです。
米国の大統領は強大な権力を有している様に見えますが、専門家によれば、大統領の権力は議会や司法の力によってかなりコントロールされている様です。
前途多難が予想されるバイデン 氏ですが、外交上の喫緊の課題は何でしょうか。
ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Here’s Where Biden Will Face Early Foreign-Policy Decisions」(バイデン 氏が早々に直面する外交課題)と題して論文を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
WSJ記事要約
米政界の経験則によれば、大統領は内政では議会の制約に縛られる一方、外交においては比較的自由に行動する余地を見つけることができます。
ジョージア州での上院選決選投票で争われる2議席の行方によって、バイデン氏は与野党がねじれた議会に直面する可能性があります。
内政では議会に苦しめられると思われますが、外交政策に関しては、単独で行動を起こす余地が大きくなりそうです。
特にトランプ大統領が独断で発した一連の大統領令を巡り、バイデン氏は撤回するかどうか早期に判断を迫られます。
イランやアフガニスタン問題、そして気候変動などの課題がそれに含まれます。喫緊の課題について以下に考察してみましょう。
イラン核合意:
これはバイデン氏にとって最も難しい判断として急浮上しています。
合意が成立した当時、バイデン氏はオバマ政権で副大統領を務めていました。
バイデン氏は長い間、イランの核兵器開発の道を閉ざす為には、合意が最良の手段だと主張してきました。
トランプ氏は、合意はイランの核兵器開発を遅らせたにすぎないと主張し、合意から離脱し、厳しい経済制裁を再発動しました。
イランはこれを受け、大規模なウラン濃縮を再開しました。
バイデン氏は選挙運動で、核合意には復帰するが、条件付きになると述べました。
「イランが合意を再び順守すれば」復帰すると述べましたが、それはおそらく、核濃縮の停止と新たに積み上げた備蓄の縮小を意味します。
さらには、「合意を強化し、延長する」としています。
従って、単に合意に復帰するだけでなく、イスラエルなど批判的な国が合意の主な欠陥と指摘している点、イランが急増させている精密誘導ミサイルや過激派組織への支援への対応が問題となるでしょう。
これに加え、イランは米国の合意復帰の対価として、トランプ政権による経済制裁再発動で被った損害を補う賠償金も含まれると述べています。
そのため合意の復活はそもそも簡単ではありません。
しかも、イランの高名な核科学者が暗殺されたことで、ここ数日にその課題ははるかに複雑さを増しています。
アフガニスタンとイラク駐留米軍の規模:
トランプ政権下の国防総省は選挙後、両国の駐留米軍を2500人に減らすと発表しました。
タリバンがアフガニスタン政府との和平協定に合意できていないにもかかわらずこうした決定が下されたため、米軍上層部は懸念を強め、共和党指導部からは無分別との批判が出ました。
ただ、これにはバイデン氏にとって厄介な面もあります。
アフガニスタンとイラクから撤退する点については、バイデン氏は実のところトランプ氏と同じ意見の様に見えます。
トランプ氏は紛争を「終わりなき戦争」と呼んでいます。バイデン氏は大統領選中に「永遠の戦争」と呼び、両国の駐留米軍の「大部分」を帰還させると述べました。
イラクとアフガニスタン問題では、バイデン氏の国際主義者としての思いと、米軍帰還への思いが矛盾しています。
バイデン氏はちょうど1年ほど前、世界における米国の役割に関するインタビューで、継続的な関与に賛成する姿勢を示し、両地域における駐留軍の必要性を語りました。
「われわれが世界を取り仕切らなければ、だれが取り仕切るのか」と問いかけた一方で、大統領に選出されればイラクに駐留軍を何人残すかとの質問に対しては、「1年後に何人残っているかは神のみぞ知る」と答えました。
パリ協定とTPP:
オバマ政権は両協定への米国の参加を交渉しましたが、トランプ氏は双方から離脱しました。
気候問題への迅速な行動を約束してきたバイデン氏にとって、2015年に採択されたパリ協定へ復帰は造作ない様に思えます。
だがそれは簡単ではありません。
急速な経済発展を遂げている中国に対して、バイデン氏は当初想定されていた以上の気候変動対策を要求するでしょうか。
中国の経済的影響力に対抗するため、太平洋諸国12カ国からなる貿易圏を創造するはずだった環太平洋経済連携協定(TPP)は、さらに厄介です。
バイデン氏は協定交渉時に副大統領でしたが、大統領選中には協定に前向きな姿勢を示さず、労働組合や民主党の進歩派勢力と同様に、労働・環境面でより強力な条件を盛り込むべきだったと主張しました。
しかし、実際にはTPPに復帰する必要性が高まっています。
他の11カ国は米国抜きでTPPを実現させました。
そして11月にはアジアの15カ国が、中国も含む新たな貿易協定(RCEP)に署名しました。
目下のところ、米国は蚊帳の外です。
そして代わりに中国が、運転席に座っています。
外交課題山積みのバイデン 政権
こうやってみると、バイデン 氏の外交課題はどれも難問です。
バイデン 氏の発言の中で、気になるのは「われわれが世界を取り仕切らなければ、だれが取り仕切るのか」と言うものです。
米国は引き続き世界のリーダーですが、もはや往年の力はありません。
自分の力の低下を十分認識した上で、同盟国との連携に注力してもらいたいと思います。
そう言う意味では、パリ協定やTPPは試金石となると思います。
バイデン 氏の政権舵取りに注目しましょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。