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肉の代わりにパンを食べろ - ウクライナ戦争がもたらす食糧危機

中東、アフリカでの穀物不足

ウクライナでの戦争は深刻な食料問題を引き起こしています。

ウクライナから輸出される穀物に依存していた中東やアフリカの国々は、明日のパンが食べられないとなると、政情不安に陥ることが危惧されます。

これらの国々から難民が流出すれば、ただでさえウクライナからの難民受け入れで四苦八苦しているEU諸国は更に大きな問題を抱える事になります。

この食料問題に関して英誌Economistが興味深い記事を掲載しました。

この記事は、ロシア、ウクライナからの穀物輸出が止まっても十分だと主張しています。

但し人は肉の代わりにパンを食べる必要がある様です。

「Most of the world’s grain is not eaten by humans」(世界の穀物の大半は人間に食べられていない)と題された記事をかいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ウクライナの国旗の黄色と青は、雲ひとつない空の下の豊かな小麦を連想させます。

今日、大砲からの煙が空を灰色に変えました。

トラクターは穀物ではなく重火器を運搬しており、ロシアの海上封鎖により収穫された穀物が海外の消費地に到達するのを困難にしています。

この問題は、すでに高い穀物価格を更に急騰させました。

国連世界食糧計画は、結果として4700万人が飢餓の危険にさらされていると警告しています。

 

ウクライナが穀物の輸送をめぐってトルコと話し合っていますが、ロシアがウクライナの黒海を通じた穀物輸出を認める可能性は高くありません。

ウクライナの穀物輸出を、鉄道に切り替えるのは困難です。

ウクライナが世界市場から切り離されているのであれば、他の場所での生産を拡大しなければならないと推測するのは自明のように思えるかもしれません。

しかし実際には、人類の消費を満たすのに十分な穀物はすでに生産されています。

問題は、穀物総生産量の43%動物の飼料かバイオ燃料として使用されていることです。

これは、ウクライナとロシアを合わせた穀物生産量の6倍に相当します。

 

人類によって食べられている量は世界の穀物収穫量の半分未満です。

最新の2019年のデータによれば、ロシアとウクライナが生産した小麦のうち人間の食料として使用されたのは約1億300万トンで、動物の飼料として使用された1億2,900万トンを下回りました。

さらに2,200万トンがバイオ燃料になりました。

2番目に大きな作物であるトウモロコシは、食卓に供される可能性がさらに低くなります。

トウモロコシの世界生産量のわずか13%しか人間は食べていないのです。

ロシアとウクライナはほとんど米を生産していないため、穀物生産量のうち人間が食料としている割合は37%であり、世界平均の46%を下回っています。

 

世界中で、穀物生産は2010年代に17%増加し、人口増加を6パーセント上回りました。 しかし、一人当たりの消費量は横ばいでした。

代わりに、余分な穀物は他の用途に使われました。

10分の1近くがバイオ燃料に変換され、主に自動車の動力に使用されます。

しかし、最も多くは飼料として使われました。

私たちの計算によると、2019年に豚は4億3100万トンの穀物を食べました。

これは中国人が食べる量よりも45%多くなっています。

全体として、2010年から2019年にかけて、世界の牧草地が縮小し、肉への欲求が高まるにつれて、動物飼料に使用される穀物の量は年間7億7千万トンから9億9千万トンに増加しました。

 

トウモロコシの殻などの一部の穀物副産物は、人間の食品には適していません。

そして、穀物を動物に与えることは、牛乳、肉、卵の形で、間接的に人々のための食物を生み出します。

ただし、このプロセスは非常に無駄です。

牛に与えられる100カロリーの穀物の内、たった三分の一だけが牛肉として生産されます。

他の飼料作物や牧草地と同様に、動物の飼育も人間の食物を生産する可能性のある土地を使用します。

 

ウクライナでの戦争に対応して、各国政府は穀物を効率的に利用するための政策を検討し始めました。

ドイツとベルギーはバイオ燃料の義務を緩和する可能性があり、中国はトウモロコシのエタノールへの転換を「厳密に管理」すると発表しました。

しかし、燃料価格が高騰しているため、国際エネルギー機関は、2022年にバイオ燃料の需要が5%増加すると予測しています。

 

長期的には、このような問題を回避する唯一の方法は、他のエネルギー源からエネルギーを取得することです。

理想的には、再生可能エネルギーです。

それは、気候変動によって危機に瀕している将来の収穫にも利益をもたらすでしょう。

しかし今のところ、廃棄物を減らし、小麦とトウモロコシを動物飼料の代わりにパンに変えることがおそらく最良の解決法です。

個人消費者が世界の穀物不足を緩和するための最も効果的な方法の1つは、肉の代わりに、より多くの穀物を食べることです。

急所をつくロシアの戦略

穀物がこれほど動物の飼料やバイオ燃料の原料として使われているとは知りませんでした。

豚の方が中国人全体より多くの穀物を消費するなんて想像もしていなかったのですが、それだけ人間は肉を食べているという事ですね。

こうなったら肉の代わりにパンを食べないといけないのですが、西側でそんな事を国民に要請する政府は見当たりません。

結果として、世界の穀物市場は逼迫し、貧しい国にしわ寄せが行く事になります。

 

それにしても、ロシアが仕掛けたエネルギー危機、食糧危機は見事に西側の急所を突いていると思います。

クレムリンの奥深く、切れ者が潜んでいるのでしょうが、西側の弱点をよく分析しています。

西側のアキレス腱は政治家が選挙を意識せざるを得ない点です。

ウクライナで戦争が始まってからというもの、ロシアは意図的にエネルギー市場や食料市場を撹乱し、西側のインフレを誘発しています。

その結果、マクロン大統領もジョンソン首相も最近の選挙で破れ、おそらくはバイデン大統領も中間選挙で敗北すると予想されています。

厭戦気分が出てきた欧州は長期にわたってロシアと対立を続けることが難しく、今後調停の動きが活発化するものと予想されます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。