アメリカの政治学者の分析
新年早々、カザフスタンでは全国にデモが広がり、政府はロシアの軍隊を導入してまで、鎮静化を図っています。
今年も幾つかの国で紛争が生じ、中には内戦に発展するケースもあるでしょう。
米国の政治学者バーバラ・ウォルターの著作である「How Civil Wars Start」(内戦が始まる理由)について、英誌Economistが書評を掲載しました。
この著作についてかいつまんでご紹介したいと思います。
Economist書評要約
バーバラ・ウォルターは内戦を引き起こす原因について鋭く分析しています。
独裁政権と自由民主主義の間のどこかにある時が、内戦に対して最も脆弱です。
民主主義が機能している場合、人々は武器を取る必要がありません。
本格的な独裁政権では、行動を起こせば殺される可能性があります。
独裁政権が緩んだ時、危険な道は開きます。
「民主主義と独裁のどちらを取るかと言われれば、ほとんどの人が民主主義を受け入れるでしょう」
「しかし、民主主義への道は危険な道です。」とウォルター女史は書いています。
二番目の危険因子は派閥主義です。
冷戦の終結以来、おそらく内戦の75%は、政治的グループではなく、民族的グループと宗教的グループの間で戦われてきました。
ここで重要なのは、国の多様性ではなく、政治がアイデンティティを中心に展開しているかどうかです。
自分たちの支持を得るために他のグループへの恐れをかき立てる政治指導者は、特に危険です。
旧ユーゴスラビアを思い起こしてください。
冷戦が終結すると、彼らは共産主義を捨て、民主主義に向かって動き始めました。
しかしすぐに崩壊し、ミロシェビッチなどの「民族扇動家」にリードされる様になりました。
彼は真の民族主義者ではありませんでした。
元共産主義者だった彼は、支持を得る最も簡単な方法だったので、セルビア民族主義に切り替えました。
スピーチの中で、彼はセルビアの歴史的偉大さを祝い、セルビア人に対して行われた過去の残虐行為に対して復讐を誓いました。
彼の信者は、彼の敵であるクロアチアの大物であるトゥジマンの行動によって増大しました。
トゥジマンの殺すセルビア人がが多ければ多いほど、彼らは保護のためにミロシェビッチに頼り、逆もまた然りです。
彼らは創造的な嘘つきです。
たとえば、セルビアのテレビはかつて、セルビアの子供たちがサラエボ動物園でライオンに餌として与えられていると主張していました。
元々、彼らは、セルビア人、クロアチア人、イスラム教徒などが自由に混ざり合い、結婚した都市に住んでいました。
それらのグループがお互いを殺し始めるとは想像もしていませんでした。
大規模なグループが権力や特権を失うことを恐れている場合、別のリスク要因が発生します。
ウォルター女史は、この理由で発生した例をいくつか挙げています。
サダム・フセインの下でイラクを支配していたスンニ派アラブ人は、彼が倒された後、権力を失いました。
彼らの一部はテロ組織イスラム国を創設しました。
2014年のキエフでの革命後、民族的にロシア人であると考えていたウクライナの一部は、新ウクライナ政府に反抗しました。
苦しんでいるグループの最も不満を持っているメンバーは武器を取るかもしれません。
ソーシャルメディアは流血へのエスカレーションを加速させる可能性があります。
ウォルター女史は、Facebookが2015年にミャンマーで使用可能になった後、仏教過激派の声がどのように増幅されたかを説明します。
ロヒンギャは大量虐殺に見舞われ、ミャンマーは現在、複雑な内戦に巻き込まれています。
これらはすべて説得力があり、たとえばエチオピアで今日起こっている事、またはレバノンで起こっている事への有用なガイドです。
難しい民主主義への道
確かに中途半端に民主化への道を開いた国は不安定になりがちです。
ミャンマーはその例ですが、フェイスブックの導入が事態を悪化させたとは知りませんでした。
確かにSNSによる情報の拡散は、人々の怒りや誤解をあっという間にエスカレートさせかねません。
意図的にフェイクニュースを流す輩も多く、これらは対立感情を煽り立て、危険な状況を生みやすいと思います。
現在、カザフスタンで生じている内紛も心配です。
この国は中央アジアの中で最も積極的に西側のシステムを導入した国ですが、貧富の差の広がりから、国民の不満が渦巻いています。
ウォルター女史の説によれば、独裁と民主主義のちょうど間にある一番危険な状態と言えるでしょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。